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没ストーリー倉庫

作者:海戦型
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【D×D】いけない!掃除男は君の身体に罠を!

 
前書き
とうとう待望の奴が掃除男の餌食に。 

 
 
ヴァーリからコカビエルに関しての顛末を聞いた時、堕天使を率いる「神を見張る者(グリゴリ)」の総督であるアザゼルは少々気になる事を聞いた。

「……動揺していなかった?」
「ああ。魔王の妹はともかく、聖剣使いまでもが神の死に対した動揺を見せなかったな。いや、どちらかというと予想通りか、若しくは納得か?そんな口ぶりだったな」
「ふーん……」

アザゼルはその話が少し気にかかった。
まず、いくらあの魔王サーゼクスの妹とその眷属といっても、三大勢力の前提が揺らぐような重要な事実をそう簡単に漏らすものだろうか。アザゼルの知る限りではサーゼクスは身内に甘いが浅慮ではない。教えていてもおかしくはないが、考えにくい。
さらに言えばヴァーリは「知っていたようだった」とは言わなかった。そして教会側の人間――しかも聖剣を与えられるほどの精鋭が、その事実に動揺していなかったという。

アザゼルの推測が正しければ、グレモリー眷属か教会の人間、もしくはその協力者の中で神の不在に薄々感付いていた存在がいる。

(果たしてどいつなのかは知らないが……勘が鋭い奴だ)

一体誰だ?まさか最近魔王の妹に近づいているという人間だろうか?魔力も神器もない無宗教的な人間だと報告では聞いているが、実はそれ以外は一切が謎に包まれている男だ。
騒ぎの中心にいるグレモリーとその眷属達に近づく人間。

(まさか……"禍の団"側のスパイか何かじゃないだろうな?背後関係に不審な部分は見当たらなかったが、それはそれでただの人間にしては怪しい。直接会ってみるか……?)

――後にアザゼルはこう語る。

あれはきっと悪魔陣営か、若しくは箒そのものが仕掛けた餌と言う名の罠だったに違いない、と。



 = =



よう。俺の名前は掃詰箒だ。某インフィニットなんちゃらとは関係ないぞ?
まぁそれはさて置き、うちの学校ではもうすぐ授業参観がある。それに伴って学校は今とても慌ただしく、それは美化委員である俺も例外ではない。親御さんがここに来るのだから、掃除がきちんと行きわたっているかの入念なチェックを行わなければいけないのだ。でなければこの学び舎が汚い場所と思われ、学校の品位が落ちてしまうという訳だ。

「玄関口、少々ホコリあり。減点2点。掃除用具がきちんと仕舞われていない。5点減点。ガラス拭きが出来てない。5点減点。後は……ん、問題ないかな」
「ええっ!5点減点って、これ1項目5点満点でしょ!?0点ってこと!?」
「だって埃が張ってるのに手つかずで放置してるじゃん。点は上げられないよ?」
「き、厳しい……掃詰先輩以外ならそれくらい大目に見てくれるのにぃ……」

玄関掃除担当ががっくりと肩を落とすが、それよりも聞き捨てならないことが。

「おい、点数を大目に見たっていう美化委員はどいつだ?」
「え、聞いてどうするんですか?」
「美化委員に大目とか手心とかそういうのは要らん。再教育リストに入れておく」
「何ですかその恐ろしいリストは!?この学校の美化委員はどうなってるんです!?」

美化委員会はこの学校でも生徒会や風紀委員に並ぶ練度を誇る。同級生のよしみなどと甘ったれたことを抜かす軟弱者はその性根を叩き直す必要がある訳だ。担当生徒をきっちり締め上げて名前を聞きだした俺はそれをしっかりメモに書き止めた。

――と、不意に俺は「今、校門の方を見ようとしたのを一瞬忘れた」事に気付いて校門の方を向く。
この感覚は――認識阻害だ。自分の存在感を意図的に薄くしているような感覚だろうか。どうやら人外かアッチ系の術が使えるヤツが来たらしい。

「あ、掃詰先輩。お疲れっす」
「お、匙か?丁度いい、ちょっとこっち来て隠れろ」
「へ?」

生徒会員で後輩の匙が来たので、手を引っ張って下駄箱の近くに隠れる。匙は一応新人悪魔らしいので万が一のときに戦力になるだろう。

「な、何事っすか?」
(いいか、声のトーン落とせよ……お、いたいた。あのオッサンだな)
(んん?誰っすかねあのオッサン。なんかちょいワルな雰囲気っすけど)

ちょいワルおっさんは普通に校門に入ってきて、不意に床の一部を見る。そこにあったのは――

(なんすかあのパネル?誰かの落とし物……?)
(いいや、生徒会長殿の許可を得て設置したものだ)
(何か特別なパネルってことっすか?)
(まぁ特別といやぁ特別かな)

と、ちょいワルおっさんはそのパネルを上機嫌そうに踏んづけて行った。

(ん、嬉しそうに踏んづけたってことは高確率で堕天使だな)
「堕天使っすか…………って堕天使ぃぃぃッ!?」
「あ、バカ」

匙が大声出したせいでちょいワルおっさんはこちらに気付いたのか接近してきた。

「いやな、昔にキリシタンに試してた『踏絵』ってあるだろ?あのパネルはそれと同じ絵が描かれてんだよ。悪魔なら避ける。教会の人間なら罰当たりだって怒る。嬉々として踏んづけるのなら堕天使、ってな」

印刷はアーシアにさせたので割と真心籠ったキリスト絵だ。悪魔なら態々近寄りたくないし、教徒ならパネルが放置されていることに怒ったりするだろう。対し、堕天使は本質的に神やその教えを否定する行動を取る。神の教えに反逆するのを楽しむならば高確率で堕天使だろう。

「おおー、流石先輩!それで判断するって発想が既に斜め上っすね!………ってそんな事言ってる場合っすか!!ここは悪魔の管理する駒王学園っすよ!?堕天使が真正面から突っ込んでくるなんて非常事態じゃないっすか!!」
「そんなことより俺をサルの知能テストみたいなもんに付き合わすのってどうなんだよ、なあ?」

ちょいワルおっさんは、慌てる匙の後ろで口元をひくつかせる。予想外の罠にまんまと選別された事を悔しがると共に、サルの知能テストが如く預言者の肖像を使用するスーパー不敬者に戦慄した。



 = =



間違いない、こいつがグレモリーの囲ってるという人間だ。
こちらが堕天使だと分かって慌てる神器持ちの転生悪魔とは対照的に、静かな目でこちらを観察していた上に、全く魔力や神器の気配を感じない。見事なまでの一般人である。

「……で、堕天使の総督が何でこの学園に?」

騒ぎを聞きつけた赤龍帝と聖剣持ち、ついでに段ボールに入った女みたいな男も加わって何とも言えない空気。その空気を作ったのがアザゼルなら破ったのもアザゼルだった。

「なに、ちょっと顔見せにな。ところで……お前ら神が死んでる事を知ってたそうじゃねえか?」
「や、知ってたわけじゃないけど……なぁゼノヴィア?」
「うむ、掃詰先輩が可能性の一つとして事前に挙げていたからなぁ……」
「やっぱ死んでたんだなヤハウェって」
(何となくそうかなって思ってたがやっぱりコイツだったチクショー!!)
(えええええ!?か、か、か、神って死んでたのぉぉぉぉぉぉぉ!?)←ギャスパー

他の連中にも話を聞いてみたらこの男、天使の降臨する場所がバチカンであるという=イェルサレムでは問題がある=問題とは恐らく同じ神を信仰する宗教同士の混乱を防ぐ苦肉の策=今の分裂状態は神の本意ではない=神が人間に干渉しているのに統一されていない=神の意思を伝える天使側に問題がある=というか意思を伝える係を天使が独占しているということは神の存在が確認できない=実は神は存在せず、実体のないシステムが人を管理しようとしている?という連想ゲームで真実にたどり着いたらしい。

(ありえねぇ。教会も悪魔も堕天使もほんの一握りを除いて全く気付いてねぇんだぞ?確かに俺は神がいなくても世界は回るとは思ってたが、何で17年しか生きてねぇ無宗教のガキが気付くんだよ!?)

あのバルパー・ガリレイでさえ「双覇の聖魔剣」を見るまで気が付かなかったというのに、何故聖書も碌に読んだことのない奴が現状を見ただけで気付くんだ。
というか人避けの魔法を勘で見破りやがった。堕天使最強の使った魔法を、違和感がない事に違和感を覚えて見破りやがった。聞いてみたら前もこの手の方法でグレモリーのクイーンが仕掛けた認識阻害に感づいたらしい。正直堕天使のトップとして凹む。

どうなってんだこいつ。完全一般人で完全に悪魔と関わるメリットがないのに「暇つぶしと知的好奇心」だけでグレモリー眷属にしれっと混ざってやがる。眷属じゃないけどリアス・グレモリーが友人として認めてる時点で実質似たようなものだ。

が、しかし自衛能力ゼロ。清々しいほどにゼロである。この神やら悪魔やらが散々絡む世界に足を突っ込んでおいて出来る仕事がある訳でもないのに、何故かこちらの干渉には気付く。そして物見遊山でやってきておいて、言う事がいちいち問題の的を射ているから悪魔側も無視できないでいるというのが現状らしい。

例えば匙という新人悪魔の持つ神器の「黒い龍脈(アブソープションライン)」について掃詰は全く知識がなかったし五大龍も知らなかったが、吸収(アブソープション)という名前からいち早く「何かを吸収できる」という機能に気付いていたようだ。神器を持っている匙本人も気づいていなかったのに、その能力には相手に力を与えるなどの応用は効かないのかと質問していたそうだ。
また、実はコカビエルが魔術的な罠を町に仕掛けているのを普通に発見していたらしい。というのも、元々町を調べ回るのは好きだったらしく町内で起きた小さな変化をまとめるうちに「あれ?異変のポイントを点で結ぶと魔法陣そっくり?」と思ったとか。
おかげでコカビエルの事件は初動が早く、またコカビエルの地味な精神攻撃を潜り抜けさせるという所業を本人の居ない所でやってのけている。お前は名探偵か何かか。

そしてそんなこんなで事件に口を出しまくっている癖に、実はただの人間。つまり中立存在だったりする。

はっきり言おう。このままだとこいつ死ぬわ。

悪魔と関わってるのに警戒ゼロな時点で既にテロリストや敵対組織に始末される可能性がある。こう言う奴は普通何かの庇護下にいないといけないのだ。でなければ身を引くかこちら側の力で引かせるか、或いは記憶を消すことで相手にこの男を殺すメリットを消すべきだ。

なのに記憶を消すと消されたことに気付いて調べ出す。外に飛ばされても恐らくは知的好奇心に負けてこの界隈を調べ出すだろう。そして死ぬ。死んだらおそらくリアス・グレモリーは殺した相手を許さないだろう。

(友達だから……か)

こいつを見捨てればそれで済む。
だが、あの甘ちゃんお姫様は何が何でもそれをしたくないだろう。
アザゼルも人間は好きだ。現実的な厄介さを除けば掃詰のような奴も見ていて面白い。天使も悪魔も見境なく接し、力の差も寿命の差も気にしない。そんな清々しいほどに純粋な人間は、きっと世界中探してもそうそういるものではない。

「なるほど、こりゃ厄介だわ。視界に入ったら目で追わずにはいられず、口を開いたら耳を傾けずにはいられない……そういうエンターテイナーの才能だ、あれは」

ごく自然に、あいつには死んでほしくないと思わせるだけの距離感にいる。
ある種の人徳というか、魅力。また何かをやらかすのではないかという奇妙な期待。

しかしどう助けたものか……それが問題だ。



「――っつう訳なんだがお前らどう思う?」

三大勢力会談での問題提起について。

ミカエルの返答。

「神の子である人間を見捨てるという選択肢はありませんね。天使に転生させると色々と危機が訪れそうなので匿うのは無理ですが」

教会の教え=全部理屈で説明できると豪語した彼を入れると、信徒の信仰が揺らぎそうという本音がちらっと見えた。

サーゼクスの回答。

「彼は私の話友達でね。流石に悪魔の駒で転生させることは出来ないが、友人として可能な限り便宜を図りたくはあるよ」

割と本音ではあるのだろうが、さりげなく免罪符のように悪魔の駒を持ち出した辺りに全面的な面倒は嫌だという本音が伺えた。

アザゼルの回答。

「んー……俺もあの予想外な発言と行動を捨てるのは勿体無いと思う。ただ、うちの陣営に入れると異様に疲れそうな気が……」


「「「…………」」」


しばしの沈黙の後。

「余所に取られないように三勢力で囲むか」
「ですね。我らの戦力が集まる中心地にいるのが最もリスクが低い」
「ふふふ……三大勢力の代表に足踏みされる人間とは、凄いね」

箒、三大勢力のど真ん中に中立状態で閉じ込められる。

「俺の意見は………いや、やめとくか。大人しく三角形の中心に残るのが俺に益がありそうだ」
「この状況下で堂々と勢力を利用するって言いきってるアナタって本当に何なの?」
「何って言われても、ぶっちゃけ俺なんかに言いくるめられるお前らが悪い」
「言ったわね!?いつか絶対言い負かしてやるんだから!!」

なんやかんやで何度箒に打ち負かされても友達ポジを保つリアスが一番器が大きかったようだ。
  
 

 
後書き
ヴァーリがどうなるのかって話があったんですけど、なんか普通に仲良くなりそうなイメージしかないですね。

「俺のライバルがおっぱい星人ってお前……乳龍帝ってお前……」
「まぁまぁ。エロってのは要するに人間の三大欲求の一つだ。元々生物種の行動原理としては強いものがある。いわばお前らの戦いは理性と本能のバトルって訳だ」
「な、なるほど……確かにそう考えれば」
「まぁ生物が好戦的になるのは普通繁殖期とかでメスに群がるオスを追い払うためだが。戦いも性に結びつくのを考えるとそんなに理性でもないか……」
「う、うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!?(精神崩壊寸前)」
『ヴァーリィィィィィィィィィ!!?』

………あれ? 
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