ハイスクール・DM
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13話
「イッセェェェェェェェェェェェェェェエ!!!」
四季の拳が一誠の頬に叩き付けられ、更に馬乗りになって何度も四季の拳が叩き付けられる。
「あのアーシアってシスターの事はどうでも良い、どうせカラスと悪魔の問題なんだからな! だけどな……」
四季の拳が血に濡れているのは一誠への物だけではない。強く握り締めた拳は爪が皮膚に突き刺さるほどの力で握り締められている。
「そんな物にあいつを……詩乃を巻き込んでんじゃねぇ!!!」
周囲に落ちているのは三つのぬいぐると三本の缶ジュース(一誠の分は最初から無い)。何故自分が詩乃から離れたのか、僅かな間だけだからと油断して一人で飲み物を買いに行ってしまったから……。自分が残っていれば、詩乃を連れて行けば……。そんな後悔が何も出来ずに二人を堕天使に攫われた一誠への怒りとなって吐き出される。
「その辺にしとけ」
「……クロス」
クロスファイヤに振り上げた拳を捕まれ、やっと一誠を殴るのをとめる事の出来た四季だった。
「……クロス……猶予なんて与えていたオレが甘かった」
あの時、ブルースの提案を支持していれば詩乃を危険に晒す事はなかった。……堕天使側との敵対? すれば良かった。アザゼルの言葉を聞き入れて妙な情けを掛けてしまったから、こんな事になってしまった。警告ではなく殲滅しておけば……アザゼル達幹部の首を獲っていれば……
「おーい、そろそろ戻って来い」
危険な方向に思考が転がっている四季をクロスファイヤが此方へと意識を戻す。
「クロス、アウトレイジと堕天使との戦争だ。文句は?」
「ねぇな。後悔させてやろうぜ、オレ達を舐めた事と、喧嘩を売った事をな」
憎悪の意思を持った四季の言葉に獰猛な笑みを浮かべて返すクロスファイヤ。クロスファイヤも可愛い弟分の恋人である詩乃の事は気に入っていた。なにより、身内に手を出されて黙っているわけが無い。
何故こうなったのか、それは僅かに遡る……。
「なんでお前と仲良くこんな所に居なきゃならないんだ、変態?」
「それはこっちの台詞だぜ……五峰」
にらみ合いを続けている四季と一誠の二人がハンバーガーショップに有った。根本的に四季と一誠の仲は初めてオカルト研に呼ばれて以来『最悪』と言うに他ならない。
そもそも、実力面で下である一誠の言葉等は所詮は格下の相手の戯言と切って捨てる事はできるが、何事にも例外は存在している。四季にとっては詩乃の事がそれに当たる。
偶然帰り道で悪魔である一誠がシスターである『アーシア・アルジェント』と言う女の子と一緒に居る所にエンカウント。アーシアと詩乃が仲良くなったのでこうして一緒に遊んでいると言う訳だが、
「何不機嫌な顔してるのよ?」
「いや、そんな顔はしてないよ」
不機嫌な表情など0.1秒さえも見せてはならないとばかりに、良い笑顔を詩乃に向ける。流石に態とらしいものが有るが、詩乃も四季が一誠と仲が悪い事は知っているので、それが原因だろうと納得した様子だった。
「有り金の半分つぎ込んでしまった」
「へたくそ」
ハンバーガーショップで出た後で見つけたゲームセンターのクレーンゲームの景品のぬいぐるみを見入っているアーシアに対して格好をつけた一誠がそれを取ってあげると言ったのだが、設定の為か有り金の半分注ぎ込んでも未だに取れていない。
一瞬で有り金の半分を失った一誠の煤けた背中を見て失笑している四季の図と言ったところだ。
「だったらお前がやってみろよ!」
「良いぞ」
そう言って一誠と交代すると100円を投入……結果、
「嘘だろ……」
「当然の結果だ、アウトレイジ舐めるな」
一回で二つもぬいぐるみを確保するという結果を見せ付けていた。
「はい、詩乃」
「えっと……ありがとう」
四季から渡されたぬいぐるみを受け取りながら照れながらも嬉しそうに微笑む彼女の姿に見惚れている四季。欲しがっていたのはアーシアだろうが、基本的に常に詩乃最優先の思考をしている四季である。二つ有っても二つとも彼女に渡すのは当然の行動である。そんな詩乃をちょっと羨ましそうに見ているアーシア。そして、
「ち、ち、ち、ちくしょー!!!」
どうせ失敗するだろうと思っていた四季が一度で成功した姿を見て絶叫と同時に再び財布の中身を大量に投入し始めた。流石に数を繰り返せば成功したのか、財布の残金が其処を付く寸前にぬいぐるみを取る事に成功した一誠だった。
「一誠さん、詩乃さん、五峰さん、今日はありがとうございました。こんなに楽しかった日は初めてです」
楽しい時間は過ぎて夕闇に包まれた公園、アーシアの手にはクレーンゲームの景品のぬいぐるみが抱かれていた。
この時、ちょっと飲み物でも買いに行こうと思ったのが間違いだったのだろう。一誠に三人分の飲み物を買ってくると告げて公園を離れてしまった時……一誠の前に再び、『天野 夕麻』と名乗っていた堕天使が現れたのだ。
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