マザー=シンプトン
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第四章
「魔女の魔術か」
「それを今使ったのか」
「そうしてか」
「姿を消したのか」
こう言うのだった、そして。
全員でシンプトンを探すが見付からない、だが彼等は気付いていなかった。その彼等の間を大小二つの影が動いていたことに。
二つの影はすたすたと何処かへと去って行った、そしてシンプトンの家から少し離れた森に入ってだった。
するとだ、ここでだった。
二人は姿を出した、そしてだった。
猫はシンプトンにだ、こう言った。
「いや、姿を消してね」
「よかったのう」
「あそこでもっと凄い魔術使うと思ってたよ」
「雷を落としたりか」
「竜巻を起こしたりとかね」
そうしたことをというのだ。
「そうした魔術を使うと思ったけれど」
「ほっほっほ、手荒なことはせぬよ」
シンプトンは猫に明るく笑って言った。
「そんなことはのう」
「しないんだ」
「わしの流儀ではないからのう」
「人を惑わしたり害を与える様な魔術はだね」
「魔女は本来そうしたものじゃ」
シンプトンは猫に飄々としたl口調で話した。
「人に害を与えるものではない」
「むしろだね」
「人を助けるものじゃ」
それが真の魔女だというのだ。
「例え相手が物騒な連中でもな」
「逃げられるならだね」
「ああするだけじゃ」
姿を消したりして難を逃れるだけだというのだ。
「それだけじゃ」
「平和だね」
「ほっほっほ、平和が一番じゃ」
こうも言うシンプトンだった。
「ましてわしは白魔術師じゃ」
「うん、黒魔術師じゃないね」
「それでどうして人に害を為すのじゃ」
白魔術は人に害を為すものではない、それを使うシンプトンはこのことを殊更強く意識しているのである。
それが為にだ、今もこう言うのだ。
「おかしなことじゃ」
「そうだね、何かあの人達ってね」
猫は首を傾げさせて主に応えた。
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