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科学と魔術の輪廻転生

作者:ともとも
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本を読もう。

 えっと、この家は結構裕福らしい。
 それが探検して分かったことだ。

 まずこの家は二階建ての木造建築だ。
 部屋は一階に客間、トイレ、風呂場、キッチンがあり、二階に寝室、トイレ二つ目、書斎。そして庭には物置らしき倉庫が有る。


 客間は普通というか少し豪華だ。

 トイレは洋式で、青い宝石が壁に埋め込まれていた。
 というか、陶器製のトイレってすごいな。
 文明結構発達してるなぁ。
 ちなみに青い石を触っても水は流れなかった。
 どうやったら水を流せるのか。

 風呂場にはトイレより大きめな青の宝石と小さめの赤の宝石があった。
 これで風呂を沸かすんだろう。

 キッチンは拳大の赤い宝石だ。
 それと、冷蔵庫らしき物には水色の宝石。
 流し台には青い石。

 寝室は少し広めだな。
 というかさっきまで俺がいた所だ。

 トイレ二つ目は割愛。
 一つ目と殆ど変わらない。

 書斎は本がたくさん。
 父さんは読書あんまりしなさそうだし、母さんが読書家なのか?

 物置には剣とか杖とかその他日常用品がたくさん置いてある。
 その杖を見ると、此処が異世界なんだなって改めて思い知らされる。
 ちなみに杖というのは、先端に宝石の付いた装飾のある木の棒だ。
 その宝石は、見た感じ家の所々にあったのと同じ物らしい。
 多分、この宝石が魔術の威力を高めるとかそんな感じだろうな。
 良く分からないけど。


 この中で俺が興味を持ったのは、書斎だ。
 もしかしたら魔術についての本があるかも知れない。
 いや、十中八九あるだろう。
 俺は文字はまだ読めないし、取り敢えず母さんに読んでもらおう。
 それと同時に文字も習えば良いよな。

 俺は母さんと一緒に書斎へと向かった。


 ────


「あら〜、アルはママと同じでご本が好きなのね〜」

 書斎に着いた途端、母さんは感心するように何度か頷いた。
 やっぱり母さんの書斎だったのか、と妙な所に納得する俺。

「で、アルはどの本を読んで欲しいの?」

 俺はハイハイで本を選びに行った。


「コレ!」


 少しして、俺は本を頭に乗せてハイハイしてきた。
 これは自分でも器用だと思った。
 この本は、挿絵を見た限りでは勇者が世界を救う話っぽい。
 最初から魔術本だと難しすぎるから、最初は絵本からスタートだ。

「コレよんでー?」

 と上目遣いでお願いする。
 だが母さんは俺の方を見ながら何かしら考え込んでいた。

「一歳で文字を学びたがるなんて……やっぱり異常なのかしら?」

 と、母さんが唐突に呟いた。
 それからもブツブツと何かを呟き続けている。

 おい。
 やっぱりて何だやっぱりて。
 というか怖いな。
 異世界に転生したのが俺だとすると、母さんは異世界にトリップしているらしい。
 取り敢えず戻って来させるために、俺は首を傾げながら、

「コレよんでー?」

 と、聞こえてますかー? のニュアンスも込めてもう一度聞いた。
 それと同時に母さんの目の前で手を軽く振る。
 少しハイハイのバランスが崩れかけるが、立て直す。
 母さんは俺の言葉で異世界から帰って来たようだ。

「えあっ?
 あ、うん。
 でも夜に読み聞かせしてあげるから、それまで待っててね」

「ありがとぉ」

 よし、文字を読めるようになって、魔術を使うぞ!
 ……あれ?
 でもこれって母さんから詠唱の読みを教えてもらえば良くないか?

 ちなみに母さんは治癒魔術しか使えないらしい。
 そして詠唱もそれしか知らないと言っていた。

 取り敢えず、それだけでも詠唱してみるか。
 俺は誰もいない時に、ベッドの上で詠唱してみることにした。

 えっと、たしか、こうだったっけか?
 一年以上前のことだから、忘れてるかもな。
 俺はベッドの上に座り、両手を掲げた。
 詠唱。

『傷付きしものに聖なる力を分け与えん。回復(ヒーリング)


 ……。


 うんともすんとも言わない。
 なんでだ?
 これじゃ何か詠唱してみた俺が馬鹿みたいじゃないか。

 少し考えてみる。そしてその答えはすぐに思い当たった。

 あ、馬鹿だ。
 発動する相手が居ないじゃん。
 普通の魔術ならどこかを狙えば良いけど、治癒魔術はどこか怪我している部分がないと使えないよな。

 しょうがない。

 俺は少し生えてきた乳歯とか爪で四苦八苦し、なんとか右手の親指の付け根にかすり傷を付けることに成功した。

 よし、もう一度。


『傷付きしものに聖なる力を分け与えん。回復(ヒーリング)

 指の痛みは消えない。
 ……どうやら、失敗のようだ。
 訳が分からない。

 うーん。
 魔力が足りないとかそんな感じなのか?
 でも、それにしては何にも感じられない。
 普通こういう時って危機的信号とかがでたりすると思うんだが。

 やっぱり何か手順を踏まないといけないのかな?
 それか詠唱がどこか間違ってたとか。
 いや、間違ってはないはず。
 じゃあ、もしかして、才能の類か?
 俺は治癒魔術は使えない、とか。
 うん、それが今一番高い可能性だ。
 やっぱり何も知らないで魔術を使うのはダメだ、ということか。

 そうは言っても、結局俺には治癒魔術が使えないらしい、ということが分かった。
 取り敢えず、今は保留だな。
 当面は文字の習得を目指そう。

 ちなみに、その指を母さんに見せたら、多量の心配とともに完治してしまった。
 うーん、どうしたら使えるんだろうな、魔術って。 
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