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戦国異伝

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第百九十八話 石田三成という男その九

「六波羅を預かられたうえで」
「うむ、勘十郎は前からあの者達を怪しく思っていた」
「それで、ですな」
「それで探しておられますが」
「何処に行ったのかな」
「全くわかりませぬな」
「まことに何者じゃ」
 また言う信長だった。
「あの二人は」
「特に天海ですなあ」
 羽柴が彼の名を出す。
「齢百歳、いや百二十とか」
「人とは思えぬな」
「信じられませぬ」
「人は五十年じゃ」
 信長は羽柴に彼が愛する敦盛の一句を言ってみせた。
「五十年、しかしあの者はな」
「百二十ですからな」
「到底人とは思えぬ」
「妖人でしょうか」
「妖人のう」
「はい、あの二人も」
「だとすれば津々木にじゃ」
 その信行を惑わした彼だ。
「あと。杉谷善住坊にな」
「無明という者もですな」
「浅井家にいたというな」
「そして伊賀者の中にも」
 彼等の名を出したのは藤堂だった。
「おるまするな」
「百地三太夫とじゃな」
「石川、楯岡、音羽の三人です」
「そういえば朝廷にも」
 林通具も言う、兄と共に宮中に出入りすることも多い彼もだ。
「高田様は」
「あの公卿か」
「はい、妖しいものを感じます」
「十人か。合わせて」
「そうなるかと」
「十人の妖人か。天下におるのは」
「その者達はどうされますか」
「津々木はこれまで通りじゃ」
 追っ手を差し向けてまさに草の根分けて探し出している、そしてそれをというのだ。
「他の者達にもな」
「そうしますか」
「公卿である高田殿には難しいやも知れぬが」
 それでもだというのだ。
「近衛殿、山科殿とお話したうえでな」
「そうしてですか」
「この戦の後で色々聞きたい」
 その高田から直接、というのだ。
「何かとな」
「そうされますか」
「伊賀の者達も同じじゃ」
 百地とその下にいる三人の上忍達だ。
「何でも本願寺に。顕如殿が知らぬ間に勝手について戦っていたそうじゃしな」
「それも面妖ですな」
 滝川が言って来た、甲賀の忍を束ねる彼がだ。
「伊賀は元々二つに分かれていました」
「服部家と百地家にじゃな」
「百地家は伊賀にありましたが」
「それでもじゃな」
「はい、何時から伊賀にいたのかわからず」
「服部家とは別の流れじゃな」
「同じ伊賀者であってもその術も何もかもが違います」
 つまり全く別の者同士と言って差し支えないというのだ、服部家と百地家では。
「服部殿もいぶかしんでおられます」
「百地のことをか」
「その下の三家についても」
 石川、楯岡、音羽の三家についてもというのだ。
「全く以て」
「やはり妖しいのう」
「しかも我等と本願寺の戦の後はです」
「完全に行方をくらましておるな」
「何処に行ったのか」
 それが全く、というのだ。
「わかりませぬ、これは杉谷や無明も同じ」
「あの者達についてもわからぬな」
「延暦寺から完全に消えました」
「しかもその者達全てがな」 
 ここで信長はその目を鋭くさせてこうも言った。 
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