ソードアート・オンライン~十一番目のユニークスキル~
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唯一無二の不確定因子
第二十三話 思い出(後編)
あれから私は、毎日夕方になると、あの湖のほとりへ通っていた。
彼と会うために。正確に言うならば、遊ぶために。
「リオン、いますか?」
「お、やっと来たか! 首を長くして待っていたぞ。ア・リ・ス!!」
私たちは、待ち合わせも約束もしていない。いや、しなくても互いに来ることが分かっているのかも知れない。その証拠に、湖で遊んだ次の日から、毎日遊び道具を彼は持ってきている。今日もほら。
バシャ!
顔に何か投げられた。同時に冷たい液体に濡れる。顔を手で拭いて、リオンの方を見ると、手に大量の風船のようなものを持っている。水風船だ。
「昨日はよくもやってくれたな!! お返しだ!!!」
彼はそう叫んで、またも水風船を投げてきた。昨日のお返しとはあれのことだと思う。簀巻きにして湖に投げ込んだことだろう。昨日は完膚無きまで叩きのめしたので、最後の追い打ちに手足を縛って湖に放り込んであげた。現実なら色々問題があるが、ゲームの中なのでOKだろうと、思ったが、どうやら彼はお気に召さなかったらしい。
まあ私もただでやられるわけにはいかないので、クイックチェンジで、今日のために用意していた武器を取り出す。つくづく思う、彼とは気が合う。なんせ、私が用意していたのは、水風船に対抗するにふさわしい物だから。そうそれは
水鉄砲
先に言っておくが、現実で子供が遊びで使うような水鉄砲ではない。威力が現実のものとは桁が違う。射程距離は20m近くあり、一回に出る水量も半端ではない。もはや水鉄砲という表記は間違っている。ウォータージェットと言うべきだろう。
私はその武器の引き金を容赦なく引いた。
ズドッ!!!!
水鉄砲の音とは思えない轟音が手元から響いた。飛び出した水は、リオンが投げた風船を貫き、大木に当たった・・・・・・いやそれも貫いた。
・・・・・・・・・・・・
沈黙が二人の間に走る。そしてそれを破ったのは、リオンだった。
「待って!!!! それ何!? なんでイモータルオブジェクト貫けんの!? おかしくないですか、アリスさん!!」
「・・・・・・・・・・・・わかりません!!」
とりあえず私はニコッと笑いながら、続けて引き金を引いた。
「まあゲームだから大丈夫でしょう!!」
「ふざけんな!! 誰だこんなのつくった馬鹿!!!!!」
悲鳴が森に響き渡る。混沌な世界がそこにはあった・・・・・・
◆◆◆
はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・
あれから一時間後。私たちは激しい戦闘によって疲れ果てて、互いに座り込んでいた。
あの後、リオンも撃たれるだけではなく反撃をしてきた。どうやら、簀巻きにして放り投げられたのがを根に持っていたらしく、私が来る前に相当準備をしていた。
それに気づかず、調子に乗って、森の中に逃げ込んだリオンを追った私は、それに見事引っかかった。
本当に根に持っていたのだろう。罠からそれがビシバシ伝わった。飛んでくる丸太、落とし穴、地中に隠した音爆弾、閃光弾、上から降ってくるタライ、水、虫、その他・・・・・・etc
本当によくここまで準備したなと、褒めてあげられるくらいだった。
とまあ、楽しむだけ楽しんだ私たちは、湖のほとりへ戻り、色々なことを話した。また時間を忘れるくらい長く。
でも、そんな楽しい時間に終わりが告げられた・・・・・・彼との本当の意味での別れ。
リオンと話いる最中、電子音とともに、一通のメールが私の元に届いた。開いたそこには――――
「どうした、アリス?」
「・・・・・・明日からあまり、ここに来れなくなるかも知れません」
彼に静かに告げた。メールはアスナから。内容はボスの攻略会議についてと、謝罪をしたいと言うものだった。謝罪をしたいというメールは、前々から数通来ていたが、無視をしていた。居場所も追跡できないようにブロックしておいた。
だが、もう潮時だろう。いくらなんでも遊び過ぎた上に、フロアボスの討伐には、さすがに出なければならないだろう。血盟騎士団という枠組みにある以上、これは義務みたいなものである。その上、これ以上は遊べば、他プレイヤーとの差もでてしまう。名残惜しいが彼と会うことはもう少なくなるだろう。
私は、少し悲しい気持ちで彼を見た。すると
「やっぱ、忙しいよな。まあそろそろ終わりかと思って、今日は大奮発したんだけど、正解だったみたいだな」
予想外の表情と言葉がそこにはあった。そう、リオンは怒る表情でも、不満そうな表情でも、悲しそうな表情でもなく、いつも通りの、楽しそうな表情を浮かべながら、そんなことを言ってくれたのだ。驚きのあまり、なにも言えずにいると、彼は続けてこう言った。
「それでも、またなにか、辛いことがあったらここに来い。そんなことぶっ飛ぶくらい楽しませてやる」
私の頬を、瞳から零れた熱いものが覆った。
やはり、この人は私が抱えていたものに気付いていたのだろう。どうして彼が私の事情を知っていたのかはわからない。もしかすると、顔に出てたのかもしれない。だとしても、彼は深くそのことに触れず、ただ私が楽しく感じるように、嫌なことを一時でも忘れられるようにしてくれていた。
心が熱くなっていくのを感じた。なんだろう。この湧き上がってくるような感情は、不思議と心地が良い。私は、目を閉じてその感情を味わった。温かい、そう感じた時。
手元のウィンドウから電子音が響いた。見ると、そこには。
Rionからフレンド申請が来ています。承諾しますか? YES NO
「それじゃあな、五日間楽しかったぜ。また機会があれば遊ぼうぜ、戦乙女アリス」
リオンはフレンド申請を残し、私の前から去って行った。私は思わず吹き出してしまった。本当によく分からない人だ、どうして、一部の人しか知らない、不本意につけられた私の二つ名をしっているのか。謎は深まるばかり。でも、悪い人ではない気がする。だから、私はYESをタップした。
彼とは会える気がする、またどこかで。
後書き
二十四話目です。今更気づいた。戦乙姫じゃなくて戦乙女でしたねwwww
まあ誤字ですwwww
とりあえず過去編は一旦終了です。次から急展開いきます。多分w
それと、なぜリオンがアリスの事情と二つ名を知っていたのか、この後どうやってあったのかは、は後々書きます。今は気にしないでください(笑)
指摘、感想お待ちしております。
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