願いを叶える者(旧リリカルなのは 願いを叶えし者)
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伝家の宝刀
「おらぁ!準備はええか!」
強襲科修練室。
そこにはギャラリーを従えながらもその中央に二人の生徒が相対していた。
言わずも俺と神埼な訳だが。
周りからは
『あの神埼に挑むなんて命知らずな奴が居たもんだよな』
『アイツ死んだな』
『アリア先輩がんばれー!』
等と聞こえてくる。
まぁ当然と言えば当然だろう。
俺は最低のEランクであのチビッ子はSランクなのだから。
「逃げずに来たみたいね!」
「自分より弱いやつから逃げることは誰もしないと思うがな」
「よぉしお前ら、存分に殺り合えや。開始ぃ!」
パァンッ!
強襲科担当の教師、欄豹が開始の合図を言った。
その直後に響く景気の良い音。
「~~~っ!何なのよあんたのソレはぁ!?」
頭を押さえながら俺の持つ武器を指差して叫ぶ神埼。
俺はその武器を前に出しながらいってやった。
「伝家の宝刀、派李占だ!」
「見れば分かるわよ!」
「なら聞くなチビッ子!」
「~っ!風穴ぁ!」
ガンガンガン!
ベシベシベシ!
怒り狂った神埼が、拳銃を二丁取りだして乱射する。
俺は撃たれた弾を全て叩き落とした。――――ハリセンで。
「何なのよそのハリセンはぁ!」
「俺印の派李占だ!まだまだ始まったばかりだぞ!」
俺は再び派李占を構えるのだった。
「雑念を捨て心を無にしなさい!」
パァンッ
「ふぎゅっ!」
「神埼、アウトー」
パァンッ
「みゃう!?」
「ミスターフルスイング!」
パァンッ
「きゃう!」
「チャーシューメーン!」
パァンッ
「みぎゃっ!」
「トラーイ!」
パァンッ
「あうっ!」
――――ズパパパパァンッ!
合計87回目の叩き。
既に会場は静まり返り、ギャラリーは静かにその戦いを見ていた。
戦いと言っても良いのかさえ迷うような虐めの光景に、欄豹でさえ額にてを当てている状況である。
「くぁ……ふにゃぅ……」
まぁまぁな威力だったためか、神埼はふらふらと目を回しつつもまだ立ち上がる。
お手玉にされているのがシャクなのか、未だにやり返す意志はあるようだ。
「Eランクにここまでやられて手も足もでないSランク(笑)」
「もぅ止めやぁ!勝者 赤志!」
欄豹が俺を勝者とみなし、宣言を挙げる。
しかし会場は静まり返り、声援も歓声も挙げられなかった。
まぁ当然と言えば当然だろう。
端から見れば小さい子を苛める俺と言う図を見たのだからな。
「赤志ぃ、お前試験で手ぇ抜いただろ」
「はて?手抜きをしたことは一度もないのですがね?
まあ、実力は隠しまくったけど」
「ソレを手抜き言うんや!」
欄豹は額に青筋を浮かべて怒鳴る。
実力高いと襲われるじゃん。依頼とか俺のほうが選り好みが出来なくなるだろうし、強制的なのって嫌なんだよね。
「まぁいい!今日はもう帰れ!
神埼は医務室行けや!」
「そうですかならば失礼します」
早口でそういい残し、俺は颯爽とその場から消えた。
神埼は手際よくタンカに乗せられて医務室へ直行した。
さぁ、帰って罰ゲーム決めなくてはな…。
「そう思っていた時期が俺にもあったんだよなぁ…」
翌日。
朝に学校へ行ってみれば、神崎の周りを女子が固めており、俺を見つけるなり睨み付けると言った現状がそこにはあった。
聞いた話によれば、昨日の決闘が苛めにしか見えなく、それに伴ってまた何かするのではないかと疑いが浮上したらしい。
まぁ神崎からしたらぼっちの生活が一変して親身になってくれる友人が増えたのだから万々歳だろう。
「あれじゃあただのお子さまだな」
「何よ!こんな小さい子苛めて楽しかったわけ!?」
「Eランクの癖に調子にのるんじゃないわよ!」
「そうよ!きっとまぐれなんだわ!」
と、このように少しでも言葉を発するものなら周りの女子どもが口々に反論を重ねてくる始末である。
よってこのクラスに俺の居場所は無いようなもので、このまま退学に持ち込めるのではないかとつい考えてしまう。
「ユウジ…」
ポン、と肩に手をおかれ、振り返ってみれば武藤の姿が。
「ようこそ、変態のレッテルが張られた俺達の世界へ…」
仕方なく殴っておいた。
「予想の斜め上に行き過ぎだよユウ君…」
教室の入り口ではそんなことを呟いていた理子の姿があった。
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