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邪剣

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4部分:第四章


第四章

「正直なところあいつには渡したくはないんだよ」
「それもあってここに来たから」
 クリスも言う。
「オズワルドはあまりにも危険だから」
「そうらしいな」
 ホークムーンはここでも二人の考えを読んだのだった。
「目的の為には手段を選ばないか」
「仲間を陥れたり何の関係もない人を手にかけたりな」
「幼い子供ですら何人も手にかけてきた」
「それもかなり残忍なのだな」
「その子供の生首を親に送りつけたりな」
「そんなこともしてきた」
 オズワルドとはそういう男なのだった。
「賞金がかけられている奴の子供をさらってだったな」
「そうだったな。あの時は」
 二人は忌々しげな表情になって互いに顔を見合わせながら言い合った。
「その子供をすぐに殺して首を送りつけて錯乱したところを」
「すぐにだった」
「惨い話だ。しかもだ」
 ホームクーンは二人の話を聞きながらまた心を読んだ。
「その賞金がかけられているのは政変で国を追われた貴族だったか」
「あくまで民衆の為に、国の為にと思っているな」
「政変を仕掛けたのは私利私欲しか考えていない奴等だった」
 二人はこうした事情もホークムーンに対して語った。
「それでもあいつは金の為にやった」
「そして子供までだ」
「他にも悪事を色々と重ねてきているな」
「そうさ。盗みはするしエルフやホビットの村を遊びで火をつけたり」
「女の子をさらって弄んでそれから売り飛ばしたりもする」
「救われない男だな」
 長く生きている筈のホークムーンですらこう呟く程だった。
「それはまた」
「そんな奴さ、オズワルドは」
「そうした男にその剣が宿れば」
「どうなるかわからん」
 これが彼等が導き出した結論であった。
「だからだ。ここは是非」
「協力して欲しいんだな」
「僕達に」
「うむ」
 またその話になり今度は彼等の間で頷き合うのだった。
「それでは頼むぞ」
「ああ、わかったぜ」
「こちらもそのつもりだし」
「報酬は弾む」
 ホークムーンは報酬について言うのも忘れなかった。やはり長く生きているだけはあり人が何によって動くのかもわかっているのである。
「黄金にしろ宝玉にしろ好きなだけな」
「また随分と弾んでくれるね」
「宝は腐る程ある」
 ホークムーンは言う。龍という生き物は宝を蓄えるのが好きだ。だから彼にしろその蓄えている宝は相当なものに及んでいるのである。
「その中から持って行くがいい」
「ああ、わかったぜ」
「そういうことならな」
「話はこれで決まりだな」
 ホークムーンは二人がそれで納得したと見てここでこう述べた。
「それではだ。行くぞ」
「ああ」
「その洞窟へ」
「どうやらあのオズワルドという男」
 ここでホークムーンの目が顰められた。
「魔術も使えるのか」
「そうさ、奴は魔法剣士なんだよ」
 アーノルドは忌々しげにこのことをホークムーンに告げた。
「実はな」
「しかもかなりの手練れ」
 クリスも言う。
「一人でキマイラを倒したこともある」
「一人でキマイラをか」
 これにはホークムーンも唸った。キマイラといえば言うまでもなくかなりの強さを誇る魔獣である。その強さは龍にこそ及ばないもののかなりのものなのは確かだ。
「それはまた」
「だからさ。大抵の魔法はな」
「使える」
「転移したか」
 ホークムーンは気配を探りつつ述べた。
「どうやら。もうその洞窟へ」
「洞窟には結界とかはあるのかな」
「一応はな」
 アーノルドの今の問いにも答える。
「してはいる」
「けれどあいつにはってわけか」
「そうだ。感じる」
 ホークムーンの目がまた顰められる。
「その強大な力をな」
「あんたの結界も通じないってわけか」
「今まさに破ろうとしている」
 そのことも気配から感じ取ったのであった。
「その魔力でな」
「まずいな」
 クリスはそのことを聞いて顔を曇らせた。
「だとすると今にも奴に剣が渡る」
「どうする?」
 アーノルドも深刻な顔になっていた。
「このままこの森を行っても正直どれだけかかるか」
「そうだな。その間に奴が剣を手に入れるのは間違いない」
 二人がそう話しているとここで。またホークムーンが二人に対して言ってきたのだった。
 
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