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戦国異伝

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第百九十九話 川中島での対峙その七

「だからよいな」
「はい、今宵は」
「ゆっくりと休み、ですな」
「そしてそのうえで」
「明日の戦に」
「腹が減っては戦が出来ぬしじゃ」
 それに、というのだ。
「疲れも溜めてはならぬ」
「戦に勝つには」
「必ずですな」
「だからよく休むのじゃ」
 明日の戦の用意をし美味い飯をたらふく食った後は、というのだ。
「そして日の出前に飯を食いな」
「戦ですな」
「上杉との」
「そうじゃ、明日も勝つ」
 上杉との戦、それにもというのだ。
「では皆の者、これよりじゃ」
「はい、殿のお言葉通り」
「戦の用意をしましょうぞ」
 家臣達も応える、織田家はすぐに戦の用意に入りその後で飯を食い休むのだった。信長が命じた通りに。
 謙信も自軍に戻り明日のことを話した、そしてだった。
 本陣において酒を飲みつつだ、家臣達に言った。
「明日の陣はです」
「はい、あれですな」
「あの陣ですな」
「車懸かりの陣です」
 まさにだ、その陣でというのだ。
「日の出と共に織田の陣に向かいます」
「あの必殺の陣で、ですな」
「織田を倒すのですな」
「わたくしがこの陣を使う相手は限られています」
 天下に人多しといえども、というのだ。
「甲斐の虎、そして」
「尾張の蛟龍」
「即ち織田信長ですな」
「北条氏康や毛利元就にも使うつもりでした」
 決戦の時にはというのだ。
「しかしこれまで使った相手、今使う相手はです」
「武田信玄、そして織田信長」
「二人だけですな」
「左様です」
 まさにというのだ。
「その陣を敷き」
「織田と戦い」
「そのうえで」
「天下を決めます」
 こう言うのだった。
「必ず」
「それでは我等も」
「いざ」
「殿と共に」
 家臣達も言う、そしてだった。
 謙信もだ、こう言うのだった。
「では兵達にもです」
「はい、美味いものをですな」
「たらふく食わせるのですね」
「そうしなさい、そしてわたくしは」
 謙信自身はというと。
 今の酒を飲み干したところでだ、こう言った。
「今宵はこれまで」
「酒をですか」
「止められますか」
「過ぎては明日の戦に及びます」
 酒の酔いがというのだ。
「ですから酒はこれまで」
「今宵はですか」
「そうしてですか」
「明日飲みます」
 酒、それをというのだ。
「そうします」
「殿、まだ一杯ですが」
「今宵はそれまでなのですか」
「そうです、明日は戦の後で酔います」
 それ故にというのだ。
「ですから」
「これで止められ」
「そのうえで」
「明日は尾張の蛟龍と宴です」
「織田信長は酒は飲みませぬな」 
 ここでこう言ったのは直江だ。 
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