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英雄は誰がために立つ

作者:昼猫
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Life7 正義の味方

 
前書き
 レイヴェルではありませんよ?レヴェルです。 

 
 この世界には表裏問わず、様々な組織や結社が有る。
 そこに今、神や魔王、ドラゴンや英雄の末裔、天使や悪魔、聖獣や魔獣等が跋扈する裏の世界において、様々な膿や反対勢力が自然と集っていくテロ組織集団が有る。
 そのテロ組織集団に協力する結社が有った。

 その名を伏羲(ふくぎ)と言う。

 中国神話に登場する『三皇』の一柱である、神または伝説上の帝王の名から取った結社だ。
 しかし、この伏羲と言う結社。規模や思想、目的は勿論、構成人数だけでは無く更には首領の素顔も不明と言う、謎だらけの集団だった。

 いくらそのテロ組織が力をより多く欲しているからと言って、そんな集団はとても信じられないだろう。本来であればだが。
 そのテロ組織は実は一枚岩では無く、複数の派閥が存在しており現時点で一番規模の大きい派閥のリーダーと伏羲の使者が随分と親しい間柄と信頼が有る故に、協力体制もしかれていたのだ。

 その使者の名はレヴェルと名乗り、銀と言うよりグレーの髪をして左目に眼帯をしている老執事だ。

 そのレヴェルとテロ組織の最大派閥たるリーダーが、所作位置不明の屋敷の屋内で密談をしていた。

 「レヴェルよ。これが例のモノか?」
 「はい。これこそが――――」


 -Interlude-


 「――――来たわよ!ゼノヴィアー!!」

 本日の駒王学園高等部は、親御さんが見学できる授業参観及びこの学校の特徴などを観察できる公開授業日だ。

 そこで今日、一誠やアーシアにゼノヴィアも席を置いている教室の外である廊下から、アイリスフィール・藤村が夫である藤村切嗣を引き連れて来た。

 「ゼノヴィア?あの人達が、下宿先である藤村先輩のご両親なの?」
 「ああ!家族同然の様によくしてもらっているよ」

 アイリスフィールは子供に対して非常に愛情深く、最初こそはちゃん付けではあったが、今では呼び捨てになり本当の娘同然に思っていた。
 施設で育ち、血の繋がらない兄弟姉妹が多くいたゼノヴィアだったが、親と言うモノは知識の中でしか知らなかったため、彼女にとってアイリスフィール及び切嗣は非常に稀有な存在で尊いモノになっていた。

 「私なんかのために態々来て頂いて、すいません」

 アイリスフィール達の下へ駆け寄るゼノヴィア。

 「何かなんて言葉で自分を貶めたらだめでしょ!ゼノヴィア!それにそこは、有り難うでしょう?貴女は既に、藤村家の一員なんだから!ねぇ?切嗣」
 「そうだね、アイリ」

 2人の注意により、慌てて謝るゼノヴィア。

 「ごめんなさ・・・ごめん。アイ・・・リ・・・さ・・ん」
 「気にしなくていいのよ。って、如何したの?」

 ゼノヴィアの視線の先には、アイリスフィールの後ろに居る切嗣の持つ大きなアタッシュケースに目が行っていた。

 「アイリさん、切嗣さん。そ、それは・・・?」

 畏怖した訳では無かったが、何か嫌な予感がしたゼノヴィアは意を決して尋ねた。

 「おぉおお?流石はゼノヴィアだ!いいところに気が付くね?」

 (いや、あんなに大きいのだから普通は誰でも目が行くと思いますよ?切嗣さん)

 と、内心で思ったが口には出さなかったゼノヴィア。
 そんな彼女の心の内を知らずに、実に活き活きした顔でビデオカメラを取り出す切嗣。

 「これはね、この日のために一昨日購入したばかりの最新式のビデオカメラさ!と言っても、最新式にも色々合ってね?それでこのレンズ―――――――――」

 語りだす切嗣。

 「切嗣は語ると暫くの間止まらなくなるから、今の内に引き戻さないといけないわね。切嗣!いい加減に戻って来て!」

 ドゴッ!

 思いっ切り旦那の頭を殴る妻。

 「―――――それでこれ痛ッ!?って、あれ?如何して殴るんだい、アイリ?」
 「そうしないと語りが止まらないからでしょう?」

 そんな2人が和気藹々?している処で、ゼノヴィアが有る事に気付く。

 「切嗣さん、最新式ビデオカメラ(それ)一台入れてきたにしては大きくありませんか?そのアタッシュケース」
 「ん?おお!またまたよく気づいたね!もしものためにと、12台全部持って来たのさ!!」

 嬉々としてずらずら同じ最新式ビデオカメラを出していく切嗣。

 「・・・・・・・・・・・・・・・もしかしてこの日のために12台も買ったのですか?」

 恐る恐る聞くと・・・。

 「うん、そうだよ。何かおかしかったかい?」
 「・・・・・・ぅ」

 軽い頭痛に襲われるゼノヴィア。しかも、あっけらかんと言った。
 しかし、そこで軽い頭痛に苛まれながらも、あることに気付く。

 「っぅ・・・・・・・・・切嗣さん、12台と言うには・・・・・・4台足りませんけど?」
 「え?あー、もしかして足りていないことに不安にさせてしま『あっーー!?』・・・ん?」

 同じく廊下の方に居たとある夫婦が悲鳴を鳴り響かせ、それを聞いた人達の皆の視線を独占した。
 よくよく見れば、そこには一誠とアーシアもいた。恐らくは、一誠の両親なのだろう。

 「あの2人は兵藤さんたちね」
 「ああ、何か重大な事が起きた様だけど・・・・・・如何したんですかー?」

 見なかったことにせず、敢えて聞きに行くのは興味心では無く切嗣の人の好さ故だろう。

 「え?あぁー!?藤村さん、お久しぶりです」
 「こちらこそお久しぶりです。それで何かあったのですか?」

 切嗣に促された一誠の父は、困り顔を浮かべながら話し出す。

 何でも、バッグに入れた筈のビデオカメラを何所に置いてきたか、忘れてきてしまったらしい。
 この事実に、一誠の母も頭を抱えていた。
 それはそうだろう。今日の授業参観のために有給まで取ってきたのだから。
 しかもなんと言っても、アーシアの晴れ姿を映像記録として納め(一誠(実子)?そんなものどうでもいい!)られるこの日をどれだけ待ちわびた事か、と言うのが兵藤夫婦の本音だろう。

 この事実に、一誠(実はどうでもいいし、あったとしても単なるおまけ程度)は親の死角でガッツポーズを取った。しかし、今日と言う日は親達こそが運気を持っていた!

 「でしたら、私が何かあった時のためとして多く持ってきた予備をお貸ししましょう」
 「え?い、いいのですか!?(←切嗣が救世主に見えている)」
 「な、なにぃぃぃぃ!?」

 運がこちらに向いてきたかと思いきや、風雲急を告げる展開に思わず驚愕する一誠。

 「ええ!こういう時はお互い様でしょう。お互い可愛い子供たちの晴れ姿を映像記録として納める事に全力を尽くしましょう!(←力説)」
 「はい、そうですね・・・。お互いに全力を尽くしましょう!」

 両手で互いに握手しあう中年男性2人。
 そして、2人の死角にて絶望している一誠。ぬか喜びであった。

 「あっ!そう言えば、兵藤さんもご一緒しませんか?実は今夜――――」


 -Interlude-


 「――――と言う理由で今夜、藤村家にてこれから撮る映像の鑑賞及び親睦会をやろうと言う事に成ってね。この流れから恐らくは兵藤さんの家も誘うだろうからよろしくお願いするよ、士郎君」

 最新式のビデオカメラを片手に持ちながら、士郎とリアスと朱乃に説明するリアスの父ことグレモリー卿。後ろでは、入念にビデオカメラの操作方法を確認しているサーゼクスの姿が有る。

 因みに、2人の持っている最新式のビデオカメラは切嗣が貸した2台で、一応予備としてもう2台貸りているらしい。そもそも、グレモリー卿もサーゼクスも自前のカメラを持って来ていたのだが、いかんせん楽しみにし過ぎてビデオカメラと言う案を失念していたらしい(グレイフィアは気づいていたが、せめてものリアスへの情けと言う事で黙っていたらしい)が、そこで受付である玄関先であった藤村夫婦と邂逅してビデオカメラを貸してもらったらしいのだ。

 「そん・・・な・・・」

 実父であるグレモリー卿の説明したイベントに絶望するリアス。
 そんな鑑賞会もあるだろうと予想していたからこそ、リアスは2人が来ることが嫌がっていた。
 しかも、それが知り合いの家かつ何度も遊びに行った事が有る家とは言え、流石に遠慮(一誠の家も他人の家だと思うのだが)してしまうのでイザという時に、逃亡先を失ってしまうのだ。

 同情するように、朱乃がリアスの肩にポンッと言う音ともに片手を置く。
 そんな2人から視線を外しグレモリー卿と話を続ける士郎。

 「それは構いませんが・・・・・・だとすると、食材を多めに買いに行かないといけないな」
 「それは大丈夫らしいよ?正直申し訳ない話だが、食材調達のために藤村組の食材を仕入れるルートから、仕入れてくれるらしいから」

 士郎の考えに、ビデオカメラの入念なチェックをしていたサーゼクスが、切嗣から聞いた事を答えた。

 如何やらこの流れは確定の様で、サーゼクスとグレモリー卿(グレモリー男親子組)は今日のスケジュールに胸を弾ませてビデオカメラの再確認に2人して入った。
 その光景に、リアスには一縷の望みも無いようだと理解した士郎は、彼女に深く同情した。


 -Interlude-


 現在は昼休み。

 午前の授業を昇華して、いったん休憩の様だ。親子ともども。

 そして士郎は今、生徒会室に居た。他に4人ほどいるが、全員が純潔の悪魔だ。

 1人は我らが魔王様、サーゼクス・ルシファー。
 1人はその従者で妻であるグレイフィア・ルキフグス。
 1人は現在のこの部屋の主を正式に学校から任されている生徒会長、ソーナ・シトリー。
 そして最後の1人がソーナの実姉にして魔王の1人でもある、セラフォルー・レヴィアたん――――レヴィアタンである。

 「初めまして、レヴィアタンさm「ストォ――――プッ!」・・・はい?」

 会談前にセラフォルー・レヴィアタンにも正体を明かして自己紹介をしようとした矢先に、本人から止められた。

 「そんなぁ☆堅苦しぃ呼び方じゃなくてぇ☆レヴィアたん☆って呼んでね?し・ろ・うちゃん☆☆」
 「は、はぁ・・・・・・」

 あまりのキャラぶりに困惑する士郎。事前に聞いてはいたが、これは色々あまりに・・・。

 「ハァイ☆それじゃ、ドーゾ☆」
 「え・・・・・・」

 此方に促すように掌を上に向け、前に突き出すようにするレヴィアたん。

 「Sa~~~~~~~~~y☆」(Sayとは、「さぁ!」と言う意味です)
 「いや、その」
 「Sa~~~~~~~~~y☆☆」
 「あの、その」
 「Sa~~~~~~~~~『ガシッ』ん?」

 後ろからにこやかな笑顔を浮かべたままのサーゼクスと、何時もの様にきりっとした表情のソーナの2人で、セラフォルーの両肩を掴む。

 「いい加減にしてください、お姉様!」
 「士郎君が困っているじゃないか?からかうのはその辺にした方が良いと思うよ?」
 「からかうなんて人聞きが悪いなぁ?でも、ちょっと急ぎ過ぎちゃったみたいぃ~☆レヴィアたん、反省☆」

 てへりなどと、舌を少し出して片目を瞑る等と言うお決まりなポーズをするレヴィアたん。

 2人の執り成しで、漸く自己紹介をできた士郎。

 「――――ホントにアリガト☆士郎ちゃん☆おかげで皆ハッピ、ハッピーだよぉ☆」
 「いえ、当然の事をしたまでです。それにサーゼクス様――――」

 士郎の視界内に入っているにこやかなサーゼクスの笑顔に、少々黒味が出た。

 「――――サーゼクスさんの頼みでもありましたから(チラッ)」

 セラフォルーと話しながらサーゼクスをチラ見してみると、普通の笑顔に戻っていた。
 そんな我が主であり夫のサーゼクスを見て、嘆息するグレイフィア。

 サーゼクスは公的な場なら兎も角、私的な場では出来れば砕けて話してほしいと言うのが本音だった。それに、出来れば友人として呼び捨てにしてほしいとも思っている。しかし、それを強要する事は無い。

 「士郎は基本的に万能だけど、いざという時も頼りになるんだよ!」
 「はい、士郎()は本当に頼もしかったです。白龍皇が訪れてきた時も・・・」
 「そっか~~☆うん?」

 ここにきてあることに気付くレヴィアたん。
 自分の愛すべき妹、ソーナ・シトリーは男の部下でも(上司や年上には勿論敬語)君読みだろうと下の名前だけで呼ぶことは無かったはず。
 にも拘らず妹は今、藤村士郎()の事を・・・。これは至急確認が必要だ。

 「ねぇ?ソーt――――ソーナちゃーん☆」
 「はい、何でしょう?お姉様」

 愛称で呼ぼうとしたが、恐らく取り繕ってくれないだろうと判断し修正するセラルフォー。

 「今士郎ちゃんの事を、下の名前で君付けで呼ばなかった?」
 「?はい、それが如何かしましたか?」

 実姉の疑問に、素で答えるソーナ。

 如何やら自覚がないようだ・・・。これでは埒が明かない。ならここは大本の藤村士郎(原因)に忠告をしましょう★

 「ねぇ、士郎ちゃん★」
 「な、何でしょう?」

 語尾に影がかかった様に感じられた士郎は、思わず警戒する。

 「もし、私の可愛いソーナちゃんに手を出したら、塵芥に変えちゃうかもしれないから気を付けてね★――――」
 「!お、お姉様、一体何を!?」

 唐突な姉の言動と態度に、困惑と驚愕を同時に露わにするソーナ。

 「――――なぁーんて、冗談だぁよぉ☆」
 「ハハハハ、嘘はいけないよセラフォルー。今、君の瞳、完全に笑っていなかったじゃないか」
 「ぶーー★そんな事ないよ☆」

 危険な言動をした後に、直に掌返しをするセラルフォーに、にこやかな笑顔のまま追撃を掛けるサーゼクス。

 そんな魔王方のじゃれ合いの中、士郎は冷や汗ものだった。それに・・・。

 (如何して俺が遭遇する女性は、セラフォルー(こんな)に攻撃的な人が多いんだ!?)

 と、意味などないが虚空を睨んだ士郎。
 そんな士郎に近づくグレイフィア。

 「――――ご愁傷様です(ボソリッ)」

 士郎の耳元で呟いたのがその一言だった。本当にその通りだった。


 -Interlude-


 「あら!アーシアちゃん、よく映ってるわ」
 「ハハハハ!やはり娘の晴れ姿を視聴するのは親の務めです!」

 今現在、士郎は藤村邸の台所でグレイフィアと共に、夕食のメインや酒のつまみの調理の真っ最中だった。

 そして襖や障子を外して部屋を広々と使える様にした上での和と洋を併せ持ったリビングルームでは、富豪クラスが使っていそうな巨大な液晶テレビの目の前で、今回の授業参観のために来た保護者達が各々が熱心にと撮影した映像をテレビ画面に映して楽しんでいた。因みにテレビは2台ある。

 そして、主役たちはと言うと――――。

 「早く終わって!早く終わって!早く終わって!早く終わって!早く終わって――――」
 「俺の事まで撮ってたのかよぉっっ!」

 部屋の隅っこにて、顔を赤くさせながら恥辱に耐えていた。
 だが、この地獄を耐えているのはリアスと一誠(2人)だけでは無かった。

 「こ、これは、魔女狩りでよくある公開処刑か何かなのか・・・・・・!?」
 「早く終わって下さい!早く終わって下さい!早く終わって下さい!早く終わって下さい!――――」

 ゼノヴィアとアーシアも顔を赤面させて、この恥辱に耐えていた。
 そもそも2人は、最初は何故このリアスと一誠(2人)はこんなにもこの上映会を嫌がっているのか首を傾げて、不可思議でしかった無かったとか。
 そして、上映会が始まった頃は気恥ずかしさから照れる位だったが、徐々にリアスと一誠(2人)と同じ様になったとさ。

 現にゼノヴィアのケースに至っては――――。

 「背筋をピッとさせて何という凛々しい姿!よくぞここまで立派に育ってくれて、僕は嬉しくて(にゃみじゃ)止まらないよ(どばりゃりゃいりょ)ぉぉぉうぅぅぅ」(←一つ屋根の下の共に暮らすようになって、まだ一月も経過してない)
 「もう!切嗣ったら、涙もろいんだからぁ(ホロリ)」(←もらい泣き)

 と言った感じだった。

 普段からも世話になり始めたが故、文句や抗議の一つも言えやしない。まさに耐えるしかないゼノヴィアだった。

 だが、この恥辱に耐えて居たのがまだ2人も居たのだ。
 その一人が――――。

 「――――油断しましたわ・・・。まさか、私の事まで撮っていたとはっっ・・・・・・」

 朱乃だった。
 授業参観が始まるまで、自分は関係ないと思い込んでいたからこそ心にゆとりがあったし、リアスにも同情する余裕もあったのだ。
 それが・・・それが・・・。

 「ハハハハ!当たり前じゃないか。朱乃君もすでに家族当然!ならば君の成長記録を取るのは現グレモリー家当主の義務であり責務であり権利なのさ!!」(←片手をグーにして力説する)

 彼女の呟きを耳聡くも聞き取っていたグレモリー卿は、ハイテンションのまま答える。実に愉快そうだ。

 そして――――。

 「・・・ぁぁぅぉぁっぇ、ぁぁぅぉぁっぇ、ぁぁぅぉぁっぇ、ぁぁぅぉぁっぇ、ぁぁぅぉぁっぇ――――」

 最後は何と・・・・・・・・・誰?
 では保護者の方を見てみましょう。

 「キャッワィイイ☆あのきつめの表情も!的確過ぎる答えも♪ゥウオォオオォゥルッッ、プァアフェェエクゥツぉおおお☆!♪」

 何とそこに居たのは居てはいけない魔法少女、セラフォルー・レヴィアたんその人だった。
 では、赤面になりながらも呪詛?を呟きながらプルプルと震えている美少女は、名前を出さずとも判るだろう。

 因みにあの呪詛の様な言葉は、「早く終わって」の母音の小文字版だ。小さく呟く様だから僅かしか聞こえないのだ。
 もう一つ因みに彼女の『女王(クイーン)』である真羅椿姫は、臨時現料理長、藤村士郎と補佐兼給仕役のグレイフィア・ルキフグスの更に補佐を務めていた。
 つまり、その役である大義名分を得た上で、『(キング)』たる主人を迷い躊躇もせずに即座に見捨てたのである。

 そんな中、この男もハイテンションでこの空気を楽しんでいた。

 「見てください!うちのリーアたんが先生に指されて答えているのですっっ!!」

 画面いっぱいにまで映像を集中的にまでアップにして、興奮する我らが魔王サーゼクス・ルシファーがいた。
 しかし、あまりにも興奮し過ぎた様子が遂に彼女のリミッターをオーバーさせるに至った。

 「もう、耐えられないわ!お兄様のおたんこなす!」
 「あっ!待ってください、部長!?」

 精神面の恥辱耐久メーターを遂に振り切ったリアスは、そんな興奮する兄に向けて捨て台詞を残すように、士郎から事前に通された客間に避難しするために離れた。
 そして、それを慌てて追う一誠。

 スパァッッン!

 そんな興奮したサーゼクスを止めて収拾を付けるため、たまたまリビングに来ていたグレイフィアが藤村家愛用の虎柄のハリセンを拝借して後頭部から一気に叩き付けられた。実にいい音がした。

 そして、此方でも事態は動き出す。

 「ねぇ、切嗣ぅ?」
 「な、何だい、アイリ?」

 急に声音に影が差したのを感じ取った切嗣は、恐る恐る尋ねる様に先へと促す。

 「さっきから、グレイフィアさんやセラフォルーさんにデレデレしちゃって、そんなの私をヤキモキさせたいのかしら♡?」
 「な、なんでさ!?」

 あまりの急展開におどおどする切嗣。
 そんな夫の態度に酒の助け?もあってか、加速度的に機嫌を斜めにするアイリスフィール。

 「もう切嗣って人は、何所まで女性と関係を作れば気が住むのかしら?これはもう、汚死悪棄♡するしかないわね♪」
 「なんでそうなるのさ!?僕が愛しているのは生涯君だけだと言うのにどうして信じてくれないんだ!」

 風雲急を告げる展開に必死に説得を試みる切嗣。
 そこに、リビングに顔を出した士郎の姿を眼に入れる切嗣。

 注:ここからの()の間は切嗣と士郎によるアイコンタクトによる会話内容です。

 リビングに顔を出した士郎は、瞬時に自分を見ている人物と目が合った。

 (士郎!僕を助けておくれ!)
 (如何したんだ、父さん?・・・・・・いや、言わなくても解った)
 (ほ、ホントかい!?)

 自分の事にはめぐりの悪さを呪いたくなるくらい鈍感なこの男藤村士郎は、他人の事となれば出鱈目なレベルで観察眼に優れているのだ。この事で、どれ程の人を助け、どれ程の女性を泣かせてきたか。

 「母さん」
 「ぅん?なぁにぃ、士郎?私は今、これから切嗣と大切な折檻(O☆HA☆NA☆SI)をしなければいけないのよ?後にしてくれないかしら?」
 「その事で母さんに話があるのさ」

 (士郎!)

 今この時切嗣にとって士郎は、誰でもない正義の味方に見えた。

 「ん?」
 「離れにある俺の部屋が一番防音も効いているから、そこで折檻(やる)といいよ」

 (し、士郎ぉぉぉぉおおおおお!?)

 事態はそのままに落ち着いた。

 「流石は私のかわいい息子ね♪」

 ガシッ。

 首根っこを掴まれる切嗣。

 「ま、待ってくれ、アイリ!?」
 (ど、如何いう事だい士郎!?事態が改変するどころか悪化してるんだけど!)

 士郎への自室、ドナドナ開始5秒前。

 (父さん、正義の味方と言う存在は幻想の上、単なるエゴイストでしかないのさ)

 ドナドナ開始4秒前。

 (それと、僕を見捨てる事と一体何の関係が有ると言うんだっっ!)

 開始3秒前。

 (そのエゴイストのなれの果ての行動を知っているかい?)

 2秒前。

 (だから!それが一体――――)

 1秒前。

 (全てを救うことが出来ないのであれば、十の中の藤村切嗣()だけを全力で切り捨てる事で多くを救う・・・つまりはそういう事さ)

 カウント0、つまりは死刑執行のための連行開始!

 「さぁ、逝くわよ♪き・り・つ・ぐ♡」

 ドナドナ~~~~。

 (し、士郎ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおお!!!?」

 号泣しながら自分を見捨てた息子への怒りを、慟哭に変えたまま引きずられる切嗣。
 そんな両親の姿を手を振って笑顔で見送る士郎。

 「あっ!母さん、血飛沫は勘弁してね」
 「任せなさい!その位は心得ているわ!~~~♪」
 「い、いいんですか?」

 アイリと切嗣が居なくなったことにより、解放されたゼノヴィアが問う。

 「大丈夫だ。母さんも武術にはある程度心得もあるし、上手くやるだろ」
 「そうなのですか・・・って、切嗣さんの方ですよ!怒ってたじゃないですか!?」
 「そっちも心配ないよ。戻ってきたころには心身とも弱り切ってるだろうから、そこで気絶するくらいまで酒を飲ませれば明日には忘れているさ」
 「・・・・・・・・・・・・・・・」

 もはやゼノヴィアにはいう事は何もなかった。
 そして今も直、解放されていない朱乃とソーナとアーシアの赤面地獄は続いていた。


 因みに、大学のサークルの付き合いでやっと帰って来たイリヤが、まず始めに眼前に飛び込んできたのは、鼻歌をしながら夫を引きずる実の母と奇声を上げつつ号泣したまま引きずられて逝く実の父だった。
 そんな光景を見れば常人ならば驚くなりの反応をするところであろうが、当のイリヤは「何時もの事ね・・・あっ!いい匂い♪」と浮かれ気分でリビングに向かうのだった。

 もう一つ因みに、例の居候の視界にも例の光景が入ってきたのだが、士郎に作ってもらった塩ラーメンを食べながら・・・。

 【平和な家庭だ】

 と、思ったそうだ。


 -Interlude-


 所在不明の屋敷にて、レヴェルとテロ組織集団最大派閥のリーダーの目の前の魔法陣の上に青白い肌に汚れた金髪、そして全身に拘束具を纏った巨漢がいた。

 それに対しレヴェルは・・・。

 「――――“英霊”です」 
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