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美しき異形達

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第三十九話 古都での死闘その十三

「血液にも異常はありませんし」
「そっちにもか」
「皮膚にも。また眼球にも」
「全然ないんだな」
「本当に毒を受けられたのですか?」
 こうも言った医師だった。
「とてもそうは」
「思えないんだな」
「はい、ですからご安心下さい」
 医師は太鼓判さえ押した。
「このことは」
「それならいいけれどな」
「何でしたらまた来られて下さい」
 医師は薊に特に心配することないといった顔でこうも言った。
「血清は揃ってますので」
「へえ、この病院血清もあるんだ」
「何かと充実している病院でして」
「大きいしな」
 病院は七階建てでしかも敷地面積もかなりのものだ。白い清潔感溢れる内装は病院に相応しいものだ。
「だから血清もか」
「奈良は山が多いですから」
「ああ、蛇だな」
「それに蜂です」
「スズメバチとかか」
「噛まれたり刺されたりする人も多いので」
 それで、というのだ。
「そうしたものも揃っています」
「成程な」
「ですから何かあれば」
 蛇に噛まれたり蜂に刺されたりすればというのだ。
「何時でもいらして下さい」
「わかったよ、構えれたら大変だからな」
「死にます」
 その言葉通りに、というのだ。
「冗談ではなく」
「マムシとかか」
「ヤマカガシにも毒があります」
「あっ、そうなんだな」
「そうです、ヤマカガシに噛まれて死んだ人もいます」
「へえ、そうなのか」
「ですか蛇は本当に気をつけて下さい」
 医師は薊にその蛇のことを強く話した。
「間違ってもこちらから悪戯などしてはいけません」
「そういうことやるから噛まれてか」
「大変なことになります」
「こっちからしないとか、逆に言うと」
「はい、蛇達も何もしてこないので」
「そうなんだな」
「確かに知らないうちに刺激してしまうことはあります」
 茂みの中で不意に踏んだりしてだ、こうしたことはままにしてある。
「しかし蛇は本来大人しい臆病な動物でして」
「蝮とかでもか」
「沖縄のハブもです」
「別に特に怖がる必要はないんだな」
「毒のことは注意しなくてはいけませんが」
 それでもというのだ。
「特にです」
「変に意識せずにか」
「刺激しなければ噛まれません」
「そうなんだな」
「とにかく。貴女の毒はです」
「別に何ともないんだな」
「少なくともお身体には残っていません」
 このことは全く問題ないというのだ。
「ですから」
「ああ、安心してか」
「はい、観光を続けて下さい」
 医師は落ち着いた笑顔で薊に言った、そしてだった。
 薊は皆のところに戻ってだ、こう言った。
「何ともないってさ」
「毒で死ぬとかは」
「ああ、残ってないってさ」 
 その毒が、というのだ。
「全然な」
「そう、よかったわ」
 裕香は薊のその言葉を聞いて笑顔になって応えた。
「死なないのね、薊ちゃん」
「死ぬって縁起じゃないな」
「だって毒なのよ」
 その毒の怖さについてだ、裕香もこの動物を例えに出した。 
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