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普通だった少年の憑依&転移転生物語

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【東方Project】編
  067 5つの難題(難易度:イージー)

 
前書き

ヤっちまったぜ 

 

SIDE 蓬莱山 輝夜

升田(ますだ) 真人(まこと)。私を拾った人間(?)はそう名乗った。外見は茶髪で横柄な印象を与える様な顔付きだが性格は温厚で気さく。話してみると学が有るのか、意外と──そう言っては真人に対して些か礼を失するかもしれないが、真人は頭が良い。……永琳ほどでは無いけど

「……まぁ、それはさすがに比較対象が悪いかしらね…」

それはともかく。……真人は話し上手で聞き上手で、真人の様に頭の良い人との会話は楽が出来て──一々説明をする手間が省けたりして、次々と会話の内容を回せるから楽しい。……私は話すのが好きだから。

(まさか、〝あれ〟に耐えるとは思わなかったわ…)

打算も少なからず有ったが〝初めて〟くらいは、よく知らない人──求婚してきた貴族諸侯では無く、真人に捧げても良かった。家柄ゆえに〝そう云う勉強〟はあったし、容姿にも──さすがに幾十人から求婚されているので、自分の顔立ちには自信が有る。……それなのに──永琳が掛けた〝保険〟の所為も有るのかもしれないけれど…。

誘惑したら耐えられた。

「ふふふ、私を本気にさせた償いはしてもらうわよ? 〝女たらし〟さん」

最初はただの興味だった。……が、気が付いたら本当に、真人が気になっている自分が居る。なんと無しに微笑んでみれば、どこか──難題を攻略しているであろう真人が、(なにがし)かを感じたのかぶるり、と震えた様な気がした。……帰ってきたら私の手料理──真人仕込みのお粥で労ってあげる事にした。

SIDE END

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

SIDE 升田 真人

――ゾクッ

「っ!?」

<どうした、相棒? いきなり身震いなんかして…>

「……なんかまた変なフラグを誰かが建てた──この感じは輝夜か。……輝夜がなんか言った様な気がした」

輝夜が出した5つの難題──おれだけ全部の難題の攻略中に、いきなりの悪寒が俺を襲う。俺を(おもんぱか)り労ってくれるドライグに、いきなり俺が身震いした理由を簡潔に話す。……どうやら〝輝夜が俺に〟──否、この場合は逆かもしれない。〝俺が輝夜に〟変なフラグを建ててしまったかもしれない。

……例えば、〝輝夜を〝本気(マジ)〟に──本気でフラグを建ててしまったかもしれない〟。……とか。

(笑えない…)

とまぁ、内心で〝有り得そうだが認めたくない事実〟から現実逃避をしながらどこへとも無く吐き捨てる。……これで普通に輝夜と出逢えて…輝夜から想いを寄せられていたら、どれほど幸せだっただろうか。……今は詮無き事であるのは重々──厭と云うほど承知している。所詮は〝たら〟、〝れば〟。……〝IF(もしも)〟の話である。

……ちなみに、“大嘘憑き(オールフィクション)”で〝枷〟は外せるらしいが、外していない。……陳腐な理由だが外してしまったら、何かに負けた様な気がするからである。

閑話休題。

それはさておくとして。5つの難題のことだが、それほど難しくは無い。寧ろ簡単だと云える。……こればっかりは出題者──輝夜に俺の〝出来ること(スペック)〟の全部を見せていないので、輝夜は難易度設定を間違えたとも言い換えれる。……まぁ、輝夜は俺が簡単に出来るのを知っていて、こんな出題にしたのならそれはそれで、酷い出来レースだが。

(……だが、なぁ…)

やはりと云うべきなのだろう、気は進まない。 ……別に輝夜の事が嫌いな──性的な意味合いで欲しく無いわけでも無いが、これは云ってしまえば社会人が小学生のテストをやる様なモノで、些か躊躇してしまう。……輝夜の手のひらの上で踊って居るような気分で、業腹モノでもある。

「“仏の御石の鉢”…天竺に──インドに2つとない光輝く鉢か…。……輝夜、結婚するつもり無かっただろ絶対」

ふぅ、と、開幕ド初っ発からのあんまりにあんまりな出題に、嘆息してしまった俺は悪く無い。要はあのお姫様は、〝私に結婚の話を考えさせたければ、天竺(インド)にある──かは判らない、仏が愛用していたと謂われている鉢を持ってきて(意訳)〟と云っているのだ。……それも皇子にだ。

……ちなみに多治比嶋──石作皇子には朗報だが、“答えを出すもの(アンサートーカー)”で、輝夜が〝不可能〟な設問をしていないか確認(ズル)したが、“仏の御石の鉢”は存在している事が判明した。……【竹取物語】──〝原典〟としての、実際の“仏の御石の鉢”とは少々違っているらしいが。

「“仏の御石の鉢”…。ブッダが悟りを開いた際に四天王が持参した4つの鉢をブッダが合体させて一つの鉢とし、終生用いたという宝…ね」

【竹取物語】の原典ではかぐや姫は石作皇子を振る為に、架空のアイテムを持って来るように言ったのだろう。しかし、この世界には実在している。……つまり、万が一の可能性では有るが、石作皇子も輝夜からの難題を遂行する可能性が有るという事になる。

(……それはそれで面白くない…)

「……ん?」

独占欲のようなモノが沸いてきたのを感じる。

……これはあれだ。敢えて形容するなら…〝長年可愛らし笑顔を見せながら懐いてくれていた従妹(いとこ)がどことも知れぬ馬の骨に掻っ浚われそうになった男〟の感情に近しいものがある。……判り難いかもしれないが、俺が感じているのは大体そんなモノか。

「くくく…。くはっ、くっ、ははははははは!」

いつの間にやら漏れ出ていたドライグのオーラに当てられたのか、カラスらしき鳥が〝かぁかぁ〟と鳴き声を上げ飛びさって往く。そういう意味では周りに人が居なくて良かった。自然と──くつくつ、と沸き上がっていた感情──輝夜に対する浅ましい独占欲が、いつの間にやら笑い──自嘲に変わって漏れている事に気付いた。……もう認めるべきだろう。どうやら俺も、他の5人の貴族の様に輝夜にタラシ込まれてしまったらしい。

――パキィィン

……何かが壊れる音が聞こえた気がした。……恐らくは、輝夜曰く〝枷〟だろう。

そこまで自覚してしまったら、本気で難題に取り組む事に。……当初は大して気が進まなかった難題に対して──いつぶりだろうか、とうの昔に枯れていたはずのやる気が溢れてくる。今の俺は久しぶりの〝我欲〟で、いつに無くみなぎっている。あえてフラグを建てるのなら…そう──

「もう、なにも怖くない。……なんてな」

……それ──勝手に建てた死亡フラグはどっかに投げ棄てるとして、“仏の御石の鉢”の入手ルートのメドはたった。

「次は“蓬莱の玉の枝”か…。……さてさて〝実在〟するのか、っと…。……いや、〝原典〟通りなら、〝贋作〟──とは云っても限りなく本物に近い物を渡してもかぐや姫は気付かなかったか」

少なくとも車持皇子(くらもちおうじ)──恐らくは藤原不比等はかぐや姫とベッドイン直前まで行っている。……かと言って、輝夜に贋作を渡すのは憚られる。いくらこれが〝出来レース〟だとしても。……しかし、これについてもメドは着いた。

「“龍の首の玉”“火鼠の(かわごろも)”“燕の子安貝”…。……ここら辺は全部全部“魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)”でいけそうだな」

俺の“魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)”も、かねてより培って来た、俺の妄想──想像(創造)力になら応えてくれるはず。

……ちなみに“龍の首の玉”で思い出したが、“魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)”の〝禁手(バランス・ブレイカー)〟は完成していたりする。……その名も──“赤い龍帝の再生器(ウェルシュドラゴン・アナザーアバター)”。ドライグとの絶え間無い闘いの末に発現した〝禁手(バランス・ブレイカー)〟で、その内容を簡素に説明すると、(あざな)から予想出来るかもしれないが、ドライグ(魔改造)の解放である。……この〝禁手(バランス・ブレイカー)〟が発現した時、ドライグが泣いて喜んだのはご愛敬か。……それと、云うまでも無く〝これ〟は所謂〝亜種〟だろうという事は簡単に想像出来る。

閑話休題。

それから、難題に取り組み始めた。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「ほれ、右から“龍の首の玉”“火鼠の(かわごろも)”“燕の子安貝”“仏の御石の鉢”“蓬莱の玉の枝”だ。ここに、確かに揃えたぞ」

輝夜から課せられた、5つの難題を──[自重]の2文字を辞書から一時的に消去してクリアーした俺の現在地は、輝夜と暮らしている家。輝夜視点では店番の“別魅”な俺が居た──久々に家に帰って来て、風呂敷に包まれていた5つの難題を次々と輝夜への前に並べながら提出していく。

「……まさか1年も──いえ、半年も掛けず揃えるなんてね。……真人ならあの無理難題も成してくれるとは思っていたけど…。……一体どんな奇術を使ったのかしら? ……しかも見たところ、全部本物の様だし…」

「なに、種も仕掛けも──大して面白くも無い、力押しの手品だよ」

「……良いわ、合格よ。他の貴族諸侯には、私から〝5つの難題を全て集めた真人と結婚する事に決めました〟って、簡単な書状を回しておくからね。真人もそれで良いかしら」

「……ああ、そうしてくれ」

と、頷く。そもそも他にどんな方法が有るのかも判らない。

……それかあれだろうか? 輝夜は俺に、他に居る貴族諸侯を〝5つの難題を全て集めたので輝夜と結婚します〟と、煽れと云うのだろうか? ……それはさすがに御免被る。

閑話休題。

「……あ、今夜──今から輝夜を〝いただく〟事にしたから」

「え、ちょっ、待っ──」

輝夜を横抱き──俗に云う〝お姫様だっこ〟をして寝室へと運ぶ。その後は察しの通りの──記す事も野暮と云うものだろう。……まぁ、さすがに輝夜の許可を貰ったが…。

SIDE END 
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