あひるのジマイマさんのお話
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第四章
「人間に見られて」
「そこを猟銃で狙われて」
「撃たれるかも知れないわ」
「それに対してお水の中に隠れたら」
湖のその中にです。
「姿は見えないし」
「猟銃の弾も届かないわ」
「そっちの方がずっといいのね」
「私達にとっては」
「そういうことなのね」
「だから私は泳げる方がいいの」
またこう言うジマイマさんでした。
「ずっとね」
「そうなのね、わかったわ」
お母さんもそのことを聞いて述べました。
「家鴨さん達はそうなのね」
「ええ、本当にね」
「私達もそうだしね」
飛べない兎さん達もとです、お母さんはジマイマさんに言いました。
「飛べないけれど」
「ちゃんとやっていけてるわね」
「ええ、走って隠れてね」
「隠れることが一番いいかしら」
「私達にとってはね」
「その色なら隠れやすいし」
野兎のその茶色の毛も見て言うのでした。
「いいじゃない」
「言われてみればそうね」
「兎さん達にしてもね」
「そうね、けれど家鴨さん達は」
「私達は?」
「白くて目立たない?」
「いえ、湖の中だと白くてもね」
この色でもだというのです。
「水面が光を反射して銀色じゃない」
「あっ、銀色と白は似ている色だから」
「波が白くもなるから」
「目立たないのね」
「草陰にしても深いし。根の方は白いじゃない」
「だから白くてもなの」
「そう、大丈夫なのよ」
目立たないというのです。
「ちゃんと保護色になるのよ」
「身体のことも」
「そう、普通にね」
「成程ね、私の心配は杞憂だったのかしら」
「杞憂になるかしら」
「別に心配しなくてもいいことだったのね」
家鴨も飛べたら危険に遭わないということがです。
「そうなのね」
「そう思うわ、けれど」
「けれどなのね」
「そうなの、けれど有り難う」
「有り難うって?」
「私達が飛べることを教えてくれて」
それで、というのです。
「面白いことがわかったわ」
「それでなのね」
「そう、覚えておくわ」
「じゃあいざとなったら」
「ひょっとしたらね」
その時はというのです。
「飛ぶかも知れないわ」
「けれどその時までは」
「泳げれば充分だから」
「飛ばないのね」
「ええ、そうするわ」
こう言ってでした、ジマイマさんはお母さんと一緒に買いものをするのでした。家鴨のその足をぺたぺたとさせながら。
あひるのジマイマさんのお話 完
2014・11・14
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