ファイアーエムブレム ~神々の系譜~
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第二章 終わらせし者と月の女神
第八話
時間はある
出発から、まだ一日しか経ってないがなんだか随分遠い所に来てしまったような気がした。ソールを雇って出発まで、数日かかった。というのも、馬とか次の村までの食料、野宿用の道具であったりと旅に必要な物を用意するのに多少時間がかかってしまったというのが原因だ。
何しろ道中なにが起こるかわからない。必要最低限且つ重要な物の査定しているうちに気づいたらといった感じだった。
さて、ではまず出発から今に至るまで早速問題が起きていた。
ソールとの多少の会話を進めながら馬に乗りゆっくりと最初の目的地であるマッキリーへと向かっている二人だが、それでも一日では到底たどり着けるはずもなく野宿をする事になった。場所は木々に囲まれた森から少し入ったところだ。
「それにしても、何故ブラギの塔に向かうことになったんだ?」
野宿の準備を全て整え、ロキとソールは焚き火を囲みながら雑談を始めた。
「言っても信じないと思いますよ。言うなれば神の啓示です」
「そうか」
「ええ。神の啓示を受けたと言っても信じる人は少ない。こんなにも有り得ないことが多いこの世界で」
「神の啓示か……」
ロキの漏らした言葉に、ソールは反応を見せた。
「魔法があり、信仰もあり、神と称される者もいる。かつての英雄達も存在し、その武具は今でも世界で最強を誇る物として扱われているのに」
「確かに、それはあるな。魔法が何故存在しているのか疑問に思ったことがなければ、かの英雄達が存在していたことも一般的な常識だな」
「そうなんです。不思議には思いませんか? 魔法の存在理由もかつての英雄達も、私の兄が持つミストルティンも、全てに理由があるはず」
随分、子供の癖に面白いことを考える。ソールがロキに対して抱いた印象だ。
その答えは、きっと誰にも答えられない。それこそ、この世界を作った神にしかわからないことだ。
「お前は、何をしたいんだ?」
純粋な疑問だった。どこか不思議な雰囲気を持ち合わせ、突拍子もないことを言い放つ。
まだ、ソールにとってロキとは護衛対象にも関わらず、警戒すべき人間という意識があった。
「けっ、今日の収穫もしけてやがる」
「なんせ、人が多いだけの難民の集まりでしたからね。丁度この世界のための口減らしとしては良かったでしょうよ」
「ちげえねぇな。王様から金もらってやってもいいくらいだな」
山賊達は血濡れの斧を抱えながら、自分達の住む砦へと帰る途中だ。およその数で言うと二十に満たないくらいだろうか、ノディオンからマッキリーに向かう途中にある細道に来る力無き者達に対してだけその猛威を振るう狡猾な奴らだ。
細道から山へと帰る途中に一人の山賊が遠くの方で、こちらに向かってくる馬車を見つけた。
遠目にもわかるくらいその馬車は、煌びやかな物で早速山賊の長へと報告しに行った。
「何!? よくやった。お前らここで待機だ! どうせなら今日の収穫をもっと増やすぞ! それにもうじき夜になる、油断した所を狙え」
その決定が、彼らの運命を崩壊へと決めた。
「ロキ! 気をつけろ!」
焚き火を囲んでいたソールは、何か不吉な感じがするとロキを自分の後方へと追いやり剣を構えさせた。
「一体、なにが!?」
「わからん。だが、近くに何かいる。しかも、割と多く気配がする」
二人は、細道に差し掛かるかどうかといった所で野宿をしていた。ロキの発案だ。
ソールは、それについて同調の意を唱えていた。というのもここ最近、この道では山賊による被害が出ているという話しを聞いていた。それによって、次の日に一気に通りきってしまおうと考えていたわけである。
が、しかし図に乗った山賊共はどうやら夜を見計らい山から降りてきたらしい。
「ガキと護衛一人か。チッ、しけてやがる。野郎共一気に殺せ」
山賊達は、気づかれたのを悟ったと同時に彼らを囲むように前へと飛び出した。
「ソール、どうやら僕のミスらしい」
「ふん、高々十人前後だ。楽な相手だ。それに雇い主に俺の力を見せるには良い機会だ!」
「なにをぐだぐだお喋りしてんだ! てめぇらとっとと……」
山賊の一人が喋り終える前に、ソールは一刀両断。首と体が切り離された。
「流石ですね。貴方を雇って正解でした。でも僕も負けてはいられません」
今の光景を見たロキは、怯むどころかどこか微笑むような穏やかな顔をしている。
そして、自身もあの泉の女神から託された剣を中段に構え、敵を睨みつける。
「てめぇら、少しはできるようだな。だがな一対一では負けても、二十対二なら話しが変わるだろ!」
木々の間からぞろぞろと賊が出てくる。
「うーん。ピンチという感じではないですね」
「あぁ、まだ許容範囲だ」
ソールは、剣を下段に構え賊に相対する。
賊は雄叫びを挙げながら、斧を振り落としたが、全く掠ることもなく、気づけば首を切り落とされ、正に流れ作業のようにソールとロキの周りにいた賊を全て殺した。
「バケモンか! くそっ!」
山賊の長である男も、目の前の光景がまるで信じられず愚痴をこぼす。
「本当に凄いですね」
ロキもつい感嘆の声を挙げてしまった。
ソールは、まだ足りないと更に剣を軽やかに捌き死体の数を増やす。
気づけば、片手で数えられる程度の山賊しか残っていなかった。
「伊達に闘技場で鍛えてはいない」
山賊の長は、ソールに飛びかかる。自分にしか相手が務まらないと考えたのだ。
その間に残った部下を、ロキの元に送った。
「ちっ、山賊風情にしては中々できる。ロキそっちは大丈夫か」
一合二合と手合いを重ねるが、そこは山賊の長たる結えんか勝負が決まらない。
「ええ、大丈夫です。こっちは終わりました」
正に秒殺だったのだろう。長がソールと打ち合い時間もそう経ってはいないが、気づけばロキは自分を殺しに来た賊を既に殺していた。
血まみれの地面に、一人立ち微笑みを浮かべるロキ。なんとも不気味な姿だとソールは感じた。
しかし、そこからは早かった。天才的な剣術の才能を持つソールは長の右腕を切り落とし、首を跳ねた。
「なんとかなりましたね」
「相手が弱かったな。丁度旅の始まりの相手としては、上出来か」
「そうはいっても、油断大敵です。今回は戦える数だったからよかっただけです」
「それはあるが……。にしても、子供の癖に中々強いな」
「伊達に貴族はやってない。ただそれだけのことです」
「俺の知る貴族とは、気色が少し違うようだ」
少しだけ顔を歪めるソールに、興味を抱いたロキは思いきって訪ねる
「ソールさんの出身はどちらに?」
「そこらへんの話しは追々していこう。今日は少し疲れたろう。早く寝ることだ」
「そうですね。では、警戒をお願いします」
「ああ、なにかあったら起こす。それに俺の事はいずれ話すさ。時間ならたっぷりとあるからな」
ロキは血に汚れた服を着替え持ってきていた水を温めて、布をそれにつけ全身を吹き上げるとテントに入りそそくさと眠りについた。
「三カ月か……時間はある」
その独り言を、ソールが聞くことはなかった。
ところかわりセレーネの一行もまた苦難に見舞われていた。セレーネの友人である貴族の少女は本当に彼女に腕の立つ護衛を数人つけていた。
ハイライン城から出発し、アンフォニー城、シルベール城と経由しマディノ城。それから最終目的地であるブラギの塔へというルートで進み始めた。そのコースはロキ達とは正反対のコースであり、ロキ達の取る道のりよりも長く時間がかかるものだった。
ロキ達よりも早く出発し、予定では既にシルベール城へとたどり着いているはずだったのだが、とういう訳か未だにアンフォニー城に滞在しているのだった。
「アベルさん、ソワレさん、フレデリクさん。本当にごめんなさい」
セレーネは、ベットに寝そべっている。顔は赤く、その額からは玉のような汗が流れる。最初はただの風邪かと思われたがそうでもないらしい。
ライブの杖、その上のリライブの杖でさえ完治に至らしめることはできずにいた。となれば、彼女の病気が治るのを待つしかないということになったわけだが、通常風邪ぐらいの軽度なモノならばライブの杖、リライブの杖で治る。主に、傷の治療にて使われるが体力の低下、循環機能の低下等にも効果が発揮されるのは有名な話だ。
そして、今回それが効かないということは原因はなんだという事になる。結果セレーネの護衛である彼らは結論を出した。毒もしくは、呪いに違いないと。
「アベル、ソワレ。あなた達は、『家なき人』から情報を貰いに行ってください。私はセレーネさんの治療法を探ります」
一難去って又一難とは、よく言ったものでどちらともの旅路は、困難が待ち受けているのが目に見えているようだった。
後書き
今更ですが、原作とは話しが大分変わる予定です。
p.s ファイアーエムブレムifが楽しみすぎて、一度売った3dsを買い、さらに一度売ったfe覚醒を購入した私ですが白か黒、もしくは両方。それか約1万の限定版を買うか迷っています。何れにしても第三のシナリオまでやりたいので限定版が安上がりかなと思う今日この頃なのでした。
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