剣聖龍使いの神皇帝
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第2巻
新たな住人×零家の大豪邸×夜の闇に現れた主従
「お帰りなさいなのです」
「やっと帰ってきましたか」
ソファで俺と沙紀が座っており、隣に座りながらマヤが天使の笑顔で迎える。校長のとこに行き、抱き締めて頬ずりをして愛らしい笑顔だったのか、さっきまであった怒りは癒しの効果でどっかにいったのだった。
「なぜ灰村君がここにいるのかしら?」
「まーやの話し相手をしてくれたですし、久々に楽しい気分になったのです。それと仲良しさんになれたのです」
「申し訳ない、校長先生。いると思い入室したら、まーやがいたので戻ってくるまで話をしていた。まーやのお陰で欲しい情報は手に入りましたよ」
無邪気に喜ぶマヤを見てから、校長はにんまりとしてから俺に質問をした。答えは簡単で、聞きたかった事がマヤのお陰で手に入ったのと話し相手として楽しかったとの事で校長は別の意味でよかったと思った。
「さっきの会話を聞かせてもらってましたけど、どうやら理事長は俺や静乃を使って何か企んでいる様子ですね」
そう言ったら何故それを?との事だったんで、学園内や外には大量の小型無人偵察機をばら撒いていて、一般人や《救世主》にも気付かれないぐらいの性能を持っている事。それは蒼い翼とCBが合同でやっている事で、もし犯罪が起きたとしてもすぐに解決するようになったのもこれのお陰だからだ。それと、もしかしてまーやを俺の家に住ませるつもりですか?と質問したら正しくそうだった。
「理事長の思惑通りに行かせないように、私の生徒を守るようにしてきたけど灰村君には護衛者も付いているからどうなのかしら?そもそも灰村君のプロフィールもいくつか謎があるからね、住んでいる場所や家族構成とか色々」
「俺の家はいくつかセキュリティが厳しいんですよ。まーやが良ければ俺の家に住む事を許可しますよ?」
「ぜひそうさせてもらいたいわね。まーやはどう思う?『まーやは諸葉の事、もっと知りたいのです』じゃあ決まりと言う事で、まーやをよろしくね。灰村君」
そう言う事で、沙紀に端末を出して顔写真と名前とかのデータを打ち込んだ。正確な情報がないと、監視カメラからは侵入者だと思われてしまうのでと言った。ウチは送迎車でいつも行き来しているが、空間切断で一気に家まで行ける。分かりやすく言うと、転移魔法の魔法陣を潜ったら到着している。そんで荷物はどうするんだ?と聞いたら最低限のは持たせるからと言ってから、俺の家に行く事になった。ちなみに今日の特別特訓はパスという事なので、さっさと学園から離れる。俺の隣にはまーやと一歩後ろに沙紀がいる。
「いつもここに送迎車を停めているんだ。運転は沙紀がやっている」
「高級車に見えるのです」
「こいつは一応高級車だ。さてと俺とまーやは後部座席にな」
「まーやさんのデータは関所に送信しましたので、いつでも行けますよ」
そう言った後に送迎車は発進したが、次の角を曲がった瞬間に空間切断で亜鐘学園付近から東京都心へと来たのだった。これに関しては流石のまーやでも驚いていたけど、関所に到着した後に通行出来たのでこれからはこのまま通れるようになった。そんでしばらく庭を走っていると、家の玄関が見えてきた。俺の家は大豪邸で、例え発信器を付けたとしても探索不可能になっていて、特殊な電波を発している。
「到着したぞ」
「まるで大金持ちのお家なのです~」
「大金持ちの家なんだけどな」
「私達の家は、物凄く広いですけどその内慣れますよ」
そう言って降りた後に、玄関前にいたメイドに車を任してから俺と沙紀にまーやが玄関のドアを開けた。
『お帰りなさいませご主人様。そしてようこそいらっしゃいました、マヤ様』
この家にいるメイド達からのお出迎えによって、まーやは本物のメイドを見たのか俺の後ろから挨拶をした。そして沙紀とはここでしばしの別れとなり、代わりに桜花が案内をした。自室に行くと、家具があったりドアが五つあったのが不思議だったまーや。
「なぜドアが五つもあるのです?」
「それは見てから分かるさ。・・・・皆出てこい!」
魔法陣で召喚したヒト型のクロウ、グレンデル、ダハーカ、ラードゥン、ティアと小型ドラゴンのドライグとサマエルだった。そんで改めて簡単な挨拶をしてから、まーやも簡単な自己紹介をした。で、ここは俺達の部屋でもあるがベッドが足りない事に気付いたので、俺は隣にあるドアを開けたのだった。
「基本的に俺達の部屋はここだが、俺専用の部屋があってな。ここでパソコンでの作業やベッドに仕事とかをしているのさ。まーやは今日から俺専用の部屋で寝てもいいぞ」
「なるほどなのです。ドラゴン達にも寝る場所やそれぞれの部屋となっていて、一番奥が主の部屋という事ですか~」
「そういう事だ。まあ今まで添い寝して来た者もいるけど、流石にまーやがここで寝るから早々ないと思うけどな」
「沙紀さんもですか?」
沙紀やここで住んでいるメイド達が代わりばんこで添い寝をしたりしているんだと言うと、正しくハーレムなのですという感想だった。あとここは零家だという事は知らせない方が後々面倒になるけど、伝えたら正体を知れてしまうのでな。神皇帝というのは三人目となっていて、零達也と織斑一真と俺となっているが、零達也というのはビジネスネームとして使っているのでバレてない。知っているのは、この家で住んでいるメイド達と蒼い翼本社社員とCBの者達だ。夕食後は、この家を探検したいと言い出したので桜花、結衣、沙紀の三人が案内役をする事となった。余りにも広いので、行きたい場所を念じればショートワープのような転移魔法が出来る仕組みだ。
『そういえば今日の特別特訓には来なかったけど、もしかしてサボったの?』
「違うよ。ちょっと蒼い翼本社にいる零達也に呼ばれたんでね、たまに仕事を手伝っているのさ」
『なるほどね、ところでこの電話は大丈夫なの?いくら私のケータイでも漆原家の力を使った盗聴もあると思うんだけど』
「それも心配ない、俺のケータイと静乃のスマホの間では盗聴されないような特殊な電波を発している。だから俺の家を探そうとしても不可能なのさ、そういえば今日校長
先生にくっついている子、まーやに会った」
『流石蒼い翼ね。その子の事が好みなのかしら?』
「静乃の事も好きだけど、ああいう天使スマイルを見せられたら誰でも好きになるだろうに。静乃は静乃で綺麗所がある」
と毎日のようにかかってくる電話だったが、もう慣れてしまったので平気でかける。風呂に入っていようが、食事中だったとしても恋仲の一人との電話だとね。その後色々話をしたが、最後に漆原家の理事長には気を付けろという忠告を言った。兄がどうかしたの?と質問が来たが今は分からなくとも、俺の勘が当たるんだと言ってそれは嫌な方だと。
『その子は早すぎる《救世主》覚醒となったから、不幸な事なのは知ってるわよね?学校にも通えないから、友達も作れないし付き合いもない』
「まーやの事なら心配はないぞ。今俺の家にいるから『その話は知らないわ・・・・』今日から俺の家に住む事になったんだ。寮には住んでないけど、一応校長が理事長の企みから生徒を守ると言ったのでな。ホントはサツキや静乃も恋仲の一人として俺の家に住ませたい気持ちで一杯だが、自宅は色々と制約があってな」
『まあいいわよ。あなたの事を守る事ならば、それと何か悩みとかあればまた電話してもいいから。王を助けるのが、私の喜びだもの』
「ははは、俺はお前とは伴侶だったけど、今は学校に通っているから余り夫らしい行動は取れないけどな。じゃあまた明日な」
そう言ってから切ったが、毎夜電話があるのは静乃ぐらいで、サツキは余りしてこない。女子寮に住んでいるから、余り困り事はないけど。また何かしらトラブルとか悩みとかなら、いつでも電話して来いと言ってるからな。あとは安眠守護者としてまーやが来た事になっているとここに来る前に知っていたけど、校則も寮則も自由に変え放題だと言うけど。ここなら別にそうしなくとも家の主である俺が許可出せば住めるようになるし、まーやは学校に行けないから友達が作れないのは知っていた。亜鐘学園の生徒達も皆、強くなるために忙しいから相手している暇がない。俺はそんなマヤに優しく接しているから、校長先生から目を付けて職権濫用しようとしてた。で、寝る時間となったが風呂はもちろん桜花達と入ってから、俺ら男組が入った。
「ここにいる人達は皆優しいのです」
「気にいってもらえてよかったよ。それに俺の添い寝出来る者は、今回からまーやだけどたまには桜花達やティアと一緒に寝るのを許してほしい」
「まーやは他の恋仲さん同士なので問題ないですよ。あ、そうだ。一応これだけはベッド付近の机に置かせて欲しいのです」
そう言ったらポシェットから取り出した物を、ベッド付近の机に置いた。何やら高価な物っぽいけど、何十面体かは分からないが、複雑にカットされている。水晶で出来た物で、魔力が微かに溢れているような気がした。俺は気にしないで、そのまま寝た。あれは育ててる途中の石というより水晶だけど、あれで結界でも作れるのかと思った。あとは俺の腹に何かしらの重みはいつもの事だと思っていたが、深夜の羽田飛行場に英国からのプライベートジェット機が着陸してきた。管制塔は、すぐに蒼い翼へと報告。タラップから降りてきたのはたった二人。前を行く長身の白人男性。
『たんた、たーん、たーん、たーん、たーん、たったーっ♪』
鼻歌交りのリズム良い足取りで日本の地へと踏む。
『たーたたーーーた、たったったったーたー♪』
星明かりを静かに帯びる銀色の髪。俳優然とした伊達男だが、口ずさむ鼻歌は何と和製ゲームのBGM。それが男の纏う雰囲気をどことなく物にさせている。
『いやあ、雲一つない星空だねえ。雨ばかりのロンドンとは違う!』
訛りのない、音楽的な響きであるクィーンズ・イングリッシュ。気さくな口調の中にも育ちの良さが全面に出ている感じで、男は夜空を見上げて異国の空気を吸っていた。
『本来はツユと言って日本も雨季だそうです。今年は異常気象だとか』
後をついて降りてきた女が恭しくも、伊達男の言葉に注釈を一言加えたのだ。容姿はどこからも美人と言われると思うが、服装がメイドだった。しかも零家にいるようなメイドではなく肌の露出度の少ないので、正統派スタイルのエプロンドレスを着た美女。物静かで知的そうな大人の感じが出ていたが、伊達男を主だと思って慕っているのだろう。
『何でもいいさ!折角来たんだ、早速トーキョーの夜を遊び歩こうじゃないか』
『ウルシバラに連絡はとらなくて良いのですか、サー?』
楚々と侍る美女の問いかけに、伊達男は鷹揚に頷く。『サー』というのは、即ちそれはナイトの称号を女王陛下より賜った、この男に対する敬称。サー・エドワード・ランパード。白騎士機関のイギリス本部長であるその人物がざっくばらんに答えた。
『連絡を取ればすぐに来いってうるさいだろう?しばらく好きにやらせてもらうさ』
『でしたら都内のホテルをご用意致しましょうか?』
『いやいや、トーキョーは今夜だけで充分。明日からはちゃんとお仕事しよう』
エドワードは立ち止まり、忠実な部下を振り返る。このまま連絡をすると、せっかく来たのだから観光ぐらいさせてほしいのだろう。ウルシバラとは恐らく亜鐘学園理事長を指している。内緒のままとなり、エドワードが本気出したらバレる可能性があるらしい。
「六頭領」は核兵器みたいなもんだと言うが、それはこちらの台詞だと言いたいね。この国で暴れると政治干渉となりかねるから、国際問題だけは避けたいらしいが、この会話全てが蒼い翼が聞いているという事も知らずにである。
『なので君に威力偵察を命じる。いいね、アンジェラ?』
物騒な台詞を簡単なお使いのように命じるエドワードに対して、彼女は一言だけだった。
『畏りました(Yes. my lord)』
アンジェラと呼ばれた美女は即答してから、口元が歪んでいた。物静かで知的そうな美貌に亀裂が入り、その下に隠していたモノが剥き出しになりそうな危険な笑み。部下の本性を垣間見て、主であるエドワードは満足そうに頷く。
『じゃあ今夜は英気を養おう!パーッと騒ぐぞ』
『私はしっとりと飲みたいです』
美しい部下の腰を抱いて歩き出して、アンジェラは逞しい主の体に身を寄せる。そうして奇妙な主従は、日本の夜という闇に溶けて行ったが全ての会話を聞いていた小型無人偵察機は、音声をデータとして月中基地支部へと送信されて、ヴェーダによるイギリス英語を日本語に翻訳してから総司令官である零家の主、零達也=織斑一真で今は灰村諸葉としての役目を果たしている俺の元に送られたのだった。
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