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世にも不幸な物語

作者:炎花翠蘇
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第七章『外界人集合』

 白玉楼から屍馬を走らせて約十分。妖夢から貰った地図を頼りに博麗神社を目指す。ちゃんとした道を行けば身の安全は保障されるのだがそれだと時間内にたどり着かないので輝は死に物狂いで道なき道を走っていた。
「ぬぉぉおおおっ!あ、べとべとさんだ。触ってみて~」
 道なき道に入ってから高確率で妖怪に出会う。釣瓶火(つるべび)、ぬっぺふほふ、化けぞうり、手の目等々。本来ならば驚いて怖い思いをするのだが輝は関係なかった。なぜなら妖怪が好きだからである。
程なくして整った道が見えてきて道のりに進んでいくと、
「たしか地図だとこの辺だけど・・・ん?あれかな」
 今まで一本道だったのに突き辺りが見えてきた。地図によればこの突き辺りに行くと博麗神社は直ぐそこだ。
 地図の通りに曲がり、目の前には石の階段が上まで続いていた。
「このまま突っ切る!」
 屍馬から降りずにそのまま駆け上がった。直ぐにあの二人に会いたい。早く会いたい。今直ぐにでもあの二人をコロシタイ・・・。
 階段の終わりが見えた。輝は勢いに任せて屍馬を走らせ跳んだ。
「お」
「ん?」
 二人は直ぐに見つけた。のんびりとお賽銭箱の前に座っていた。
 今の輝は憎しみと怒りに満ちていた。風と零には能力は無い。今なら殺れる。
「我こそは、地獄より蘇ったワイトキングNEO/バスター!今ここで貴様らを地獄に叩き込んでやろうっ!」(注意;やけになっています)
「あいつ変わった?」
「いや、凄い妬みでパワーアップした輝だ」
「どこのパルシィだ」
「HAHAHAHAHAHA!レッッツァァパァァァァァリィィィイイッ!!」
「いや。むしろ壊れたか?」
「かもしれん」
 二人目掛けて屍馬を走らせた。当然の如くひき殺す勢いで。
「よし。止めろ!風!!」
「俺が止めるのかよ!」
「お前がどうなろうと、俺は構わない(グッ!)」
「おい!ったく面倒だな・・・」
 風は面倒くさそうに立ち上がり、左手を挙げた。
「はぁぁああああっ!」
 輝が突っ込む。


 パチン! 


 風が指を鳴らす。


 ズドォォオオンッ!


 輝の上に雷が落ちる。
「あひゃぁぁああああッ!」
 輝が悲鳴を上げる。


 ピチュウウウウウン!


 風によってピチュンされた。
「段々とコツが解かってきた」
「指を鳴らして発動って、どこの大佐だよ」
「あの大佐は右手で鳴らして左手はポケットに閉まっている!」
「うわっ!蘇った!」
「ツッコム所そこかよ」
 輝は煙を上げながらも奇跡的に復活していた。
「まさか風が能力使えたとは驚いた」
「因みに白玉楼で能力が使えるようになった」
 幽々子と妖夢は言っていなかったな。会ってすぐにここに来たか仕方が無い。
「金いくらある?」
 唐突に零が言ってきた。嫌な予感がとってもするのはなぜだろう。
「・・・・・なぜそんな事を聞く」
「まあまあ、そんなに疑いなさんな」
 風が(なだ)めて来た。絶対に裏がある。こういう展開になると必ずと言っていいほど損な役回りになる。
「疑いたくもなるわ。俺を生贄にしたくせに」
「「はて何のこと?」」
「ハモるな!」
 嫌な予感しかしないけれども、これ以上この二人に生贄にされた事を言ったって拉致が明かない。とことんしらを切るに決まっている。
「4万4875円だ」
「細かっ。だがその方が都合いいかも知れない」
「金に目がないからな。霊夢は」
「あ、だから金が必要だったのか」
 ようやく零の質問の意味を理解した。
 東方を教えてもらう時に始めに教えて貰ったキャラクターだ。脇巫女で、空を飛ぶ程度の能力で、お金にうるさい巫女だ。はたして巫女と呼んでいい者なのか疑問だ。
 だけどこの二人も金を持っているはず。だけど未だにお賽銭箱に入れずにここにいる。何か問題でもあるのか。
「お前らも金持っているはずだよな。なんで未だにこんな所にいるんだ?」
「細かいのが無かったんだよ。俺が4万7000円で零が」
「5万6000円だ」
「な~る。なら、直接本人を呼べばいいじゃん」
「呼んでみたか反応が無い」
「どうせ奥でせんべいかじってるか、寝てるんだろ」
 零が呆れたように言う。最早巫女ではないだろう。
「なるほど。だからお賽銭を入れた音で霊夢を召喚するわけか」
「そういうことだ」
「そういうこなんで」


 ジャラジャラジャラジャラ


「ん?ジャラジャラ?」
 音のする方へ視線を向けると、零が知らぬ間に輝の財布を取ってお賽銭箱に入れていた。
「ノォ―――――――ン!俺の875円がぁ――――っ!」
「安心しろ。札は入れないから☆」
「『札は入れないから☆』じゃねぇーよっ!なぁぁお前をぶん殴りてぇぇえ!」
「殴るなら風を殴れ!」
「なんで俺なんだよ!」
「チェスト――!」
 渾身の一撃を風に喰らわす。
「いてぇっ!なぜ俺を叩く!」
「黙れジジィ」
「おまっ!」
 本来ならばもっと叩いているはずだが、今回はこれでよしとしよう。と心で呟く。
 バタバタバタバタバタバタッ!と奥から慌ただしい足音が聞こえてきて次の瞬間
「今、お賽銭いれたのだれ!?」
 脇巫女が召喚された。




「つまり、彼方たちは紫に落とされた外界の人間」
「はい。そうです」
 お賽銭を入れた後(当然の如く財布は回収)興奮気味の霊夢を宥め、風がこれまでの状況を話し今に到る。興奮気味の霊夢を見て若干、いやかなり不安があったのだが風の話を聞くうちに顔が険しくなり眉を寄せている顔をしていたので安心した。まだ、少々不安があるが。
「はぁ~紫も面倒なことしてくれたわね」
「ねぇ本当に」
 今のところ風が説明してくれるおかげで大いに助かっている。
「で、これからどうするの?えっと・・・・カチュウシャとその他二人」
「なんで会う人必ずカチュウシャと呼ぶんだよ、俺のことを!!そりゃぁ俺だって自分の第一印象カチュウシャと思っているけどさ、ストレートに言わなくてもいいじゃん!ていうかまだ紹介していなかったのかよ!風!」
「ああ、それは悪かったと思うがツッコミが長いしクドイ」
「くっ!」
「やめとけ輝。ツッコミで風に勝てるはずが無い」
 何か言い返してやろうとした輝が制した。確かに、風の言っていることは的を射ている。流石ツッコミ担当の風。手厳しい。これ以上何か言われる前に二人よりも先に自己紹介をしとこう。たぶん名前を言おうとした瞬間、ワイトキングNEO/バスターというに違いない。
「俺は輝です」
「俺は零」
「俺は――――」
「ご老公」
「ジジィ」
「おいっ!せめて同じことを言え」
「おー流石ツッコミ担当」(パチパチパチ)
「やっぱりツッコミはお前にしか出来ないな」(パチパチパチ)
「拍手をやめい!」
「実際の名前はなに?ジジイ・ゴロウコー」
 霊夢が半目をして聞いてきた。でも意外と乗っている。
「名前みたいにつなげんな!お・れ・は、風と言う列記とした名前があるわっ!」
「えッ!そーなのっ!!」
「いいかげんにしろ!」
 なんか久しぶりにこのやり取りを見ていると何故だか和む。傍らでは霊夢が笑いを堪えている。誰だって笑いたくもなる。だけどかなり脱線している。
「で、これからの予定は?ジ・・・風」
「今、ジジィって言おうとしたろ!?」
「言わないわよ。そんなこと」
 真顔で言い返してきた。だけど風は怯まず答えた。
「今日の寝床を確保する」
「泊めないわよ」
「まだ何も言ってないじゃん!」
 思わずツッコんでしまった。これでよく巫女を遣っていけるものだ。だが風はびくともしない。霊夢が言おうとしたことを予測していたらしい。東方のことなら何でも知っていると自負している位だから当たり前か。
「困ったな~一人1万位払って泊まろうとし――」
「好きなだけ泊まりなさい」
「態度違くない!?」
 態度の急変差についていけない輝。て言うか巫女としてどうかと思う。
 霊夢に「後払いは駄目よ」と言われ1万を払った。その後の霊夢はニアついていた不気味なほどに。
「部屋はどうする?三人とも別々がいい?」
「「「はい、お願いします」」」
 満場一致で決定。
「確か部屋は二つ空いていて、残りは相部屋になるわ」
(二つは空いていて残りは相部屋か。これは相談した方がよさそうだ)
「空き部屋で」
「空き部屋がいい」
「あれ!?二人とも相談と言う選択ないの!?」
「「相談?なにそれ、おいしい(存在する)の?」」
「・・・・・・・・」
 もう好きにしてくれ。
「決まった?決まったなら案内するわ」
 やや強制的に決まった部屋決めであるが、これ以上ボケ組に関わりたくなかったので案内される事にした。
 

 霊夢に案内されたのは、神社の奥に建てられている家だ。霊夢が生活している家だそうだ。家の広さは、白玉楼こそ大きくないが、輝が知っている一般の家より大きい。二人で住むのには十分すぎるだろう。この広さから見れば部屋の一つや二つ有っても可笑しくはない。
 案内された部屋は、六畳ほどの部屋だ。これ位の広さだったら二人いても狭くは無い。輝は狭くなる覚悟でいたが、その心配は消え去った。風と零は、霊夢に部屋を案内されて早速寛いでいた。やっとちゃんとした所で寝られる、と輝は嬉しく思った。
「輝はここ。さっきも言ったけど相部屋になるわよ」
「はい。分かりました」
 だがしかし、輝は肝心なことを二つ忘れていた。一つは、部屋にいる人が人間だとは限らないこと。もう一つは、東方キャラクターはほとんど女性であることを忘れていたのだ。
 輝は襖を開けた後にそのことに気付いた。だが後の祭りである。部屋に居たのは両腕と両足に鎖を付けていて、服装は白い半袖シャツみたいなものでスカートはどこかの民族が履いているようなデザイン。そして角を二本生やした幼女が(いびき)をかきながら豪快に寝ていた。
「・・・・霊夢さん。この子は?」
「この子は伊吹萃香。見ての通り鬼よ」
「鬼・・・・ですか」
「驚かないの?」
「え?・・・ああ、俺は妖怪とか好きなんで、驚くより喜びます」
「ふ~ん、珍しい。ま、とにかく仲良くしてやってね」
 霊夢がそれだけを言い残し、行ってしまった。ほかに心配することはないのだろうか?
「・・・・・・」
 非常に困った。起こして挨拶するべきか、起こさないでそのままにしておくか。さてどうしたものか。
「・・・・・・・・・・よし。空気になろう」
 萃香を起こすのも悪い気がしてそのままにしておくことにした。都合がいいことにこの部屋は六畳の広さがあるから、たとえ真ん中で寝ていようとさほど問題ない。それにこれ以上騒ぎたくない、いろんな意味で。とりあえず萃香の睡眠を邪魔しないように移動して、部屋の隅に荷物を置き輝も横になった。
 ここ数日で色んなことが起きた。幻想郷に落とされ、映姫に怒られ、妖夢には殺されそうになり、そして今に至る。もう、なにも起こらないで欲しい。輝は心の底から願った。
「邪魔するぞ~」
 だけど、その願いを打ち砕こうとする奴らがいる。
「何の用だ、風」
「そんな不機嫌な顔すんなよ~。お、やっぱり萃香か」
 やっぱりと言うことは、萃香がいると予想が付いていたのか。流石と言うべきか。
「用が無いのなら、出て行け。これ以上騒ぎたくない」
「いいじゃん。どうせ暇なんだろ?」
 お気楽な風の態度を見て、苛立ちを覚え始めた。ここの所、輝はまともな休息をしていないし、今までの疲労が蓄積され、疲労がピークに足しており機嫌が悪い。
「・・・・・・・・」
 とりあえず風を無視して、休息に専念することにした。
「無視すんなよ~」
 尚も構ってくる風。輝が反応するしないに関わらず話しかける。
始めは気にしなかったが、段々と鬱陶しくなって、
「うるせぇっ!からかいに来ただけならさっさと失せろ!クソボケジジィッ!!」
 そう怒鳴り
「ん?何の騒ぎ?」
 自爆した。今まで暢気に寝ていた萃香が目を覚ました。
 さっきまで騒ぎを起こしたくないと思っていた自分が騒ぎを起こす予兆を作ってしまい、輝は落胆している。時間を戻すことが出来るのなら戻したい。
「萃香おはよう」
「おはよう・・・・て、あんただれ?」
「ああ、すまん、紹介が遅れた。外界から落とされた人間の風だ」
「外界から落とされた?はっはっはっは、あのスキマ妖怪もおもしろい事をよくやるよ」
「ねぇ本当に」
 輝を無視して話が淡々と流れていく。このまま無視して話が終われと強く願った。
「所で、あそこで凹んでいる少年は?」
 そこで貴女が話を振るのですか、伊吹萃香。
「あいつは輝。只今自分の失態に絶望している最中です。あと別部屋にもう一人いる」
「ほぉう~輝ね。よし、アキ落ち込んでないでこっちきて一緒に飲もぉ」
「もう駄目だ。俺はこの世界では普通に暮らすことなんて出来やしないんだ。絶対にそうだ、違いない。それに、ブツブツブツブツ・・・・」
「・・・・アキはどうしたの?異常なほどに暗いけど」
 ネガティブ状態に入って、ブツブツと何か言っている輝を見て、風に問いかける。
「やつ特有のネガティブホーム。ああなってしまった以上、ちょっとやそっとではあのネガティブホームは解けやしない」
「戻さなくていいの?」
「いや戻す。放置しとくとこっちまでネガティブになりかねん」
 風は軽く指を鳴らし、輝に雷を落とした。
「あべしっっ!」
 その痛みで我に返った。
「い、痛い」
「目が覚めたか?」
「むしろ目覚めたくなかった」
 放置してくれたらどんなに嬉しいことやら。
「目が覚めたのならいっしょに飲もうよ♪」
「どうゆう流れで飲むに繋がるのですか」
「硬いことは言いっこなし」
 そういう問題では無いような気がするのだが。
「そういえば、ちゃんとした挨拶がまだだったね。私は伊吹萃香。気軽に萃香ってよんでね」
「俺は輝です」
「よし。お互いに挨拶したことなので、飲もうアキ」
「いや、どうして飲む方へと話が直列するのですか」
「なぁにぃ?私のお酒が飲めないというのッ!?」
 いきなり萃香がよってきて輝の首に腕を回した。かなり萃香に密着して解かった事がある。それは・・・
「お酒くさ!」
 そう、かなりお酒臭いのである。輝はこの臭いが鼻に来て直ぐに萃香を突き放そうとしたがすごい力で首にすがり付いて離れようとしない。見掛けによらず馬鹿力だ。
「言い忘れていたが、萃香は呑んべぇですごい怪力の持ち主だ」
 もっと早く言って欲しかった。
「どうしたどうした?何の騒ぎ?」
 この騒ぎに気付いて零も輝と萃香の部屋に集まってきた。
「お!萃香じゃん」
「おぉ~風が言ってたもう一人の子か~」
「零だ、よろしく。やべぇ、萃香かわえぇぇ~~」
「えへへ~~、もっといってぇ~~」
 なんかテレ始めた酔っ払い。
「輝てめぇ、萃香に抱きつかれやがって。妬ましい」
「安心しろ零。幼女に興味はない」
「つるぺったんに興味がないって!?失礼な少しぐらいあるもん!!」
「どこをどう変換して幼女がつるぺったんに変換する?これだから酔っ払いは・・・・・」
「てめぇの血は色だぁぁああ!」
 零はすごい形相で輝に襲い掛かって来た。
「ぎゃぁぁぁ!零が襲ってきたぁぁぁ!!助けてくれ風!」
「俺が止められる訳ないじゃん」
 何言っちゃてんの?的なテンションで言ってくる風。
 このとき初めて輝は心の底から、こいつウゼェェエ、と思ったのであった。
 零が輝の喉元目掛けて手刀で突こうとするその刹那。
「そこの3バカトリオ、ちょっといい?」
 タイミングよく霊夢が現れた。
 
 

 
後書き
変な区切りしてすいません(泣)
次は早く投稿します。 
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