悪の場所
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2部分:第二章
第二章
「何が最も悪の場所なのか」
「アフロディーテ神、それは一体」
「何処だというのですか?」
「それでは」
「手です」
アフロディーテはだ。それだというのであった。
「手です。悪事を成すその手です」
「手ですか」
「そういえば人を殺める剣や斧も手で持ちます」
「人を襲うのも手」
「ものを盗むのも手」
神々も考えていく。その手のことをだ。
「では。手こそが最も悪い」
「そうであると」
「そうなりますか」
「いえ、それはどうでしょうか」
「違うのではないでしょうか」
他の神々が納得しかけたところでだ。アポロンとヘルメスが異議を呈した。彼等は主張するものは違うがだ。アフロディーテと意見が違うということでは一致していた。
それでだ。二柱の神々はここでまた話すのだった。
「動くのも考えるのもまず見てからです」
「悪を考える。全てはこれからです」
彼等の主張は変わらないのだった。それぞれ。
「ですから。やはり目です」
「頭です」
「見ることから全てがはじまるのですから」
「考えることなくして何がありますか」
「ですから。行動があって成り立つものです」
その二人に対してもだ。アフロディーテは言うのだった。
どの神々も口調は穏やかだ。しかしなのだった。
互いに譲らずにだ。主張し合うのだった。
「ですから。手です」
「だから手だと」
「それが大事だと」
「そう仰るのですか」
「どうしてもですね」
「はい、私はこの考えを変えるつもりはありません」
やはり揺るがない。アフロディーテもだ。
それで言い合いながらだ。引かない。三人が三人でだ。お互いに言い合う。それが続いてであった。
話し合いは何時果てるともなく続いた。しかしであった。
茶色の髪に同じ色の髭に覆われた顔の初老の神がだ。ここでこう言うのであった。
「まあ待て」
「むっ、ゼウス神」
「といいますと」
「おわかりになられたのですか?」
神々はそのゼウスに一斉に顔を向けた。オリンポスに集う神々の主神である彼の言葉はだ。どの神のそれよりも重いからである。
神々はそのゼウスに注目する。それを受ける形でだ。ゼウスは再びゆっくりと口を開いてだ。神々に対してこう告げたのであった。
「三柱の神々の言うことはだ」
「はい、それはですね」
「どれが一番悪いか」
「そしてどの神の主張が正しいか」
「それですね」
神々はそれぞれの口で話す。
「それの判定ですね」
「ではどれが悪いか」
「どうなるのでしょうか」
そしてだ。三柱の神々もここでそれぞれ主張する。
「やはり目です」
「いえ、頭です」
「手以外ありません」
ここでも引かない彼等だった。そこには断固としたものすらある。
「そうですね。目こそが」
「頭で考えてこそですから」
「動きが成立してこそですから」
「全て正しい」
ゼウスは彼等のその主張を否定しなかった。三柱共だ。
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