Sword and magic of fantasy
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First episode~Come across~
「すいませーん、此処に住んでいる方でしょうか?」
剣は青年に話しかけられた。
先ほど倒した亀で鍋を作り、食べていたところ、
ローブを身に纏った長髪の男に、
この『危険区域』に最も近い鍛冶屋に自分より年下と思われる青年が入ってきたことに、
剣は動揺を隠せなかった。
裏口を振り返り立ち上がって一応警戒をして質問に答えた。
「はい、まぁそうっすけど、親父の知り合いかなんかですか?」
青年はフードを退けると、アホ毛が「ヒョコン」と出て、その端正な顔立ちを綻ばして、青年は言った。
「お名前を聞かせてもらっても?あ、僕はリュウと言います。
リュウ・ドラグニカというものです」
(質問を質問でかえすな…)
剣はそんなことを思いながら、
このリュウという青年に敵意が無いことが判断し、警戒を解いて、
首に手を当ててため息を付き、自己紹介を返す。
「魔雅月剣っす。
剣と呼んでくれっす、…で?
何のようですか?ここは宅配圏外区域ですが…」
剣は立ち上がり、手でジェスチャーして、家のなかへ入るように催促した。
リュウは微笑んで家のなかへ入った。
剣が椅子に座れと言うように視線を向けて、何か飲み物を出そうとする。
リュウは椅子に座り、「気遣いは要らない」と言ったので剣は、リュウと反対側の椅子に座る。
(…ここまで一人で来たというのに、外傷はおろか、服に汚れ一つ付けてない。
それに意図してるのか、してないのか、
ここで俺がいきなり不意討ちしても完璧に回避出来る姿勢をとっている…
…プロハンター…か?)
「…?」
剣が鋭い眼光で値踏みしているとリュウは疑問符を浮かべて剣の反応を見た。
「…っと、すいませんね、俺、目が悪いもので、それで?何故ここに?」
「いやぁ、道に迷ってしまってね、帰り道知らないかい?」
照れくさそうに言うリュウに剣は「知らない」ときっぱり答えた。
すると、リュウは「う~ん」と顎にてを当てて、
「どうしたものか…」と呟いた。
(…一応、親父の知り合いみたいだし泊まらせておくか?)
剣は長考の末、考えついた事をリュウに話した。
「なんなら家に泊まってって下さいよ。…あ、時間だ」
剣は会話の途中で時計を見て、立ち上がり瞬発的に言った。
「なんの時間だ?」
リュウの質問に剣は身支度をしながら淡々と答えた。
「何時もこの時間帯になると鍛練に出掛けるんですよ、近くの『迷宮』にね」
「ほう?」
リュウの眼光が鋭くなった。
「失礼でなければ同行願いたい。
…なんというか…他人の家で自分一人は心細いだろう?」
「構わない、足手まといでなければな…と言っても、
この国境付近の森の最奥まで服に汚れ一つ付けずに来た奴に足手まといはないか」
剣は皮肉を込めて小さく笑う。
裏手においた巨駆の大剣を肩に乗せて、迷宮まで歩いていく、
剣をリュウは裏口の扉を閉めて足早に着いていった。
――――――――――――――――――――――
「…ドラゴン?子供か?」
迷宮、『水晶迷宮』にたどり着いた二人は、下層へと下がる。
片方は、大剣を振り回し敵を一掃した。
もう片方は、細剣を舞うように華麗に操って残党を残らず撃破する。
そして最下層まで昇り詰めた二人は、目の前の小さな竜に注目した。
子竜は、酷く怯えているが、
剣は躊躇わずに大剣を降り下ろす。
『GYAAAAAAAAAA!!!!!!!』
「待て!!剣、何か来る!!」
何者かの咆哮とリュウの制止が重なる。
剣はピタッと降り下ろした剣を止めた。
ズシンズシンという巨大な足音とともに、ソイツは、姿を現した。
『竜』。
それも原種では、ない。
この『水晶迷宮』に住み着き、突然変異した迷宮の主。
『水晶竜』だ。
剣も少し戦った事がある、
しかし、何処か様子がおかしい。
…次の瞬間『水晶竜』の巨駆の身体がグラリと地面に倒れた。
…迷宮の主、『水晶竜』を踏み越えて、黒い体毛で羽を持った巨駆の狼が現れた。
その狼を見るや否や、リュウは驚愕に顔を歪めた。
「魔狼マルコシアス…!!無理だな、一旦引くぞ」
「…マルコシアス?なんだそれ?」
大きく狼から下がったリュウに対し、
剣は、場所を動かずに狼を見て、リュウに問う。
「魔狼マルコシアスは、羽を持ち蛇の尾をもつ狼だ、
ランクはSSS級…」
剣は「ふぅ」と溜め息を吐いてマルコシアスの前に立ちふさがった。
「関係ねぇ、ここにいるやつは全員敵だ。それに例外は無い」
リュウは「やれやれ」と深く溜め息をついて言った。
「はぁ、しょうがないなぁ…じゃあ僕は支援に回ろう」
マルコシアスは剣に向かい、黒い爪のある前足を降り下ろした。
剣はにやッと笑ってマルコシアスの攻撃を前方に前転して回避、
そして、マルコシアスの懐目掛けて跳躍し、巨駆の大剣を胸から顎にかけて、斬りあげた。
「俺を楽しませてくれよ…!駄狼…!」
剣の攻撃に、マルコシアスは、牙を剥き出して咆哮をだす。
「GRAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」
その咆哮は、剣の攻撃を受けて、
寧ろ、
嬉々として、笑っている様に聞こえた。
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