Fate/magic girl-錬鉄の弓兵と魔法少女-
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A's編
第四十二話 買い物とこれから
今、俺はデパートの婦人服売り場にいる。
なんでこんなとこにいるかというと
「う~ん、士郎君。
これ、シャマルにどうやろ?」
はやてのシグナム達の生活用品の買い物に付き合っているためだ。
とぼんやり考え事をしているわけにもいかないので、はやてが差し出したロングスカートとシャマルのイメージを合わせて返事をする。
「シャマルにか?
うん。いいんじゃないか」
「そかそか、シグナムもおんなじ感じのスカートはどうやろ?」
「シグナムは……動きやすい服の方が好むように思えるが」
「そう言われるとそやな。
それじゃ、向こうのパンツスタイルの方やね」
楽しそうに買い物をするはやての後ろをついて行く。
あの後、はやてがシグナム達のサイズを無事測り終わり、俺と共にデパートに繰り出したのだ。
もっとも出かける時に俺と二人は危険だからとシグナムとヴィータに警戒されたのだが。
「シグナムさん達のいいたい事はわかるが」
「ならば」
だがここで援護してくれたのが
「でも今の恰好やったら目立つやろ」
「それに今まで衛宮の行動を見るに主に手を出すとは思えん」
「私もザフィーラに賛成です」
「だけど主と二人っていうのは危なすぎんだろ」
「そうだ。万が一というのがある」
はやてと意外にもザフィーラとシャマルであった。
それでも納得できないヴィータとシグナム。
まあ、いきなり現れた別の魔術という技術を持つ人間を完全には信用できないだろう。
「目立たない格好でついて来れるなら別にかまわないが」
俺も外套を脱いでいくつもりだ。
さすがにこの時期にコートのようにも見える外套を着て日中街を歩こうとは思わない。
中に来ているのは黒のズボンと長袖のシャツで全身黒だが特別戦闘用というわけではないので其処まで目立つ事はないだろう。
一応シグナム達も病院に向かう時に投影した上着があるが、さすがに日中歩くには目立つ。
特にシグナム達女性陣は短いスカートに背中が出ていたりと露出度が高い。
注目を集めるのは間違いない。
「ならば俺がついていこう」
そう進言したのはザフィーラ。
確かに男性なら女性ほど目は惹く事もないだろうと思っていた。
光に包まれるザフィーラ。
そしてそこにいたのは一匹の蒼き狼
「この姿なら問題はなかろう」
どうやらアルフのように人間形態と狼形態をとれるらしい。
だけどこれにも問題がある。
なぜなら
「店内のペット同伴って大丈夫か?」
「ちょっと難しいやろな」
だよな。
はやての言葉にシグナム達も眉をひそめる。
そんな心配も
「人が多い店の中では余計な心配はいるまい。
衛宮が人目を惹くことを嫌っているならなおさらだ」
というザフィーラの言葉に納得していた。
ちなみに今は呼び捨てにしているのは家を出る前にシグナムに
「いちいちさん付をする必要はない」
という言葉に他の三人も同意したためだ。
あれからもデパートの中を回り、シグナム達の洋服や生活用品も一通り買い揃えた。
ザフィーラの分も人間形態になれるのだからという事で一応買っている。
そして、現在俺は椅子に腰かけてはやてを待っている。
子供とはいえ婦人服の売り場にいるのは正直肩身が狭いので勘弁してほしいのだが、荷物持ちも兼ねているので黙って従っていた。
だがここはいくら子供にだからと言って入りたくはない。
「はあ~」
ため息を吐きながら視線を向けるのは女性の下着売り場。
洋服を買い終えた俺ははやてに連れられここに辿りついた。
否、辿りついてしまったというべきか。
「ほな、ここでおわりやから逝こうか」
「いや、俺は男だから! それ以前に字が違う!!」
「いいやんか。まだ子供なんやから」
「お願いです。勘弁してください」
というやり取りがありなんとか下着売り場に入る事を拒む事が出来たのだ。
確かにはやてのいうとおり今の俺の肉体は子供だ。
精神も多少ながら肉体に引き摺られているのも認めよう。
だがそれでも超えてはまずい事があると思うのだ。
俺は間違っていない。
そう、自分を納得させていると女性の店員に荷物を持たれ売場から出てくるはやて。
すぐに荷物を持ち、はやてのとこに向かう。
「お待たせや」
「そんなに待ってないよ。これで全部か?」
「うん。これで完璧や」
満足そうなはやての笑顔につい苦笑してしまう。
子供でも女性。
買い物は好きらしい。
そして、店員の女性から購入した品の袋を受け取る。
「頑張ってね。男の子」
「……はは」
なにやら勘違いされているようだが笑顔で受け取っておこう。
もしかしたら引き攣ってるのかもしれないが。
そしてデパートの外で待っているザフィーラと合流する。
ちなみにザフィーラは犬好きの女子中学生達に揉みくちゃにされていた。
なんでもザフィーラ曰く
「初めは警戒するように近づいてきたが、脅かすわけにもいかず大人しくしているとああなった」
らしい。
確かに子供が乗れるくらいの大型犬だ。
正確には狼だが、犬好きにしてみれば興味があるだろう。
さらに大人しいとわかれば仕方がないのかもしれない。
そのあと、荷物をはやての家まで運んだのだが時間が結構迫ってきているので今日は失礼する事にした。
その時
「あ、もうそんな時間なんか。
見送るからちょっと待って」
「いいよ。また来るし、今度は俺の家に招待するから」
「でも」
「主はやて、衛宮の見送りは私とザフィーラが」
「う~ん、ならシグナム、ザフィーラお願いな」
というやり取りがありシグナムとザフィーラに見送ってもらう。
ちなみにはやての見送りを断ったのはシャマルと共に買ってきた服を出したり、ヴィータに服を着せたりと忙しそうだったためである。
「衛宮、手助け感謝する」
「気にしないでくれ。もし困った事があったら連絡……といっても手段がないか。
街に結界を張っているのは話をしたな。魔力を放出してくれればこちらからいく」
「わかった。
あと近いうちに家を教えてもらいたい。
何かあるたびに魔力を放出するわけにもいかん」
「それもそうだな。なら……」
今日と明日の予定を考える。
両方ともバイトだな。
明後日からは平日のため学校。
来週まで時間が取れないか。
万が一に備えて可能な限り早い方がいいのも事実。
夜に少し時間を作ってシグナム達だけにでも教えておいた方がいいか。
「夜遅くに使いをやる。
遅いからはやてを招待するのは後日になるが」
「心得た。
では待っている」
シグナムとザフィーラに別れを告げ、八神家を後にする。
side シグナム
衛宮士郎をザフィーラと共に玄関から見送り、扉が閉まってから
「どう思う?」
ザフィーラに問いかける。
「主の事か?
それとも衛宮の事か?」
「衛宮の方だ」
ザフィーラの言葉に扉を見たまま答える。
主はやてに対しても色々思う事もある。
今までの主達に比べ幼い主はやて。
それに衛宮が傍にいたため闇の書の蒐集についてはまだ話していない。
しかしそれは今から話せばいい事でありそれほど問題ではない。
困惑しているのは今までの主と違い、物としてではなく一人の人間として扱うかのような言動。
話し方も高圧的ではなく、どこか遠慮したような話し方だ。
今までの主達とは違う接し方に慣れていないというのもあるのだろう。
そして衛宮に関してはなんとも表現し難いところがある。
話を聞く限り我々とは全く別の魔法技術である魔術。
それに初見の時の威圧感と纏ったモノ。
主はやてと同じ年頃の子供とは思えない。
だが主や我らに何らかの悪意を持っているのかと考えればそれは低い。
それどころか病院では我々のフォローをしてくれたりと協力的だ。
「衛宮に関してはしばらくは様子を見る必要はあるかも知れんが、必要なら蒐集についても話した方が良いかもしれん」
「本気か?」
予想外の言葉にザフィーラを見つめる。
だがそれにしっかりと頷く。
「衛宮が言っていたであろう。
管理局も簡単には手が出せないと」
「だが管理局に個人的な知り合いがいるとも言っていた」
下手に闇の書の情報を与えればそこから管理局に伝わる可能性は高い。
「だからこそだ。
個人的な知り合いという事は管理局という組織とは繋がりがない、またはあっても薄いと考えるのが妥当だろう。
ならば初めから話して衛宮の個人的な知り合いに情報がいかなければ」
「なるほど管理局に情報がいく事はほぼないと」
「そうだ」
確かにザフィーラの考えも一理あるか。
下手に隠すより管理局に我らの事を漏らさないように頼めばいい。
さらにうまくいけば協力すら得られるかもしれん。
……これはうまくいきすぎだろうが。
「シャマルとヴィータの意見も聞いてみるか」
「そうだな」
とりあえず簡単にだが意見がまとまった時
「シグナムとザフィーラ、なにしとるん?」
「あ、申し訳ありません」
「そんなとこに立っとらんでこっちおいで、シグナムの服も買おうてきとるんやから。
ザフィーラもおいで」
「はい」
シャマル達と意見を纏める前にせっかく主が買ってきてくださった服に着替えるのが先のようだ。
今までとは違う主。
何かが変わるのかもしれない。
もし変わるとしてもこの小さき主の笑顔を失う事だけは決してないように
「ほらシグナム」
「はい。ただいま」
騎士として剣に誓おう。
誓いを胸に新たな主の下に向かう。
後書き
今週も無事更新。
このまま順調に更新出来るように頑張ります。
それではまた来週。
ではでは
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