リリカルアドベンチャーGT~奇跡と優しさの軌跡~
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第八十五話 知識と誠実の迷い
前書き
最近伊織の影が極限に薄いので、彼を出したいと思います。
ツカイモン[リリカルアドベンチャー、始まります]
伊織はデジタルワールドの破壊されたダークタワー見ながら考えていた。
大輔とタケルの険悪な関係。
大輔は光に大事な者を奪われ、タケルは闇に大事な者を奪われた。
最初はタケルの失言から始まった不仲、そしてドミニモンとの戦いを経て二人の関係は最悪と言っていい。
最初は喧嘩しながらも共に戦った仲なのに、今はこうして決別してしまったのが悲しかった。
アルマジモン[伊織、大輔達のことを考えてたのきゃ~?]
伊織「はい、大輔さんがいなくなって、今は凄く静かです…悲しいくらいに…」
いなくなって初めて気づいた。
自分達がどれだけ大輔の優しさと明るさに支えられていたのか。
出来るなら帰ってきて欲しい。
そしてもう一度、仲間としてやり直したい。
しかし、それをタケルは認めないだろう。
闇を擁護しようとする大輔達を。
伊織「タケルさんは…確かデビモンとの戦いでパタモンを失った…パートナーが、自分の目の前で死んでしまう……」
その時タケルが感じた悲しみと絶望は、伊織には想像する他なかった。
いや、想像もしたくない。
もしも今膝の上に乗っている自分のパートナーが、死んでしまうなんて。
伊織「大輔さんも…クラヴィスエンジェモンという天使型デジモンに友達を殺された…」
自分のことを慕ってくれた少女を守れず、殺されてしまった時の大輔の気持ちも伊織には想像するしかない。
いや、したくもない。
友達を目の前で殺されるなんて考えたくなかった。
ヤマト「どうしたんだ?」
伊織「あ、ヤマトさん」
大輔が離脱して以降は、先代の選ばれし子供達が手伝ってくれているのだ。
今日はヤマトが手伝ってくれている。
ヤマト「もしかして、大輔とタケルのことか?」
伊織「あ、はい。仲間だったのに…今はこうして敵対してしまったのがとても悲しいです…」
ヤマト「そうだな、俺も似たようなことがあった」
伊織「え?」
ヤマト「三年前の冒険でな、俺は太一を攻撃したんだ。」
伊織「ど、どうしてですか?」
ヤマト「三年前のダークマスターズとの戦いで、俺は自分に悩んだ。何で俺の紋章が友情なのか…そしてタケルのことを…」
伊織「タケルさんのことを?」
ヤマト「ああ、タケルは俺がいなきゃ駄目なんだってそう、思っていた……でも、タケルはいつの間にか成長していたんだ。俺を、必要としないくらいに」
リーダーとして皆を率いる太一。
仲間を時に優しく、時に厳しく励ます空。
我慢することを覚えたミミ。
最上級生として仲間を精神的に支える丈。
パソコンを使い仲間をサポートする光子郎。
ヤマト「俺だけが変わっていないと思っていた。皆はデジタルワールドの冒険で成長したのにって…そこを突かれてしまった俺は太一を…攻撃した。強くなるために。答えを得るために。でも結局、答えは見つからなかった」
伊織「………」
ヤマト「今思えば俺は空達にお前達のような気持ちを味合わせてたのかもな。そして俺は逃げるように、皆から離れた。色々言い訳してさ。それを思えば大輔は本当に凄い奴だ」
伊織「大輔さんが?」
ヤマト「ああ、あいつは…クラヴィスエンジェモンっていう天使型デジモンに大切な友達を奪われた。実際大輔は嫌いなんだろうけど、あいつは光の存在を否定しなかった。本当は叫んで否定したいくらい憎いだろうに」
伊織「あ…」
確かにそうだ。
嫌いとは言っていたが、大輔は光の存在を否定しなかった。
ヤマト「あいつの話を聞いて俺も色々考えさせられた。光と闇ってのは何なのか?俺達は今まで闇を悪と思って戦ってきた。でも、もしかしたら、俺達は救えたかもしれない奴まで倒してしまったんじゃないかと思う時もある」
実際ダークマスターズのピノッキモンがいい例ではないだろうか?
あれは善悪の区別がつかない無垢な子供。
もし、善悪の区別、友達というのは何なのかを教えてやれたなら、ピノッキモンはもしかしたら…。
ヤマト「………………」
伊織「ヤマトさんは大輔さんの気持ちが分かるんですね…」
ヤマト「何となくだ。あいつは何処か俺に似ているところがあるのかもな…」
それを言ったらタケルは日々太一に似てきている。
弟が親友に似てきたことにヤマトは少し複雑な気持ちだった。
ヤマト「ああ、だから相性が最悪なんだなあいつら」
伊織「え?」
ヤマト「伊織、俺と太一は親友の間柄だが、最初から仲がよかったわけじゃない。寧ろ最悪と言っていい」
伊織「どういうことですか?」
あんなに仲がいいのに。
仲が最悪?
ヤマト「昔、俺は野球部でな。聞いてくれよ、あの馬鹿太一は学校のグラウンド全部使いたいとか言って来てな。それで喧嘩になった。それが俺と太一の最初の出会いだ。多分第一印象は互いにムカつく奴だっただろうな」
伊織「そ、そうですか…」
確かにそれなら互いの第一印象は最悪だろう。
ヤマト「まるで昔の俺達を見てるようだあいつらは…だけど俺達とは決定的に違うのは…」
伊織「光と…闇…ですか?」
ヤマト「そうだ。俺と太一にはそんな物は無かったから喧嘩をして、ライバルとして互いに磨き合って、親友になれた。でもあいつらは…」
伊織「大輔さんは光を嫌い、タケルさんは闇を憎んでいる…」
ヤマト「ああ…こればかりはあいつらの問題だ。出来るなら和解して欲しいが…大輔はともかくタケルの方がな…闇のことを解決しない限り不可能だろう」
伊織「僕は…大輔さんともう一度冒険したいです。」
ヤマト「そうか…でも大輔だって伊織達の気持ちは分かっているはずだ。これは時間の経過でしか解決出来ない。あいつは俺より友情というのが何なのかを分かっている」
伊織「……大輔さんは勇気と友情の紋章を受け継いだ人ですからね…」
アルマジモン[いつかきっと分かり合える日がくるだぎゃあ!!]
ヤマト「ああ、そうだな(タケル…出来ることなら大輔と殺しあわないことを祈ってる。そんなことになったら…)」
ヤマトはタケルと大輔が戦わずに和解する日が来ることを願った。
しかし、それは……。
後書き
大輔がヤマトタイプでタケルが太一タイプ。
最初の二人は仲が悪かったみたいです。
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