ソードアート・オンライン 蒼藍の剣閃 The Original Stories
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ALO編 Running through in Alfheim
Chapter-12 妖精の世界へ
Story12-7 旅の始まり
第3者side
リーファがチューブから風の塔の最上部にあるデッキに飛び出すのに続いて、キリトもエレベーターを降りた。
そこから広がる大パノラマは眺めが良く、シルフ領から西側はしばらく草原が続いたあと直ぐに海岸となっており、その向こうに無限の大海原が青く輝いている。
東には深い森がどこまでも連なり、その奥には高い山脈が薄紫色に連なっていた。
その稜線の更なる彼方には、ほとんど空と同化した色で、一際高く聳える影が見える。
それが世界樹…………アスナが囚われている場所。
「うお……凄い眺めだな……」
降りてきたキリトが、眼を細めてぐるりと周囲を見回した。
「空が近いな……手が届きそうだ……」
「でしょ。この空を見てると、ちっちゃく思えるよね、いろんなことが」
また、リーファが唐突につぶやいた。
「……いいきっかけだったよ。
いつかはここを出ていこうと思ってたの。
でも一人じゃ怖くて、なかなか決心がつかなかったんだけど……」
「そうか……でも、なんだか喧嘩別れみたいな形にさせちゃって……」
「あの様子じゃ、どっちにしろ穏便には抜けられなかったよ。
でも……なんで……」
リーファはぽつりと独り言のように呟いた。
「なんで、ああやって、縛ったり縛られたりしたがるのかな……
せっかく、翅があるのにね……」
それに答えたのはキリトではなく、服のポケットに入っていたユイだった。
「フクザツですね、人間は」
ユイはしゃらんと音を立てて飛び立つと、キリトの肩に着地し、小さな腕を組んで首を傾げる。
「ヒトを求める心を、あんなふうにややこしく表現する心理は理解できません」
リーファはきょとんとし、ユイの顔を覗き込んだ。
「求める……?」
「他者の心を求める衝動が人間の基本的な行動心理だとわたしは理解しています。
故にそれはわたしのベースメントでもあるのですが、わたしなら……」
ユイはそっとキリトの頬に手を添えると、屈み込んで音高くキスをした。
「こうします。とてもシンプルで明確です」
呆気に取られて目を丸くするリーファに、キリトは苦笑する。
キリトはそのまま指先でユイの頭をつついた。
「なあ、ユイ。人間界はな、もう少しややこしい所なんだ。気安くそんな真似したらハラスメントでバンされちゃうよ」
「手順と様式ってやつですね」
「……妙なことは覚えないでくれ」
キリトが苦笑いしている。
やり取りを呆然と眺めていたリーファが口を開いた。
「す、すごいAIね。プライベートピクシーってみんなそうなの?」
「こいつは特にヘンなんだよ」
キリトは自分の肩にいるユイの襟首を摘み上げると、胸ポケットに放り込む。
「そ、そうなんだ。
……………人を求める心、かぁ……」
リーファはユイの言葉を繰り返しながら、かがめていた腰を伸ばした。
夜明けの光を受けて金色に輝いていた雲もすっきり消え去り、深い青がどこまでも広がっている。
展望台の中央に設置されたロケーターストーンという石碑を使って、キリトに戻り位置のセーブをさせると、リーファが4枚の翅を広げて軽く震わせた。
「準備はいい?」
「もちろん!」
ユイもおおー!と同調し、いざ離陸しようとした瞬間。
「リーファちゃん!」
エレベーターから転がるように飛び出してきた人物に呼び止められ、リーファは僅かに浮いた足を再び着地させた。
「あ……レコン」
「ひ、ひどいよ、一言声かけてから出発してもいいじゃない」
「ごめーん、忘れてた」
漫才のコントのように肩を落としたレコンは、気を取り直したように顔を上げると、真剣な顔で口を開く。
「リーファちゃん、パーティー抜けたんだって?」
「ん……その場の勢い半分だけどね。
あんたはどうするの?」
「決まってるじゃない、この剣はリーファちゃんだけに捧げてるんだから……」
「えー、別にいらない」
リーファの言葉に再びレコンはよろけたが、この程度で彼はメゲなかった。
「ま、まあそういうわけだから当然僕もついていくよ……と言いたいとこだけど、ちょっと気になることがあるんだよね……」
「……なに?」
「まだ確証はないんだけど……少し調べたいから、僕はもうしばらくシグルドのパーティーに残るよ。
……キリトさん」
レコンが真面目な顔で此方に向き直る。
「彼女、トラブルに飛び込んでくクセがあるんで、気をつけてくださいね」
「あ、ああ」
「それから、行っておきますけど彼女は僕の……ンギャッ!」
「余計なこと言わなくていいの!
しばらく中立域にいると思うから、何かあったらメールでね!」
レコンの言葉を強制終了させたリーファが早口でまくし立て、翅を広げてふわりと浮き上がった。
名残惜しそうな顔をするレコンに向かって、リーファは大きく右手を振った。
「……あたしがいなくても、ちゃんと随意飛行の練習すんのよ。
あと、あんまりサラマンダー領に近づいたらだめよ!
じゃね!」
「リーファちゃんも元気でね! すぐ追いかけるからねー!」
と飛び立ったリーファに涙を浮かべて叫ぶレコン。
キリトが口を開く。
「彼、リアルでも友達なんだって?」
「……まあ、一応」
キリトの胸ポケットからユイが口を開いた。
「あの人の感情は理解できます。
好きなんですね、リーファさんのこと。
リーファさんはどうなんですか?」
「し、知らないわよ!!」
リーファが大声で叫ぶと、きっと照れているのだろう彼女は隠すようにスピードを上げる。
先を行くリーファが、森の縁に差し掛かったところで、体を反転させた。
恐らく、スイルベーンに別れを告げているのだろう。
追いついたキリトに、彼女は再び向き直る。
「さ、急ごう!1回の飛行であの湖まで行くよ!」
遥か彼方にきらきらと輝く湖面を指差し、リーファが思いっきり翅を鳴らしたのだった。
Story12-7 END
後書き
はい! Chapter-12 終わり!
キリトに始まりキリトに終わるChapter-13はコラボ編の後ですね。
シャオン「次回からコラボ編!
次回も、俺たちの冒険に! ひとっ走り……付き合えよなー!」
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