とある3人のデート・ア・ライブ
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第六章 颶風の巫女
第9話 激突する力〜空中戦〜
前書き
どうも、ラーフィです。
テストから解放されていやっほー!の状態ですが、一話の文字数が多すぎてなかなか次の話に進めなかったりしています(笑)
さてさて、本編の話をしますと、題名通り空中戦であります。戦闘描写が難しくて分かりにくかったらゴメンなさい。
ではでは〜
上空1000mにて。
神無月「一時方向に防性随意領域範囲指定、座標一三二-五〇-三九。範囲二五五・二四六」
「り、了解!」
神無月の指令に素早くコンソールを叩く。
すると、〈フラクシナス〉の周囲に張り巡らされていた随意領域が変質し、指定した方向と範囲に凝縮、見えない壁を構築した。
次の瞬間、ちょうどその位置に敵艦からの魔力砲が炸裂する。モニタが凄まじい光に包まれるも、艦橋は僅かに揺れただけだった。
『……っ』
〈フラクシナス〉のクルー達が一斉に息を飲む。
防性随意領域は、その名の通り、攻撃を防ぐことを目的にして張られる特化属性の一つである。
基本的に範囲を広く取ればとるほど随意領域の強度は落ち、内部にある対象の表面ギリギリに纏わせるように凝縮すればその強度は格段に増す。
だが、今神無月がしたのはそのもう一段上。特定の位置にのみ、壁のように随意領域を凝縮する方法だった。
無論、そうすれば随意領域の強度はかなり増す。それと同時にその他の部位が完全に無防備状態になってしまう。
それは、極めて危険な諸刃の剣でもあった。
神無月「次、同方向に防性随意領域範囲指定、範囲五〇・六九」
「は、はい!」
そして随意領域が指定位置に展開される。先ほどよりも小範囲。
そして先ほどよりも強力な魔力砲が放たれた。
だが、
その小さな範囲に、魔力砲が激突した。
神無月は的確に、全ての攻撃を防いでいた。
それも、12回も。
確かに攻撃の方向もおおよそがつく。理論上不可能ではない。
でもーーーありえない
神無月「これ以上、五河司令の美しき世界樹に傷をつけるわけにはいきません……収束魔力砲〈ミストルティン〉用意」
神無月の声が艦橋に響くと同時、クルーの皆は思考をやめて、素早くコンソールを叩き始めた。
ーーーー
ーーー
ーー
ー
〈アルバテル〉の艦長、パディントンは握り拳を艦長席に殴りつけていた。
パディ「なぜ当たらんッ!!」
当たってはいる。だが防がれている。
冷静さを失った彼には……いや、冷静だったとしても検討もつかないだろう。
理由は簡単。
それが本当に起きているなら、勝ち目がないから。
「!熱源確認!敵艦、艦隊先端の主砲に魔力を収束しています!」
パディ「く……面舵一-〇-四!生成魔力を全て防性随意領域に回せ!」
「了解!」
ーーーー
ーーー
ーー
ー
神無月「おや、〈ミストルティン〉は外れてしまいましたか……」
ふむ、と言って顎に手を当てる。
「ど、どうしますか!?」
神無月「本来なら、私たちが撃退するところですが……折角″彼ら″がいることです。ここは任せましょう。恐らく、″彼ら″の力をこんなに近くで見られるのは最初で最後かもしれませんし」
「で、でも……」
神無月「おや?″彼ら″の力を過信するのですか?」
「い、いえ……そういうわけでは」
神無月「大丈夫ですよ。そんなに心配しなくても……ね」
ーーーー
ーーー
ーー
ー
その、″彼ら″は、
一方「……なるほどなァ」
佐天「大体の強さは把握しちゃった感じですか?」
一方「あァ。そんなに強くねェ……ただ、佐天の力じゃ、ちっとキツイかもな……」
佐天「あちゃー……」
上空1000mで、インカム越しに話していた。
風がキツイので普通に話していては会話が出来ないからだ。
佐天「そろそろ反撃しましょうよ!私もう寒いです!」
一方「言われなくてもやってやるよ」
〈ラタトスク〉の艦から飛び降り、〈アルバテル〉との間に浮遊する。
そして、
一方通行は100メートル近くになるであろう天使の翼を生やした。
一方「やるぞ」
佐天「はい!」
二人が〈アルバテル〉を睨みながら頷きあい、両サイドのものを押し返すように手を広げた。
その刹那ーー
凄まじい乱気流が起こった。
一定方向に吹いていた風は荒れ狂い、右に左に上に下に前に後ろに斜め上に斜め下に……と、ありとあらゆる方向に動き出した。
それでも、敵艦自体を吹き飛ばすことは出来ない。
だが、そんなことは必要ない。
いや……極論、これで十分だった。
ーーーー
ーーー
ーー
ー
〈アルバテル〉内では、
「な、なんだ……!?」
「と、突風を観測!風力階級10!風速は……およそ28m/s!!風向きは測定できません!」
「艦には影響ありませんが、このままではこちらも反撃できません!」
艦橋に響く声を聞いて、パディントンは唇を噛み締めた。
パディ「風速28m/sだと!?そんな馬鹿なことがあるか!そんな暴風が来るなら気象庁も予測してーー」
いる、と言いかけたところでパディントンがモニタを見て気づいた。
パディ「おい!あのモニタを最大までズームしろ!」
「な、なぜ……」
パディ「いいから早くしろ!!」
「は、はい!」
パディントンの声を聞いて、モニタがズームを始めた。
小さな違和感。
そのモニタの中央に僅かに光る何か。
そして、
その正体が明らかになってきた。
『……!?』
艦橋にいた全員が息を飲んだ。
そう、モニタが極限までズームされてその正体がようやく姿を現したのだ。
それは
一人の少女と天使のような翼を携えた少年が浮遊している光景だった。
何となく、分かった。
彼らが、何者なのか。
パディ「学園都市からの……刺客か!?」
ーーーー
ーーー
ーー
ー
なぜこんな乱気流……そして暴風が起こっているのに気象庁は何一つとしてそんな情報を提供してこないのか。
でも、彼らは少し勘違いしていた。
この乱気流は、
ある一定の区間にのみ発生していることを。
その区間の中心が、
〈アルバテル〉だということも。
ーーーー
ーーー
ーー
ー
神無月「さすがですね」
乱気流の外にいる〈フラクシナス〉は一切の被害を受けていなかった。
今、モニタでは普通ではあり得ない光景が広がっている。
それは風が中へと中へと渦巻いて行き、形を円錐型へと変えていく。それは雲と平行に浮かぶ巨大な赤コーンに見えた。
神無月「う〜ん……倒しがいが無いのが少し残念ですが、同時に彼らの素晴らしき能力を拝見できるのならば、それもいい……!」
身体をクネクネさせながら自分の身体を抱く。ハッキリ言って変態にしか見えない。
クルー達がため息を一つつきながらモニタに目を通した瞬間、
一つの光があった。
ーーーー
ーーー
ーー
ー
〈アルバテル〉の僅か数十メートル上空である変化が起こっていた。
〈アルバテル〉艦橋内の人物がその変化に気づいたのは、とてもささいなことだった。
やけに明るい、と。
勘違いかもしれなかったが、少し気になったモニタを空を映している画面に変える。
そこに映るのは凄まじい乱気流ーー
ーーの、はずだった。
そして、思った。
あれは何だ?と。
「か、艦長!!」
パディ「何だ!?」
思わずパディントンに声を掛けたがどうやら今の状況にかなりイラついているらしい彼はこちらを睨めつけていた。
「こ、これを見てください!」
圧力に押されそうになりそうだったが何とか堪える。
そして艦橋の人間が一番大きなモニタへと注目する。
それは二人の少年と少女が映る光景ーーー
ーーーではなかった。
パディ「………!?」
もう、声も出なかった。口を小さく開けてポカンとしている。
誰が予想できただろうか。
存在は知っているが実際見るのは初めてだったが、何となく分かる。
あれが、
高電離気体ーーープラズマだと。
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上空に浮かぶ″それ″は〈アルバテル〉よりは小さいが、それでもかなり大きい。キリンとシカのような大きさの差はあるが、プラズマにそれは関係ない。
そのプラズマは周りの風を切るように、でもゆっくりと反時計回りに渦巻いている。
ベクトル操作。
風の向きを操り、モノにする能力。
プラズマとて、例外ではない。
一方「面倒くせェ……さっさと終わらせるかァ……」
佐天「だ、大丈夫……ですかね?」
一方「あァ?」
佐天「いや、艦が壊れないのかなぁって……」
一方「どォせ随意領域を張ってンだろ。気にすることでもねェよ」
佐天「あ、そっか」
一方「フン」
佐天が納得したと同時に右手を真上から空を切るように振り下ろす。
その刹那
プラズマが〈アルバテル〉めがけて凄まじいスピードで降下し始めた。
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直後、
耳が痛むような爆発音があった。
『……っ!!?』
〈アルバテル〉では異常を知らせるベルが艦橋の中を轟かせた。
「か、艦体上部で異常発生!」
「随意領域機能停止!その他の機能も異常が見られます!」
パディ「………!」
腕が、震え始めた。
それは怒りからか、それとも艦体が揺れているからかは区別がつかない。
「か、艦体の制御ができません!このままじゃ或美島に……!」
パディントンは目の前にある机に、拳を叩きつけた。
パディ「……くそッ!!」
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凄まじい爆発音と同時に〈アルバテル〉の上部が煙を上げて降下していくのを、〈フラクシナス〉一行は見届けていた。
『……っ!?』
また彼らも、その光景には驚かされていた。
目の前に凄まじい烈風がしていたかと思えばプラズマが生成されて、そらが敵艦、〈アルバテル〉へと突っ込むのだから。
神無月「流石ですね〜」
艦橋にいる人たちの中で、唯一といっていいほど、落ち着いてその全ての一旦を見届けていた。
時が止まったように皆が何も言えなくなった。
その時、
後ろの自動ドアが突如開かれた。
誰かが入ってきたのか?と思ったが、この状況でこの艦橋に足を踏み入れる人物と言えば、あの人たちしかいない。
一方「ちっとやりすぎたかァ?」
佐天「さすがにプラズマをぶっ放すのはどうかと思いますけど……」
一方通行と佐天涙子だ。
神無月「お疲れ様です」
一方「どォも」
神無月「あなた達なら、もう少し本気を出せたでしょう?」
何もかもを見透かしたような神無月は不敵な笑みを浮かべていた。
一方「テメェ……″どこまで俺たちのこと″を知ってやがるンだ?」
神無月「企業秘密、とでも言っておきましょうか」
一方「チッ……」
佐天「……」
その場には、なんとも言えない空気が漂っていた。
言うならば、
あの時は、まるでお葬式のように静かだった。
後書き
次は地上戦です。
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