戦国異伝
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第百九十七話 龍の勘その八
「よいな」
「はい、では」
丹羽が応えてだ、そのうえで。
織田の軍勢二十万は信濃を北に進んでいく。幸村はその彼等の中に入った。無論十勇士達も一緒である。
十勇士達は織田の大軍の中に入ってだ、驚く顔で話をした。
「多いな」
「全くじゃ」
「織田の軍勢はな」
「相手にしても多いが」
「中に入ると余計にな」
「うむ、多さがわかるな」
「実にな」
こう話すのだった。
「二十万か、それだけいればか」
「この数になるのか」
「そして二十万の数でか」
「今度は上杉との戦か」
「そうなるか」
「しかもじゃ」
幸村もだ、自身の周りにいる十勇士達に馬上から言った。
「その大軍がじゃ」
「この大軍はといいますと」
「一体」
「何があるのでしょうか」
「数だけではござらぬな」
「うむ、武具も見事じゃがな」
俺のそれはというのだ。
「しかしじゃ」
「それだけではないとですか」
「殿は仰るのですか」
「そうじゃ、その大軍が乱れることなく動いておる」
幸村が言うのはこのことだった。
「それも全くな」
「そういえば、ですな」
「全く乱れませぬな」
「これだけの大軍が動いているというのに」
「それでも」
「兵を動かすことは難しい」
将ならではの言葉だ。
「しかしな」
「織田殿、いえ織田様の軍勢は」
「この通りですか」
「全く乱れずに進んでいると」
「整然として」
「これは凄いわ」
実に、というのだ。
「武田以上に整っておるやもな」
「織田の兵は弱いといいますが」
ここでこう言ったのは猿飛である。
「それでもでござるか」
「うむ、確かに織田の兵はな」
「弱いですな」
「それは事実じゃ、しかしじゃ」
「その動きはですか」
「この通りじゃ」
よくまとまっているというのだ。
「一兵も離れることがない位じゃからな」
「この整いもですか」
「織田の強さであろうな」
「そういえばです」
清海も言って来た。
「織田は一銭斬りでしたな」
「一銭でも奪えばな」
「斬られるのでしたな、首を」
「そうじゃ」
まさにその通りだとだ、幸村は清海に答えた。
「織田家はそうしたことには厳しい」
「それで、ですな」
「決まりも厳しいからのう」
「それで兵も整っていますか」
「そうじゃ、兵は弱くともな」
それでもというのだ。
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