| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

普通だった少年の憑依&転移転生物語

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

【東方Project】編
  062 少女修行中…

SIDE OTHER

「……あらあら、まさか〝過去〟に跳んでしまうとは…」

そこはとある家の一室。その家の主であり、長いウェーブのかかった金髪を靡かせている──どことなく胡散臭げな雰囲気を醸し出している少女は、手に持つ扇子で口元を隠しながら溢す。

「……困ったわねぇ…」

「何が〝困った〟のですか? (ゆかり)様」

「ちょっとやらかしてしまって──世の中から〝忘れられた〟外来人を〝幻想郷〟に呼ぼうとしたら、時間座標を間違ったのか〝昔〟に跳ばしてしまってね ぇ。……まあ、そんなに大した事では無いのだけど。どうせあの感じなら2~3年程度の誤差だろうし」

(ゆかり)という名前なのだろうか、そう──従者らしき存在から敬称付けで呼ばれた少女は本当に困っている様には思えない風情で独りごちて、部屋に入って来た従者──世が世なら国を傾ける事が出来ていたであろう程の美貌を持つ、短めの金髪に幾つかの尾をゆらゆらと揺らしている女性に何の気もなしに答える。

「確かに、今の〝外の世界〟の人間は周囲との関係が薄いとも聞きますし…。そう考えれば、そうそう珍しい事でも無いかもしれませんね。……でも紫様が手ずから〝呼ぶ〟なんて珍しいですね」

「私が〝どんな妖怪〟か判ってるでしょう? ……あーあ。これならまどろっこしいマネ──河童の怪しい機械に頼らず、大人しく直接〝スキマ〟に落として〝呼べば〟よかったわね。迎えに行こうにも、機械ももう壊れちゃったし…。……本当に、好奇心は猫を殺すわね」

「愚問でしたね。ですが、それは少し違うと思います」

「もう、ツレないわねぇ。相変わらず(らん)は堅いんだから…。そんなんじゃ誰も嫁に貰ってくれないわよ? ……なんか口が寂しくなっちゃったわね。藍、お茶請けお願い。あ、出来れば煎餅が良いわ。確か、私の記憶が正しければ居間の棚に仕舞ってあったわよね?」

「私は既に紫様の式として永久就職してますので結構です。それでは茶菓子をお持ちしますね」

紫はジト目の従者──藍と呼んだ女性をからかいながら湯飲みに口を付ける。……やがて藍のジト目に耐えられなくなった紫は藍を部屋から退室させようと、茶菓子を催促する。……藍も主人の命令なので、茶菓子を取りに行く為に部屋から退室していった。

「……やだ、式(家族)からの愛が重い。……それにしても、〝升田 真人〟ねぇ…。偶然かしら?」

〝升田 真人〟…。少女は、〝彼女〟を知る者なら目を疑う様な顔で──まるで初恋を患った思春期の少女の様に頬を朱に染め、口元を扇子で隠しながら噛み締める様にその名前を呟くと、にこりと口端を吊り上げる。

……その様は先ほど退室した従者──世が世なら国を傾ける事が出来ていたであろう程の美貌を持つ藍よりも美麗で綺麗で…妖艶だった。

SIDE END

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

SIDE 升田 真人

羅鬼を討った翌日。村はちょっとした喧騒に包まれていた。その喧騒で目を覚ますと、未だ日が昇ってちょっとだけ経過した様な時間帯だった。……騒ぐのも判る。村の脅威だったであろう〝妖怪〟…〝鬼〟の死体が見付かったら──俺も何も知らずにそんな珍事に遭遇していたら、俺も驚いただろう。

「真人~~っ!」

「シホか」

「〝シホか〟じゃないよ、どうしてこんなところに居たの? 〝宴だ宴だ〟って、村はあんなに活気付いてるのに」

シホの言う通り、喧騒はここ──シホと最初に出会った林にまで聞こえてくる。……が、ついでとばかりに、小さな──それも、至極どうでもいい事が疑問に思えてくる。

(……あれ? シホは何で俺の場所が判ったんだ?)

「……シホはどうしてここに?」

「……あのね真人、私〝混じり子〟って話したよね? でね? いつもは普通なんだけど、鼻とか耳に意識を集中すると凄く鼻や耳が利く様になるんだ、わたし」

「へぇ…。……いや、まさか…」

無意味に溢してしまっていた俺の疑問に、シホはまどろっこしい──変な言い回しをしているので、ついシホの顔を見てしまう。……しかし、シホの言う事が正しいなら、疑問が──〝俺の居場所が判ったか〟という小さな疑問は解氷した。……更に疑問──と云うよりは心配事も沸いてくる。……最悪、シホの言う事が正しいなら羅鬼を討った人間を知ってるという事になる。

「……うん、わたし知ってるよ。あの鬼は真人が殺したって。だって、あの鬼に真人の匂いがこびりついてたから」

「……確かに羅鬼──あの鬼の名前な。羅鬼は俺が殺したよ。拐った女の〝結末〟を聞いてたら、頭に血が上ってな。つい殺してしまった。……で、シホには事実を話したが他に聞きたい事はあるか?」

「じゃあさ、何で村の皆に名乗り出なかったの?」

「……羅鬼と闘ったのは、ただ自分の欲求を満たすためだけだったからな」

そこまで知っているなら取り繕っても仕方ないので、事実を伝える。……シホは(おもむろ)に──何かを探る様に口を開いて、とんでもない事を(のたま)った。

「真人にお願いがあるの」

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「はぁっ…はぁっ…はぁっ…」

「降参か?」

「まだ、いける…よっ」

俺の前でシホがあられも無い姿を晒し…頬を上気させ、乱れに乱れた呼吸を安定させようとしている。……もちろんの事ながら、俺はあのワル(略)──〝どこぞの髭野郎(ロリコン)〟や〝幼女性愛者(ペドフィリア)〟とは違うので、10歳程の少女──シホに〝いかがわしい事〟をしているとかそういう訳では無い。

……ちなみシホが着ているのは俺が昔着ていたジャージで、町娘風の着物ではさすがに風当たり(?)が強いのでシホにはジャージを着てもらった。……尚、シホは着物より動きやすいジャージを気に入っていた。

閑話休題。

「300数えるまで休憩な」

「はーい」

……大した事をしているわけでも無く、シホを鍛えているだけだ。場所は、【MAR】のディメンションARM…“修練の門”の中の異空間で、本来なら入れないはずの術者──俺が〝この中〟に居れるのは、毎度おなじみの“腑罪証明(アリバイブロック)”の応用。……〝外〟で、シホが中──“修練の門”から出たのを確認して、仮眠をとってから“腑罪証明(アリバイブロック)”で〝中〟に入っただけの事である。……判り難いなら以下のチャートで。

(0)まず、ディメンションARM“修練の門”、シホ(修行者)、座ったまま徹夜出来る様な空間──本や椅子、徹夜出来る程度の体力、やる気などを用意する。

(1)“修練の門”を使用してシホを“修練の門”に入れる。

(2)1日──24時間経過後、シホが“修練の門”から出て来たのを確認したら“修練の門”を消し、徹夜明けなはずなのでいくらか──気の済むまで仮眠を取る。

(3)“腑罪証明(アリバイブロック)”で、〝昨日シホが入った、“修練の門”の中〟に転移する。

(4)2ヶ月間シホを鍛える“修練の門”倍数60倍だから、〝外側〟での1日が〝中側〟では60日になっているはずなので、大体2ヶ月は付きっきりでシホを鍛える。

(5)“修練の門”からシホを〝外〟に出す。シホが〝外〟に出たのを確認したら、自分も“腑罪証明(アリバイブロック)”で(3)の直後に転移する。

(6)(1)~(5)をシホの肉体に違和感──急激な成長が起きない様に、シホを成長停止のスキル…“不老所得(インカムサポート)”でシホの体の成長〝だけ〟を停めておいたスキルを解除しておく。

(7)☆彡魔改造シホ完成☆彡

……と、まぁ以上の様な感じでシホを鍛えている。……俺の修行ならまだしも、だらだらと──山も谷も、オチも無い修行風景を見ていても仕方ないので──潜在能力を引き出すスキル…“勿体ない資質(ポテンシャルヒット)”や、地の文に干渉するスキル…“神の視点(ゴッドアイ)”などのスキルをフルに使って省略する。

「……300経ったよ。……次は当てる」

「くく、〝次か〟…。……そう言ってる内は当てられんさ」

「言ってなよ! 直ぐにその軽口を叩けなくしてあげる!」

シホの言葉通りという訳では無いが軽口はそこまでとして、地を蹴り──俺は少し抑え目だが、俺とシホはどちかともなくぶつかり合う。

シホの潜在能力を引き出して判った事だが、シホは犬か狼の〝混じり〟だったらしく、シホにはその潜在能力──つまり、〝妖怪〟の力を引き出し方を教えてあるので、体力やら膂力やらは普通の人間を凌駕している。

……ついでに、その時のシホからは犬耳と犬しっぽが出ている。俺にケモナーの〝気〟が有ったら修行どころでは無かっただろう。……まぁ、本当にどうでも良いことなのだが…。

閑話休題。

SIDE END

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

SIDE シホ

真人に“修練の門”とやらに入れられる事6回目。そろそろ真人は日生(ひなせ)村を発って、次の居場所に向かって流離(さすら)うらしい。わたしの力も真人からの試験に合格して、修了証書代わりに“鉄砕牙”──純粋な〝人間〟でも〝妖怪〟でもなく、わたしみたいな〝混じり子〟のみが使える──真人曰く〝わたしにお誂え向き〟らしい刀を貰える事になっている。

(……離れたくないなぁ…)

出来れば…出来ることなら一緒に居たい。“修練の門”の中で経過した約1年で真人の良いところは沢山見付かった。……真人の事を考えるとふわふわとした気分や、胸の奥──心の臓がどきどきと鳴るけど悪い気はしない。……〝この気持ち〟がどんな事を意味しているかは判らない。……でも〝離れたくない〟…。それは偽りの無い、私の気持ちだった。

SIDE END 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧