トレジャーハンター
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第一章
トレジャーハンター
チコリ=ベルシードはトレジャーハンターをしている。冒険で手に入れた宝ものを売り手に入れた財宝を糧として生活をしている。
それでこの日も冒険で精霊の森と呼ばれる深い森に入っていた。そこで。
グリーンドラゴン、森の主である古い竜にこう言っていた。
「あんたとは戦いたくないから」
「それでもか」
「うん、お宝は貰うよ」
「わしが持っている宝は多いが」
竜はチコリにこう返した。
「その中のどれだ」
「お鍋よ」
「鍋だと!?」
こう言われてだ、竜はチコリに目を剥いて返した。
「鍋が欲しいというのか」
「ええ、あんたが最高のお鍋を持っているって聞いてね」
「あのオリハルコンの鍋か」
「それを欲しいのよ」
「あんなものが欲しいのか」
これが竜の返事だった。
「わしは確かに多くの宝を持っているが」
「あのお鍋はなの」
「何でもないものだ」
竜が持っているその中では、というのだ。
「別にな」
「あんたは相当にお宝持ってるのよね」
「そうだ、多くの財宝に宝石そして珍品があるが」
その中でだ、その鍋はというのだ。
「宝では到底ない、ただの家具だ」
「その家具が欲しいのよ」
「オリハルコンの鍋がか」
「いいかしら」
チコリは竜にあらためて問うた。
「若しくれないのなら買うしそれが無理なら」
その両手のそれぞれの指と指の間にナイフを出して構える。
「勝負してでも」
「待て、これが宝がかかっているのなら別だが」
竜は構えたチコリに落ち着いた声で返した。
「そんなもので争うつもりはない」
「そうなのね」
「もっと言えば売るつもりもない」
竜はチコリにこうも言った、見ればチコリは茶色のショートヘアで青い目をしている。顔立ちはボーイッシュだが整っている。はっきりとした目鼻立ちだ。
小柄ですらりとした脚を黒タイツで包み赤い半ズボンとブーツ、それに青い上着と黄色いジャケットという格好だ。
その彼女を見てだ、こう言ったのである。
「別にな」
「そうなの」
「やる」
その鍋をというのだ。
「持って行くがいい」
「そうしてくれるのね」
「うむ、今から持って来るからな」
棲家である洞窟に戻って、というのだ。
「そうするからな」
「それじゃあね」
こうしてだった、チコリはオリハルコンの鍋を手に入れ森にいるモンスターを倒して手に入れた金も懐に収めてだ。
意気揚々として街の自分の家に帰った。その彼女に。
魔法戦士として数々の冒険をこなしてきている兄のギレック、チコリと同じ髪と目の色だがその髪をオールバックにした精悍な顔立ちの長身の青年がだ。こう問うた。見れば着ているものは甲冑だ。
「おい、あの森で手に入れたのは」
「そう、お鍋よ」
「オリハルコンのか、確かにな」
「オリハルコンはいいものでしょ」
「ああ、ただな」
それでもと言う兄だった。
「そこまでして手に入れるものか?」
森の奥深くまで行ってドラゴンに会ってまでして、というのだ。
「一体」
「私的にはそうなの」
あっさりと答えたチコリだった。
「だからなのよ」
「わざわざ単身行ったのか」
「そうなの」
「全く、無茶だな」
「無茶なのは承知よ」
チコリにしてもというのだ。
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