ザンネン6……何か悪いの?
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七話
◇マヤ
私が戦闘地域に入ると見えたのは白いと黒い《ウルガル》機に攻撃されているところだった
「≪レッド5≫!≪ブルー1≫!≪ゴールド4≫!私が黒いのを殺ります。白いのは任せます!」
『お、おい、マ………』
通信でアサギが私を止めようと声をかけるが最後まで聞かずに通信を切っり、黒い機体に向かった。
「―――――!?」
「ハアァァァァァ!」
突撃用ガトリングの射程圏内に入った黒い機体に向け、≪ブラック6≫は容赦なくトリガーを引いた。
ガトリングの弾幕は、「ウルガル」の量産機程度なら一掃できるほどの威力と数を誇る。しかし
「――――!」
「えっ!?」
弾幕は全て避けられ、反撃をしてくる。
私は予想外に口に出してしまうが被弾しないように回避する。
「くっ……遠距離戦はダメ……なら!」
私はガトリングをパージし背中についている対艦刀「シュベルトゲベール」を両手で持ち斜めに斬りかかった。
だが、黒い機体は、左腕から発生させた白いエネルギーのレーザーブレードを以ってその一撃を受け止めると、右腕の袖部分から覗く銃口を、≪ブラック6≫のヘッドに向ける。
「くっ!」
銃口から弾丸が吐きだされる一瞬前、≪ブラック6≫は左腕に付いてるロケットアンカー「パンツァーアイゼン」で銃口を撃ち抜き銃口は暴発、相手にダメージを与えることができた。
≪ブラック6≫と黒い機体は、最早一つの閃光となって宇宙を飛び回っており、この戦闘を見ているパイロットではない人間は、二機が通り過ぎた後の姿しか視認できずにいた。
そして、二機の速度はついに亜光速に達し、本物の閃光と化す。
周囲が流れるように過ぎていくなか、それでも私は冷静さを失わず、むしろいつも以上の思考速度と判断力で的確に行動し、徐々にだが敵機に傷を負わせていく。
いつまでも拮抗するかと思われた勝負だが、その均衡は、白い機体が≪レッド5≫の攻撃で掠り傷を負ったことにより、変化する。
「――――」
突如黒い機体は武装を収めると、飛行機のような姿に変形し、白い機体の元へと飛んでいく。
白い機体と接触する寸前。両腕の袖部分の銃口から弾丸を発射して通信衛星を破壊すると、白い機体を回収してウンディーナから離れていった。
「撤退……したの?」
既にエネルギーを使い果たした≪ブラック6≫は無理な戦闘で関節部分から火花がちらし止まる
「あの機体、なんなの?」
私は黒い機体の去った方角をヘルメット越しに睨みつけていた。
◇
任務が結果的に失敗に終わり、沈鬱とした表情のチームラビッツは、ズーンとした暗い雰囲気を纏ったまま、ゴディニオン内のラウンジに入った。
「よく無事に戻ってきたわ~」
沈んでいたチームラビッツを迎え入れたのは、緑色の作業着を着た黒髪の、陽気そうな雰囲気の女性だった。
女性の目の前にはグラスがあり、その中身は酒だ。
だが、迎えてくれた女性の雰囲気と裏腹に、チームラビッツは陰気な表情を浮かべるばかりだった。
「でも……通信衛星が……。僕達、何もできませんでした……」
と、珍しく沈んだ様子のイズルが言う。
今回の任務は完全に遭遇戦。いや、ゲリラ戦と呼ぶべき状況だったので、むしろ装備が整ってない状態で全員生き残れたことを喜ぶべきなのだ。
「ピットの人間はね」
作業着を着た女性は、酒の匂いを放ちながらイズルに近づくと、肩をポンと叩く。
「機体が壊れて戻ってくるより、人間が壊れる方が堪えるのよ」
まぁ、もうちょっと機体も可愛がってあげてほしいけど。と、作業着姿の女性は、冗談めかした様子で付け加えた。
「あの≪アッシュ≫達には、あなた達のDNAが組み込まれている。謂わばもう「一人の自分」なのよ」
そう言って女性は、イズルの頭を撫でると
「西園寺 レイカ。整備長よ。皆は「おやっさん」って呼ぶケド」
ウィンクを加えて、イタズラ好きな子どものような表情で名乗った。
「「おやっさん」?」
「酒臭っ」
「酔っ払いら~」
「今休憩中だも~ん」
「じゃぁ、俺もなでなでしてください~!」
作業着姿の女性――レイカと話していくうちにいつもの調子を取り戻したチームラビッツに、少しずつ笑みが戻っていく。
「西園寺整備長」
突如背後のドアが開くと、そこにはスズカゼが腰に手を当てて立っていた。
「お~う。リンリン~。後で飲まな~い?」
「その名前で呼ばないで。それに、酒癖の悪い人とは飲みたくない」
「え~?」
バッサリと切り捨てるスズカゼに、レイカが拗ねたように言う。
そんなレイカの反応にため息を吐くと
「お疲れ様。とりあえず休みなさい。何も気にしないで」
珍しいスズカゼの気遣うような言葉にイズル達は顔を上げると、その時には既に二人はラウンジから出ていた。
続く
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