タケミカズチ、抜錨します。
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次元覇王流
前書き
艦これをやっていて更新が遅れました。すみません。
そして、BFTが最終話を迎えましたね。流れ的に第3期がありそうで、今から楽しみです。
(最後の落ちが前作とは異なり、コメディ風というのもありでしたね(笑))
【視点:ノーチラス】
私は第二世代型惑星間航行用亜光速宇宙船ヱルトリウム級改修型万能潜水艦ノーチラス。外宇宙人類であるM78星雲人――地球での別称:古代アトランティス人によって開発され、その末裔と地球人によって改造された艦船です。
いいえ。艦船――潜水艦だった、というのが正しいでしょうか?今の私は艦船が擬人化した艦娘という存在なので、純粋な艦船とは言い難いですし……。
艦船時代の私は船長を始めとする多くの乗組員と共に、悪の秘密結社・ネオアトランティスを潰す為、世界中の海で戦っていました。
そんな私の最期は、正直言って無様なものだったと思います。元が発掘兵器とはいえ、複製品であるスーパーキャッチ光線砲によって身動きのできない空中で捕縛。
原子振動砲と超音波砲によって装甲に亀裂を入れられ、兵装の火器及び弾薬が誘爆したことで中破。その上、主機関である対消滅エンジンが原子振動砲と超音波砲の影響で機能を停止。
主機関が停止して電気が使えなくなったことで、たった1発だけ残っていた誘導弾すら発射できなくなった私は、ネオアトランティス製潜水艦ガーフィッシュの対空砲火に晒され、私を捕獲した空中戦艦が放ったたった1発の殲滅爆弾で船体が大破した。
この時の救いは、殲滅爆弾を受けた箇所が艦首だったことかしら?その為、空中で船体が爆散することは無かった。そしてその後、何とかスーパーキャッチ光線砲を破壊した私は、空中戦艦の捕縛から逃れ、そのまま海面に落下。
ケルマディック海溝で戦闘ブロックと中央ブロックを分離させ、戦闘ブロックを追撃して来ようとしたガーフィッシュ艦隊に壊滅させる為に自爆させたんです。
浮力を失い、中央ブロックのみとなった私は海底潮流に流されることで、ケルマディック海溝の海淵まで沈むことなく、古代アトランティス人の末裔が建国した旧タルテソス王国に繋がる弾丸トンネルへと辿り着きました。
私の艦船時代の記憶はここまでで、これ以降の記憶はありません。いいえ、無いというか記憶に靄が掛かっていると言うべきかもしれませんね。
弾丸トンネルに辿り着いて以降の記憶もある気はするんですが、それが今は思い出せないんです。もしかしたら、何かしらの改造を受けて復活したのかもしれません。
……まぁ、欠損していると思しき記憶も、艦娘を強化する近代化改装やC.E.化改装というのがあるとタケミカズチさんから聞かされていますし、それをすれば思い出せるかもしれませんし。
兎に角、そんな風に艦船としての生涯を終えた私は、元の世界と似て非なる世界に艦娘として再誕し、○○○鎮守府という所に所属。私と同等の性能はある空母艦娘――タケミカズチさんと今は艦隊を組むことになりました。
タケミカズチさんは相当強い艦娘です。兵装そのものが他の艦娘とは一線を画していますし、錬度も艦娘に成り立ての私とは比べ物にならない位に相当高いです。
だからこそ、現時点で私はタケミカズチさんから旗艦の座を奪おうなどとは思わない訳です。一般的な艦娘と艦隊を組んでいたなら、私が旗艦になることを主張していたでしょうが……。
ちなみに、今日で私がこの鎮守府に所属して1週間が経ちます。同じ艦隊に所属しているということもあって、私とタケミカズチさんは艦娘寮ではルームメイト。共同生活も特に問題などは発生していません。
……問題ない筈なんですが、何故かタケミカズチさんはいつも私が目を覚ました時には部屋に居なかったりします。現時刻は0630時。
私自身、人間でいう所の低血圧の様なもので、目覚めてから30分程意識がはっきりとしないことがありますが、それでも起きている時にルームメイトが部屋から居なくなれば気付けます。
つまり、タケミカズチさんは最低でも0600時以前には部屋から居なくなっているという訳です。これがこの1週間、毎日の様に続いているのですが、タケミカズチさんは一体どこに行っているのでしょう?
………取り敢えず、鎮守府の敷地内を探してみましょうか。そんな訳で、私は甚平の様な寝巻着から戦闘服とは別の普段着に着替え、艦娘寮の外に出ることにした。
そして、タケミカズチさんを探すこと十数分後。未だにタケミカズチさんは見つからない。時間帯的に間宮さんの店は開店していないので、錬度を上げる為に航空母艦用演習場で鍛錬しているのかと思ったのだけど、当てが外れました。
演習場に居ないとなると、タケミカズチさんは一体どこにいるのでしょう?そんなことを考えながら当ても無く歩いていると、ランニングをしている1人の駆逐艦娘と鉢合わせた。
「あっ、ノーチラスさん」
「あなたは確か……」
「特型駆逐艦1番艦の吹雪です!おはようございます!」
「おはようございます、吹雪さん。こんな朝早くから鍛錬ですか?」
「はい!私、他の皆より錬度が低いので、皆の足を引っ張らない為にももっと鍛錬しないとって思って……」
「そうですか。いつもこんな早くから鍛錬を?」
「はい。と言っても、私自身この鎮守府に着任したのはノーチラスさんと同じ日で、鍛錬を始めたのもその翌日からなんですけど……」
吹雪さんは恥ずかしそうに頬を掻きながらそう言ってきた。ということは、鍛錬を始めてまだ6日目ということですか。まぁ、それでもこんな朝早くからの鍛錬を続けられるのは凄いことだと思う。
私なんて夜遅くまでこの世界のことを勉強している上、低血圧っぽい何かのせいで朝が弱いから、早朝鍛錬なんて続けられる自信が無い。
「そういえば、ノーチラスさんはこんな朝早くからどうされたんですか?」
「私?私はいつものことではあるのだけど、目を覚ました時にルームメイトのタケミカズチさんがいないから、何をしているのかと思って彼女を探していただけなんだけど」
「え?タケミカズチさんも朝早いんですか?」
「そうね。私が目を覚ます時間はいつも0630時なのだけど、その時間帯に寮の部屋に居たことがないし、少なくとも0600時より前の時間帯には起きて、部屋から出て行ってるみたいね」
ただ立ち止まっているのも何なので、私は吹雪さんの隣に並んで歩きながらタケミカズチさんのことを説明した。ちなみに吹雪さんも小休止を兼ねてか、同じ速度で歩いてくれている。
「演習場で艦載機の錬度を上げているんでしょうか?」
「それがそう言う訳でも無いみたいなの。さっき演習場に行ってみたのだけど、誰も居なかったから……」
「それじゃあ、タケミカズチさんは一体どこに―――」
吹雪さんが「どこにいるのか?」といったことを口にしようとした瞬間、旗がはためく時に聞こえる様な音が耳に入ってきた。ただ、旗音としてはとても違和感のある音です。
何故なら、聞こえてくる音は自然にはためく旗音とは違い、とてもリズミカルで自然に生み出された物とは思えなかったからである。
私は吹雪さんと顔を見合わせ互いに頷くと、音の発生源へと向かった。音の発生源は鎮守府庁舎と所管学校の中間にある雑木林の手前だったんですが、そこには小さな建物が1つだけありました。これは―――
「演習場――というより道場みたいですね。この鎮守府で働いている海兵さんや憲兵さん達が鍛錬でもしているんでしょうか?」
「そうね。この鎮守府には提督以外にも軍人さんはいるものね。その殆どが事務員として働いているとは聞いていたけど、軍人である以上日々鍛錬をしていてもおかしくはないわ」
吹雪さんの質問に対して私はそう答えながら、道場の入口に掛かっている看板へと目を向けた。その看板には次元覇王流と書かれていた。
「あっ、あれ?次元覇王流?」
「どうしたの吹雪さん?この流派を知ってるんですか?」
「あのどういった流派かは知らないんですが、何故か聞き覚えのある名前なんです。なんか、ここ最近耳にした流派の様な……」
吹雪さんがこの次元覇王流という流派について思い出そうとしていると、道場の中から何かが爆ぜる様な音が聞こえてきた。
普通の道場から聞こえてきてはならない様な音だったこともあって、私と吹雪さんは思わず道場の窓へと駆け寄り、中を覗き見た。すると、そこには道着を着たタケミカズチさんを始めとする艦娘がいました。
確認できる艦娘はタケミカズチさんに金剛さん、比叡さん、榛名さん、霧島さん、鳥海さん、天龍さん、龍田さん、川内さん、神通さん、暁さん、響さん、雷さん、電さん、望月さん、夕立さんの計16名。
道場の中央にタケミカズチさんと霧島さんが右拳を突き合わせていて、残りの艦娘達は壁際で正座をして横に並んでいて、2人を見守っていた。
「………霧島、腕を上げましたね。見事な聖拳突きです」
「習い始めた頃はよく拳を痛めていましたからね。その頃と比べたら強くなっている自信はあります。ですが、私なんてまだまだです」
「現状に満足することなく、更なる高みを目指す。素晴らしいことです。ですが、力に執着しては駄目ですよ。次元覇王流の極意は――」
「悔いを残すことなく、慢心することなく、常に自分が出せる全力で、自分の思いを拳に込めて相手を打倒する、ですね」
「その通りです。では、今日の朝練はここまでにしましょう」
……これは一体どういうこと?艤装による砲撃や射撃が攻撃手段である艦娘が、格闘技の鍛錬?この鍛錬に一体何の意味が……。
私がそんなことを考えながら隣に居る吹雪さんに視線を向けると、吹雪さんは目を輝かせながら道場を見ていた。
「そうだ!次元覇王流って、タケミカズチさんが師範をやっている格闘技ですよ!!タケミカズチさんは今まで何体もの深海棲艦を殴り倒しているって有名なんです。もしかしたら、この次元覇王流の技で倒しているのかもしれません。
……次元覇王流、私も入門しようかな?そうしたら、今より強くなって皆の役に立てる様になるかも……」
ちょっ、吹雪さん!?何血迷ったこと言ってるんですか!!?私達、一応は艦船ですよ!それが格闘戦って……。というかタケミカズチさん、あなたは一体どこに向かおうとしてるんですか!!?
後書き
という訳で、12話でした。
ちなみに本作での次元覇王流の極意は、BFTの次元覇王流のあり方から考えたオリ設定だったりします。(笑)
(基本精神はオハナシ(物理)です。(笑))
何気に門下生が多いですが、今後も増えていく予定です。どういった艦娘が門下生になるか、今後の楽しみにしていて下さい。(笑)
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