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戦国異伝

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第百九十八話 石田三成という男その六

「上杉の将も見事じゃが」
「二十五将ですな」
「それに直江殿も」
「どの御仁も見事じゃ、しかし」
「織田家の将帥は二十五どころではない」
「より多いですな」
「しかも徳川殿もおられる」 
 家康、彼もだというのだ。
「だからな」
「勝てると」
「織田家が勝つというのですな」
「そういうことじゃ、では行くぞ」
「はい、それでは」
「次は上杉と」
 十勇士達も応えてだ、そしてだった。
 幸村と彼等は信濃を北に進み実際に海津城に入った時にだ、その報を聞いたのだった。
 信長はその報を聞いてだ、まずはこう言った。
「そうか、上杉はか」
「はい、春日山に入らずに」
「すぐにです」
「そこから南に降り」
「ここに向かっております」
 報を持って来た忍達が答える。
「そしてです」
「我等に戦を挑んできます」
「上杉謙信自らそう言っています」
「軍勢を進める中で」
「ふむ。上杉謙信自らか」
 その話を聞いてだ、また言う信長だった。
「やはりな」
「その数は五万です」
「金沢から引き返してです」
「ここに来ております」
「信濃に」
「ではじゃ、この城に来て間もないが」
 それでもとだ、信長は諸将に対して告げた。
「すぐにじゃ」
「城を発ちですな」
「そのうえで」
「うむ、戦の場に向かう」
 まさにそこにというのだ。
「そしてその場はじゃ」
「川中島ですな」
「あの地ですな」
「そうじゃ、かつて武田と上杉が何度も戦ったその場でじゃ」
 その川中島でというのだ。
「我等が戦う」
「上杉と、ですな」
「あの家と」
「そうじゃ、戦う」
 まさにというのだ。
「ではよいな」
「はい、では」
「これより」
 家臣達も応える、そしてだった。
 信長はその彼等にだ、こう告げた。
「次で上杉じゃ」
「あの家もですな」
「降すのですな」
「そうじゃ、そうする」
 確実にだ、そうするというのだ。
「上杉謙信も軍門に降す」
「越後の龍もですな」
「あの者もまた」
「楽しみじゃな」
 謙信を家臣にすることを思いだ、信長は笑った。
 そうして実際に海津城を発ってだ、そのうえで川中島に向かった。だがこの時は。
 柵は用意させない、それを見て林が信長に問うた。
「長篠の時とは別ですか」
「柵じゃな」
「今度は柵は置かぬのですか」
「一度やった、一度やったことはな」
「相手が違えどですか」
「見破られる、だからじゃ」
「今は、ですか」
「柵は用いぬ」
 上杉との戦ではというのだ。 
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