マザー=シンプトン
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第五章
「魔術、魔女ならね」
「何でも同じだと思っておるな」
「うん、魔女は例外なくね」
「人に害を為すものとのう」
「魔術は色々なのに」
「それがわかっておらぬのじゃ」
彼等、異端審問の者達はというのだ。
「どうもキリスト教もおかしくなった」
「この数百年ずっとおかしいよ」
「うむ、異端だと思い込めばな」
「僕達はこうして逃げられたけれど」
「多くの全く関係のない者が殺されておる」
「魔女でない人達がね」
「本当の魔女はこうじゃ」
シンプトンは今は飄々としたものを消して言った。
「難があれば実際に魔術を使ってじゃ」
「逃げられるね」
「それが出来れば魔女じゃ」
「何も出来ないと魔女じゃないね」
「そんなこともわからなくなっておるのじゃな」
「相当におかしくなってるね」
「恐ろしいことじゃ」
さしものシンプトンも眉を曇らせて言うのだった。
「あの連中もまた来るじゃろうしな」
「ここは姿を隠した方がいいかもね」
「そう考えておる」
実際に、というのだ。
「何度も来られては厄介じゃ」
「その方がいいね」
猫も主のその言葉と考えに同意して頷いた。
「鬱陶しいからね」
「そうじゃ、まあ場所を帰れば」
「それでだね」
「多少はましになるな」
「そうだね、イングランドはまだ神聖ローマ帝国やスペインよりましだし」
その異端審問の者達の数や行いの酷さがだ。
「少し場所を変えてね」
「今度は目立たない様にしてな」
「やっていけばいいね」
「そうするとしよう」
「そうじゃな、ではあの者達が帰ってからな」
これまでの飄々としたものを戻してだ、シンプトンは猫に言った。
「魔術の道具を取りに行ってな」
「引っ越すんだね」
「そうしようぞ」
「じゃあ次の家は何処かな」
「それは後で決めるわ」
とりあえずは外に出るというのだ。
「そうするわ」
「じゃあ僕も一緒にね」
「うむ、来てくれるか」
「だって僕はご主人の使い魔だよ」
だからこそというのだ。
「それなら当然じゃない」
「ほっほっほ、それは有り難い」
「じゃあ次の場所にね」
「荷物を持って行くぞ」
こう話してだ、シンプトンは夜になると用心深く姿を消してだった。そのうえで家まで戻って魔術の書や道具を持って引っ越した。そしてそこでまた魔術に勤しむのだった。
マザー=シンプトンのことは今も尚言われている、預言のことは後世の者の創作だという。しかし彼女が魔女であったという噂があったことは事実である、若しかすると本当に魔女でありこうしたことが実際にあったのかも知れない、だが真相は伝えられてはいない。
マザー=シンプトン 完
2014・12・20
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