ソードアート・オンライン 蒼藍の剣閃 The Original Stories
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ALO編 Running through in Alfheim
Chapter-13 仲間との絆
Story13-4 守りたいもの
シャオンside
俺たちは一目散に街の入り口を目指して走っている途中で、その先に広がる地底湖に出た。
道は湖を貫く橋に繋がり、それを渡抜けば確かその先は鉱山都市ルグルーだったはずだ。
中立都市の圏内ならばアタック不可能な為、いかに敵の数が多くても何もすることはできない。
でも…………トレーサーにつけられていたということは、道中ではあり得ない。
レイのサーチ能力があるためにそんな隙など皆無だからだ。
ならば、考えられるのはエクセトルの街…………あそこならサラマンダーがいてもおかしくない。
この回廊に来る前、マリンに聞いたのだが……マリンも過去に何度かその巻き上げ隊なるものに遭遇したことがあるらしい。
全て逃げ切ったらしいが、そういった連中がそうそう諦めるとは思えない。
前を見るとゴツゴツした通路はすぐ先で石畳に変わり、その向こうに開けた空間が見えた。
青黒い湖水が仄かに光っている。
湖の中央を石造りの橋が一直線に貫くその彼方には、空洞の天井までまで繋がる巨大な城門が聳え立っていた。
あれが、鉱山都市ルグルーの門だ。
マリンが後方を振り返る。
追手の灯す赤い光とはまだ距離があったようで、此方に視線を戻した。
橋に入ると周囲の温度が僅かに下がり、ひんやりと水の香りがする空気を切り裂きながら俺たちは疾駆する。
「どうやら今回も逃げ切れそうね」
「油断すんなよ。まだ逃げ切れたとは限らないからな」
「そうね。水中に大型のモンスターだっているんだからね…………セイ兄、落っこちないでね」
短く言葉を交わしながら、橋の中央に設けられた円形の展望台に差し掛かった。
その時だった。
頭上の暗闇を、背後から2つの光点が高速で通過した。
特徴的なその輝きと効果音は、魔法の起動弾だが、照準が此方ではない。
光点が10m先に落下し、ゴゴーン!と重々しい轟音とともに、橋の表面から巨大な岩壁が高くせり上がる。
そして、完全に行く手を塞いだ。
「やばっ……」
「げっ……」
俺は、走る勢いは緩めることが出来ず、出来た岩壁を使ってバック宙で降り立つ。
「これ、破れないのか?」
「これは土魔法の障壁だから物理攻撃じゃ破れないわ。破るには攻撃魔法を数発撃ち込むのが、一般のやり方。でも…………」
マリンがちらりと背後を見た。
「その余裕はないみたいだな」
丁度、血の色に輝く鎧を纏った集団の先頭が橋のたもとに差し掛かるところだった。
「飛んで回り込む……のは無理なのか。
湖に飛び込むのはアリ?」
「さっき言った通り、水中には高レベルの水竜型モンスターが棲んでる。ウンディーネの援護なしじゃ、水中戦は無理よ」
「じゃあ戦うしかないわけか」
「でも、ちょっとヤバいかも……
サラマンダーがこんな高位の土魔法を使えるってことは、よっぽど手練れのメイジがいるわね……」
橋の幅は狭いので、多数の敵に包囲されて全滅というのはまずないだろう。
ただ、このダンジョン内では俺たちは飛ぶことができない。
となると、地上戦。
「さぁて……振り切るか」
重い金属音を響かせて接近してくる敵の一団はもうはっきりと目視できていた。
先頭の横一列に並んだ巨漢のサラマンダー3人は、先日のサラマンダーたちより一回り分厚いアーマーに身を固めいる。手にはメイスなどの片手武器、巨大な金属盾を携えていた。
「この狭い橋の上で乱戦をするのは危険だな……俺が前を務める。後ろ、頼むわ」
「え、ええ。わかったわ」
マリンは橋を遮る岩壁ぎりぎりの場所まで退いた。
「さぁーて……ひとっ走り…………付き合えよっ!!」
中学時代の野球、SAO時代の癖…………それらを総動員した体重移動のテクで愛剣を、サラマンダーたちに向かって横薙ぎに叩きつけた。
だが、三人のサラマンダーは武器を振りかぶることもせず、ぎゅっと密集すると盾を前に突き出して、その影に身を隠した。
ガァーン!!という大音響を轟かせ、俺の剣が並んだタワーシールドの表面を一文字に薙いだ。
ビリビリと空気が震え、湖面に波紋が広がる。
相手のHPを確認する。
3人揃って1割以上減少しているが、それは直ぐに背後にいる数人のサラマンダーから立て続けのヒールスペル詠唱と共に水色の光に包まれ回復する。
そして、その直後。
鋼鉄の城壁にも似た大型シールドの後方から、オレンジ色に光る火球が次々に発射され、大空洞の天井に無数の弧を引いて来た。
「遠距離攻撃反則だろっ!?」
湖面を真っ赤に染めるほどの爆風が巻き起こるが、驚異的な敏捷力を持つシャオンにとって魔法を避けるのは容易かった。
「あらよっと」
避けるには避けるが、魔法の威力とシャオンの防御力の相乗でかすり傷程度でもHPゲージは削り取られていく。
普通のステータスを持つプレイヤーでも初撃で即死してもおかしくない密度の多重魔法攻撃だ。
「前はこんな多重魔法攻撃してこなかったのに……!」
「盾で防いで相手のビルドの一部を見抜き、ビルドに合わせた攻撃方法を放つ…………臨機応変型の攻撃か。
かつての俺みたいだな」
そう言っている間に多重広範囲魔法が俺たちに来る。
「きゃあっ!!」
マリンも元々防御力はそこまでないビルドのためにHPゲージは一気に削られる。
「マリン!!」
「多分大丈夫…………っ!?」
一人のアタッカーが武器を構えてマリンへと突撃する。
「これで、長らく殺せなかったこいつも…………っ!?」
「人の仲間に気安く手出してんじゃねーよ」
あのデスゲームの中使われた、神速剣スキル13連撃技〔ドライブレード・フルスロットル〕でサラマンダーのHPが全損する。
呆気にとられるサラマンダーズとマリン。そんなものは露知らず、俺は背中にスターライトクリエイターを装備する。
「他人の仲間に手を出すことがどれだけのことか…………よーくその身に刻んどけよ。
『蒼藍の剣閃』……久々にトップスピードで振り切るぜ!」
意識を足に集中させて一瞬だけ超加速するシステム外スキル〔ソニックステップ〕
一瞬でサラマンダーズの真ん中に突入すると連二刀流スキル21連撃技〔アイソレイト・イグニッション〕を振るう。
HPの低いメイジを3人巻き込んでPKすると、アタッカーの4人には連二刀流スキル35連撃技〔ルナティック・スターブラスト〕、タンクの3人には連二刀流スキル48連撃技〔フルアクセル・ストライクエンド〕を放ってHPを削った。
もちろん、この世界にはソードスキルがないため、全部ノーアシストなのだが、やはり体が覚えているもので全く違和感なく繰り出せた。
「こんなもんか……」
「せ、セイ兄…………」
「大丈夫か?」
「うん…………」
「よし、ルグルーまでもう少しだ。頑張ろう」
俺はマリンに手を差し伸べると、再び歩き出した。
眼前には、巨大な石造りのゲートが遥か地下空洞の天井まで聳え立っている。
鉱山都市ルグルーの城門だ。
補給と情報整理も兼ねて、この街で一泊することにした。
並んで城門をくぐると、BGM代わりのNPC楽団の陽気な演奏を始めとした多種多様な音色が俺たちを出迎える。
街の規模自体はそう大きくはないが、中央の目抜通りを挟むように聳える岩壁に、武器防具や各種の素材、酒や料理などを商う店やら工房やらが積層構造を成して密集している様は見事なものだ。
プレイヤーの数も多く、普段あまり出会うことの少ない音楽妖精族のプーカや、鍛治妖精族のレプラコーンといった種族のパーティーが談笑しながら行き交っている。
「うーん……この空気久しぶり」
そして、早速手近な商店の店先に足を向ける彼女を微笑ましく思いながら後をついて行った。
ある程度物色したあと
「とりあえず、今日はここで終わるか」
「そうね。夜遅いし」
「じゃあ、またな」
という会話の流れで俺とマリンは近くの宿を取り、そこで今日はログアウトした。
Story13-4 END
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