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戦国異伝

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第百九十七話 龍の勘その七

「やはりな」
「では殿」
 柴田が信長に問うてきた。
「川中島での戦は」
「どう戦うのかじゃな」
「相手は上杉謙信です」
 それ故にとも言う柴田だった。
「尋常な戦ではです」
「勝てぬな」
「我等は二十万、上杉は五万ですが」 
 兵はこちらが大きい、しかも相当に。
 だが相手は謙信だ、それで柴田も言うのだ。
「油断出来ませぬ」
「あの者に兵の多い少ないは関係ない」
「まさにですな」
「そうじゃ、だからな」
「兵の多さで戦うのではなく」
「戦の仕方じゃ」
 それで戦うというのだ。
「相手が上杉なら余計にな」
「武田の時と同じく」
「兵の数は大事じゃがそれだけではない」
 こうも言うのだった。
「戦の仕方も大事じゃ」
「兵法、それもまた」
「そうじゃ、今回も考えがある」
 武田の時と同じく、というのだ。
「では川中島に行こうぞ」
「さすれば」
「そういえば殿」
 川中島と聞いてだ、丹羽が信長にこう言ってきた。
「川中島の後ろにはです」
「海津の城があるな」
「はい、あの城をですな」
「使う」
 それは当然だと言う信長だった。
「あの城を足掛りとしてな」
「戦われますか」
「万が一のことがあってもじゃ」
 川中島で敗れてもというのだ。
「あの城を頼りにしてな」
「戦われますか」
「城があると違う」
 足掛かりがあれば、というのだ。
「だからな」
「この度はあの城を使われますか」
「二十万の兵を支えられる城ではない様じゃが」
 海津城はそこまで大きくはない、信長はそのことはもう聞いている。しかし城があるのならそれならというのだ。
「あの城も使う」
「そうされますか」
「そのうえで上杉と戦う」
 こう丹羽に答えるのだった。
「ここはな」
「はい、それでは」
「さて、上杉の兵も強い」
 そして、というのだ。
「何よりも将が強い」
「とりわけですな」
「二十五将に直江兼続にな」
「総大将の上杉謙信が」
「それだけにわしの片腕としたい」
 信玄と同じく、というのだ。
「ずっと願っておった、あの二人を我が両腕にしようとな」
「ですか」
「さすれば天下を一つにしてな」
「それからもですな」
「その天下を守れる」
 そうなるが故にというのだ。
「わしはあの者も欲しい」
「さすれば」
「まずは海津の城に入りな」
 そして、というのだ。
「出来れば春日山を攻めるが」
「その前に上杉が来れば」
「攻める」
 まさにその時にというのだ。 
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