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『曹徳の奮闘記』改訂版

作者:零戦
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第六十五話






「王双様、少しお話しがあります」

「ん? どうした仲達?」

 街を凪と一緒に警ら中に仲達がやってきた。

「今は凪と警ら中なんだが………」

「急を要するお話しです」

「………凪、少し休憩するか」

「分かりました」

 普段の凪なら怒るが、仲達の真剣な表情に頷いた。





「此処なら問題は無い」

 俺達はメシ屋にいた。

 客からは見えない死角のところで話を聞く。

「………実は今朝早く、大砲の取り扱い倉庫で警備中の兵士が何者かに襲われて負傷しました。幸いにも兵士は命の別状はありません」

 待てや。俺はそんな報告は来てないぞ。

「申し訳ありません。場所が場所なので秘密に動こうとしてましたので」

「それなら仕方ないけど、大砲に何かされたか?」

「いえ、大砲の倉庫は鍵がしてあるので壊されたり、扉が破壊されたるような事はありませんでした。負傷した兵士が咄嗟に銅鑼を鳴らしたので」

 成る程な。

「………敵の間者の可能性は高いな」

「はい。予想としているのは劉備の間者です」

「根拠はあるのか?」

 凪が仲達に聞く。

「今、孫策軍と対峙していますが、孫策軍の偵察は甘寧か周泰です。ですが、周泰は既に此方が捕虜にしていますからそう簡単には動かないと思います。曹操軍はまだ冀州の整備に手一杯のようです」

 どんだけ荒れ果ていたんだ冀州は?

「それで……荊州の劉備だと?」

「はい」

 俺の言葉に仲達は頷く。

「………分かった。美羽にも相談して警戒態勢に入る。ありがとな仲達」

「いえ、私はすべき事をしたまでです」

 仲達は苦笑した。

「はい、すみません青椒肉絲定食お待たせしました」

 その時、店員が来た………ん?

 何か何処かで聞いた声だな。

「「………………」」

 思わず店員を見つめる。

 店員も俺を見つめる………てかこの女性店員って………。

「………何で此処にいるんだ顔良?」

 何故か、冀州を曹操軍に占領されてから行方不明のはずである顔良がメシ屋の店員としていた。

「あ、アハハハ。じ、実は今、姫と文ちゃんと放浪の旅でして………」

 顔良は冷や汗をかきながら俺に答える。

「んでその二人は?」

「皿洗いをしています」

 顔良が厨房の奥に指を指す。

「腹減ったぁ~」

「何で名門である私が皿洗いをしなくてはならないんですのッ!!」

 二人はブツブツ言いながら皿洗いをしていた。

「………成る程な」

 何か知らんが納得した。

 ん? ククク………いい事思い付いた(笑)

「顔良」

「はい?」

「ウチの軍に入らないか?」







―――夜中―――

「それで敵の間者を捕らえるのが入隊試験ですか?」

「そゆことだな」

 顔良の質問に俺は答える。

「まぁメシにありつけるならアタイもいいけどな」

 文醜は大剣を振り回しながら答える。

「何で私が間者ごときを捕らえるなくてはならないんですのッ!!」

 袁紹が喚いている。

「じゃあ今度は一人旅でもすれば?」

「ぐ………」

 俺の言葉に袁紹は言葉を詰まらせる。

「今回は星、クロエ、警務隊の三人もいる。何とかして間者は捕まえないとな」

 おのれ糞北郷め。

 孫策軍の事が片付いたら荊州にでも侵攻したろうかな。

「交代は二刻だ。最初は顔良達三人と俺が警備するからな」

「分かりました」

 凪が頷く。

「星、暇だからと言って飲むなよ?」

「それくらい分かっておりますぞ」

「ならいいけどな。ほんじゃぁ警備開始だ」

 全く、此方は孫策軍で頭が一杯やのに糞北郷はめんどくさい事を押し付けてくれるな。





「暇だぜアニキ」

「まだ交代まで一刻あるんだから頑張れ」

「だってよぅ~」

 文醜がブーたれる。

 ………。

「おい」

「はい、分かっています」

「………五つ……八つだな」

 文醜は気配を読み取る。

「え? 何かいますの?」

 袁紹は何も分かっていなかった。






 
 

 
後書き
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