真剣で私に恋しなさい! 槍使いの少年
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第5話
「私と勝負しろ!」
目の前に川神百代がいる。その眼は得物を見つけた喜びに満ち溢れていた。
「お断りします」
まだ時期ではないので。と心の中で付けたし先輩(一応年上なので)の申し出を断る。
「なぜだ」
「俺はあまり腕に自信がないので」
「羽柱流槍術の次期当主がか?」
ある程度は嗅ぎ付けてるみたいだな。学園長に聞いたのか舎弟の直江大和に情報収集させたのか。
いずれにせよ昨日の今日ですごい行動力だ。
「昨日のワン子を倒したのはお前の妹だそうだな。お前の実力も高いんだろ?」
「いえいえ、俺なんかまだまだですよ。恋と戦っても10分持つかどうか」
「家の妹がやられたんだ。姉が仇を討つ。だが仇の兄がいるんだせっかくなら戦ってみたいだろ?」
「いえ?俺なら仇を倒しますが?」
「あいつはメインディッシュだ」
このままだと解放してくれそうにないか。だが今は・・・。
「とにかく俺は闘いませんよ」
「逃げるのか?」
「ええ」
そう言って俺は次の授業の教科書に目を向けることにした。その後も何か言っているが全て無視する。
「大和~~羽柱兄が闘ってくれない~~」
姉さんが俺に抱き着いてくる。やわらかいものが背中にあたって得した気分だ。
「相手はSクラスの人間だから少し挑発してやれば乗って来るんじゃないのか?」
岳人が姉さんに言う。確かにプライドの塊であるSクラスの人間には効果があるだろう。
「それはさっきやったんだ。私を無視するからいろいろ言ってやったんだが眉1つ動かさなかった」
それはプライドがないのか言われ慣れてるのかどちらかなのかもな。
「じゃあよ。あのワン子倒した奴と闘ってみないのか?」
昨日ワン子は負けた。あんな負け方をするなんて夢にも思わなかった。姉さんならやって見せるだろが・・・・。負けたワン子はピンピンしていたいつか必ずリベンジすると息巻いていた。
姉さんも強敵と出会いしかも兄がいると知って飛び出したが全く相手にしてもらえなかったのだ。
「Sクラスを焚きつければ出てくるかもな」
姉さんが闘えるように軍師らしく知恵を出してみますか。
「じゃあお願いしますね。羽柱君」
目の前には楽しくて仕方がないと言う百代先輩がいる。
昨日断ったのになぜこんなことになっているのだろうか。
聞くところによるとウチのクラスの不死川心がFクラスの人間を麻雀でカモにしたところ知将に逆にカモられたんだとか。それに対して葵が敵討ちという形で勝負を申し込んだ。しかしそれも負けその敵討ちを準が行うが結果負け。Fクラスが調子に乗り始めSクラスはもう一度勝負を申し込んだ。
Fクラスはそれに決闘で応じることにしたのだ。すでに3勝しているため主導権はあちらにある。
川神百代が対戦相手でふさわしい相手が俺しかいないと言う話になってしまった。
「なあ、葵。俺はあんまりなんだが?」
「まあ相手は武神ですので大けがを負わないように闘ってください」
仕方ないか。すでに逃げ場は全て潰されている。ここで俺が何を言っても今後クラスの評価が下がるだけである。
「ではこれより3-F川神百代対2-S羽柱龍夜との決闘を行う。両者準備は良いか?」
俺は十文字槍を構え、先輩は拳を構える。
「ああ」
「いつでも」
「では、始め!」
「先手必勝!川神流無双正拳突き!!」
川神先輩の初撃は普段見せるなかでも最速の者だった。全く反応することなく俺の腹に突き刺さる。
「え!?」
先輩の顔が驚愕に歪む。俺がまさか本当に反応しないだなんて思わなかっただろう。
俺もこの一回は時期が来た時のための借金として返してもらう予定だ。
万全を期すために拳に反応する素振りすら見せなかったんだ。
もろに正拳突きが入ったため背骨は致命的だろう。流石のダメージに気を失った。
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