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美しき異形達

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第三十九話 古都での死闘その十一

「毒が効かなかったのかね」
「効いている筈ですが」
「だよな、やっぱり」
「それで何故」
「あたしは生きているんだろうな」
「そのことがわかりません」
 怪人にしてもだ、既に死相が出ているがそれえもだった。
 そのことを謎に思いだ、薊に向き直って言うのだ。
「私にしても」
「勝ったことは勝ったけれどな」
「私は嘘を言っていませんよ」
「ああ、あんたはそんな奴じゃない」
 薊もそのことは保障した、拳を交え命のやり取りをする中でそのことがわかったのだ。
「絶対にな」
「そうです、巨象すら一瞬で倒せるというのに」
「じゃああたしは象より強いのかよ」
「そうかも知れません」
「何なんだよ、それって」
「ただそう思っただけです」
 こう話してだ、そして。
 怪人は己の身体が灰になる中でだ、薊に対して言った。
「貴女は尋常な方ではありませんね」
「まあ力も持ってるからな」
「そのこととは別にです」
「象より強いってのかよ」
「はい、明らかに」
「気になる言葉だな」
 薊は実際に怪人の言葉に眉を顰めさせて返した。
「あたしが何者かってな」
「それは当然ですね」
「力のことといい毒が効かなかったことといい」
「そのどちらもですね」
「ああ、まあとにかく今はな」
「闘いは終わりました」
 薊の勝利で、というのだ。
「では敗者は去ることにしましょう」
「灰になってか」
「実際にそうなってきていますので」
 だからだとだ、怪人は薊に応えてだった。
 完全に灰となり風に吹かれて消えた、そして。
 後には薊だけが残った、その彼女の横でも。
 菖蒲は己の相手だった怪人、灰になろうとしている彼に対してこう言った。
「これでね」
「うん、お別れだね」
「貴方の動きは確かに凄かったけれど」
「それに慢心したかな」
「そうなったわ」 
 実際に、とだ。菖蒲は怪人に告げた。
「だから私は勝ったのよ」
「そうだね」
「そのことを認めるのね」
「認めないと仕方ないじゃない」
 それで、と返す怪人だった。
「僕は負けたんだから」
「だからなのね」
「負けは負けだよ」
 それ以外の何でもないといった口調での言葉だった。
「そして死のうとしているんだから」
「認めるのね」
「考えたね、分身をしても」
「その足を止めれば」 
 分身の動きをするその足をだ。
「私は勝てるわ」
「そういうことだね」
「相手の切り札を封じる」
 菖蒲はこの戦術を冷徹なまでに鋭い声で怪人に告げた。
「それが闘い方ね」
「それもかなり高度なね」
「高度かどうかは知らないけれど」
 それでもとだ、菖蒲は怪人に返した。
「私はそれをしただけよ」
「それで僕の足を封じて」
「その分身もね」
「僕が分身に神経を集中させていることを逆に衝いたんだね」
「そういうことよ、わかったわね」
「技より頭」
 怪人は菖蒲の話をここまで聞いて感嘆した様にして言った。 
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