ソードアート・オンライン ~呪われた魔剣~
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神風と流星
Chapter2:龍の帰還
Data.19 A and H
「というわけで《体術》獲得クエストを受けられる場所まで案内してくれ」
翌朝。俺は早速アルゴを呼び出し、クエスト開始場所までの案内を依頼していた。
「案内するのは別にいいガ……もちろん金は取るゾ」
「分かってるよ。いくらだ?」
「そうだナー……千でいイ」
アルゴにしては良心的な値段設定だな。何か裏があるのか?
そんな俺の思考を表情から読み取ったのか、アルゴが言う。
「ただし料金以外にも条件があル。クエストを受けた結果どうなってもオイラを恨むなヨ」
「恨む?」
「色々あるんだ、このクエストにハ……」
わけが分からないが、まあいいか。出費が少なくて済むなら何でもいい。
「じゃ、頼む」
「オーケー任せロ。ところでシーちゃんはどうしたんだ?」
「ああ、シズクなら……」
と、そこまで言ったところでちょうど来た。
ノック無しでいきなりドアが開けられ、大きな紙袋を抱いたシズクが中に入ってくる。
「あれ?アルゴさん?どしたの?」
予期せぬ来客が室内にいることに驚くシズク。あ、そういやアルゴが来るってこと言い忘れてたわ。
「シーちゃんこソ……その紙袋、中身はアップルパイカ」
「ご名答!表の通りで売ってたからいっぱい買ってきたのだ!一個いる?」
「無料ならナ」
もちろん無料だよー、と言いながらシズクがアルゴにアップルパイを一つ渡す。
黄金色に輝くパイ生地と、しっとり焼けた林檎。食欲を刺激する芳醇な香りが部屋を満たす。
俺も食べたくなってきた。
「シズク、俺にも一個寄越せ」
「一個100コルね」
「俺は有料なのかよ……」
理不尽だ。男女差別反対。
「冗談冗談。はい、どうぞ」
差し出されるアップルパイ。しかしその位置は俺の手ではなく何故か口元。
「……?」
「食べさせてあげる。あーん」
「なんで?」
「昨日やってくれたから。お返し」
むしろ仕返しなんじゃなかろうか。目の前でアルゴがニヤニヤしてるしすごく恥ずかしいんだが。
「ほら、あーん」
「うぐぐぐぐ……はむっ」
美味そうなアップルパイと己の食欲には勝てず、俺はしぶしぶシズクの持つアップルパイを頬張った。美味い。
「さて、それじゃあ腹ごしらえもしたところでそろそろ出発しようカ」
「それもそうだな」
アップルパイですっかり腹を満たした俺とアルゴは出発の準備をする。もっともアルゴは来客なのでほぼやることはないようだったが。
「ん?どこかに出かけるの?」
「ああ。ちょっとクエスト受けに」
「あたしも行く!」
勢いよく手を挙げて主張するシズク。まあ、連れて行って何かデメリットがあるわけでもないし、別にいいか。
こうして俺とシズクとアルゴの三人は《体術》スキル獲得クエストを受けるために《ウルバス》の街を出発したのだった。
「あ、ルリくん!あたしあのホットドック食べたい!」
「さっきアップルパイ十数個食ってたのにまだ食うのかよ……」
結局、俺たちはホットドックを買って食った。お味はと言うと……早々にこの街に帰ってきてもう1サイズ大きいのを頼もうと思うくらいには美味かったとだけ言っておこう。
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