バロンダンス
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3部分:第三章
第三章
「そうしましょう」
「うん、安心したしね」
「だからね」
こう話してだ。そのうえでだった。
彼等はダンスに戻った。自分達の身体の中にだ。ダンスは程なく終わり観光客達の拍手を受けた。そしてそれが終わってからだ。
二人は家に帰った。そのうえでだ。我が子に言うのであった・
「絵本どうだった?」
「面白かったの?あの絵本」
「えっ、絵本読んでたの知ってたの?」
我が子はベッドの中からだ。こう両親に言葉を返したのだった。
顔は驚いている。まさかそんなことを知っているとは思わなかったからだ。
だが両親はその彼にだ。また言うのだった。
「そうだよ。少しね」
「見たから」
「見たって」
スカハトは両親の言葉を聞いてだ。また述べたのだった。
「お父さんもお母さんもお仕事だったんじゃないの?」
「それでも見ることはできるんだよ」
「そうなのよ」
「どうやってなの?」
「少しね。工夫があるのよ」
プラムは笑顔で息子に話した。
「それでなのよ」
「工夫なの」
「そう、工夫があるのよ」
こう話すのである。
「それでなのよ」
「何なのかな、それって」
「スカハトもバロンダンスをすればね」
「わかるかもね」
プラムだけでなく父親であるヤティも話すのだった。
「その時になればね」
「踊っていればね」
「何かよくわからないわ」
首を捻って言ったスカハトだった。
「そうなんだ」
「そうよ。けれど風邪は治ったのね」
「何とか峠を越したんだな」
「ねえ、明日から遊んでいいかな」
ここでこう言うスカハトだった。ヤティをそのまま幼くした様なその顔で。
「風邪が治ったんならね」
「遠くに行ったら駄目よ」
これが母の言葉だった。
「それはいいわね」
「じゃあお家のお庭で遊ぶんだね」
「治ったばかりだとね」
遠くに出てはいけないというのだ。我が子を気遣う言葉だった。
「近くで遊ばないとね」
「わかったよ。それじゃあね」
「よし、じゃあ今からな」
今度は父親が話す。自分の分身でもある我が子を見ながら。
「とびっきりの美味しい料理を作るか」
「そうね。二人でね」
「スカハトの為にな」
夫婦で笑い合っての言葉だった。
「今から作るか」
「ええ、そうしましょう」
そうした話をして、であった。
二人は我が子の為にその料理を作るのだった。我が子の回復をその目で見ることができた幸せをそのままにして。幸福の料理を作ったのである。
バロンダンス 完
2011・3・23
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