戦国異伝
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第百九十九話 川中島での対峙その四
「別の戦をする」
「ではこの度は」
「どうされるのでしょうか」
家臣達は信長にさらに問うた。
「ここは一体」
「どの様にしますか」
「何、案ずることははない」
こう言う信長だった。
「鉄砲も長篠とは別の戦い方がある」
「では」
「うむ、鉄砲は駆けては使えぬが」
それでもというのだ。
「この度も使う」
「では、ですな」
「この戦でも」
「戦の仕方はある」
それこそ幾らでもというのだ。
「そのうえで上杉に勝つ」
「ではその戦の仕方は」
「一体どういったものでしょうか」
「それじゃがな」
ここでだった、信長はその戦のやり方を一同に話した。その話を聞いてまずは元親が笑ってそのうえで言った。
「それはまた面白いですな」
「面白いと思うな」
「殿らしい戦いぶりですな」
「上杉謙信もまた一筋縄ではいかぬ」
容易に勝てない相手だというのだ。
「だからじゃ」
「そうして戦うのですな」
「車懸かりは厄介じゃ、しかしじゃ」
例えだ、車懸かりが幾ら強かろうとも、というのだ。
「破れぬものではない」
それで、ですな」
「今回も破る」
そうするというのだ。
「上杉もな」
「そのやり方で」
「そうじゃ、ではよいな」
「はい、では」
元親は確かな笑みで応えた。
「それがし達もまた」
「先陣の間ご苦労じゃった」
「次は先陣もなく、ですな」
「それぞれの陣で戦うのじゃ」
こう言うのだった。
「わかったな」
「さすれば」
「では皆の者もよいな」
他の家臣達にもこう言った。
「この度の戦のことは」
「はい、さすれば」
「その様にして」
「戦いそのうえで」
「勝ちましょうぞ」
「無敵の者なぞおらぬ」
信長は確かな声で言った。
「無敵の軍もな」
「決して、ですな」
「そうした者は」
「人は人じゃ」
それに過ぎないというのだ。
「だからじゃ」
「それで、ですな」
「上杉にも勝てますな」
「そういうことじゃ」
こう言うのだった。
「だからよいな」
「はい、その様にして」
「勝ちましょうぞ」
「上杉との戦が決まる、そしてじゃが」
ここで信長は林に顔を向けて、だ。彼に言った。
「新五郎、爺に話はしておるか」
「北条攻めのことですな」
「そうじゃ、その話は進んでおるな」
「はい」
林は信長の問いに微笑んで答えた。
ページ上へ戻る