とにかく集めて
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第五章
「その薬惚れ薬だろ」
「い、いえそれは」
「さっきよりも慌ててるな、図星だな」
「違うって言ってるでしょ」
「顔が真っ赤で目が泳ぎまくってるぞ」
明らかに嘘だというのだ。
「御前昔から嘘言うの下手だからな」
「私が嘘言ったらどうなるっていうのよ」
「今言った通りだよ」
つまり顔が真っ赤になり目が泳ぐというのだ。
「そのままだよ」
「それは目の錯覚よ」
「違うな、絶対に」
「くっ、言うわね」
「何度でも言ってやろうか?」
「じゃあ飲まないっていうのね」
「あのな、本当に言うけれどな」
それでもという口調で返したゲルマンだった。
「御前つまり俺のことが」
「悪い?」
アンナは遂に居直った、それで薬を一旦カウンターに置いてそのうえで腕を組んでその居直った表情で言った。
「それで」
「見事に居直ってきたな」
「好きよ、そうなのよ」
顔をさらに赤くさせてだ、頬を膨らませての言葉だった。
「あんたのことが。昔から」
「やっぱりそうか」
「悪い?子供の頃から一緒だし頑張ってるしお仕事は完璧にこなすし」
「そうしないと食えないからな」
「顔とかも嫌いじゃないわよ」
外見もというのだ。
「だからね」
「俺でいいのかよ」
「いいから言うのよ」
今度はこう言うのだった。
「それでお薬も作ったのよ」
「俺にその薬を飲んでか」
「好きになってくれたらって思ってね」
それで、というのだ。
「じゃあいいわね」
「それじゃあってなるか」
ゲルマンはアンナに即座に反論した。
「惚れ薬出されていきなり好きになれか」
「駄目?」
「仕方ない奴だな」
苦々しい顔でだ、ゲルマンは溜息をついてだ。
そのうえでだ、アンナに言ったのだった。
「また仕事依頼してくれるか」
「それどういう意味よ」
「何なら一緒に住むか?」
こうも言うのだった。
「これからは」
「それってつまりは」
「そうだよ、言ったままだよ」
「それなら」
そう言われるとだ、納得して頷いたアンナだった。それでだ。
顔を俯けさせてだ、これ以上はないまでに真っ赤になった顔でだ。こう言ったのだった。
「宜しくね」
「ああ、これからもな」
「正直ほっとしてるわ」
告白を受けてもらってだ、アンナは言葉を漏らした。
「心配で仕方なかったから」
「その薬を作っただけにな」
「そう、けれどそれならね」
「これから宜しくな」
「ええ、一緒に住むのならお部屋は?」
「新しい家を買うか?」
二人で住む新居、それをというのだ。
「そうするか?」
「お金あるの?」
「これでもやり手なんだよ」
トレジャーハンターとしての腕は確かだというのだ。
「仕事の依頼もひっきりなしだしな」
「実際にさっきまで仕事もしてたしね」
「だからな、金はあるんだよ」
「それでなのね」
「家位買えるさ」
それ位の蓄えは既にあるというのだ。
「安心しろよ、それ位は」
「そうなの」
「御前だって金はあるだろ」
「国でも有名な薬剤師よ、これでも」
これがアンナの返答だった。
「お薬の依頼が尽きないから」
「じゃあお互い仕事には困ってないし」
「一緒に住む家は買えるさ」
「それじゃあ」
「一緒に住むんだな」
「もう答えたから言わないわ」
アンナは口を尖らせてゲルマンに答えた、その顔は今も真っ赤だった。
「もうね」
「そうか、じゃあな」
「これからそのお家選ぼうね」
二人で、とも言ったアンナだった。今の二人はそうしてだった。薬を置いたままそのうえで話をするのだった。
とにかく集めて 完
2014・10・20
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