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妖精の義兄妹の絆

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愛するもののために

「ぐはぁっ。」
タクヤは豪快に吹き飛ばされた。
「ハハッ…、随分と弱っちまったなぁ。」

ガッ

「がはっ。」
さらに蹴り飛ばされる。辺りにはタクヤの血が飛び散っていた。
先程からランスの集中攻撃を受け止め続けていたが次第に攻撃を喰らうようになってきた。
「ハァハァ…ハァハァ…。」
「どうだ、そろそろ時間切れじゃねーのか?」
「…やっぱ、てめー…気付いてやがったのか。」
タクヤは倒れ込みながらランスに言った。
「あぁ、最初に違和感を感じたのはお前の魔力のでかさだった。
ニルヴァーナの魔力を吸収し続けるなんて事、誰にもできねぇからな。可能だとしても精々数分から数十分。」
タクヤの竜水には自身の魔力の器を無理矢理広げ大気中のエーテルナノを通常の数十倍の早さで吸収できる事。
だが、これには制限時間があり最高でも10分が限界なのだ。
「…へっ。だからってオレが負けていい理由にはなんねーだろうが。」
「…。」

ガッ

「ぐっ。」
「光槍“レインズ"!!!」

ダダダダダダ

「ぐあぁぁああっ。」
タクヤは無数の槍に貫かれる。先程まで防げていた攻撃さえも今ではよける事すらできない。
「もう終わりだよ。ゆっくり死んでろ。」
タクヤは立ち上がろうとするがランスに追撃され、また倒れ込む。
「いい加減楽になりやがれ。お前の負けだ。」
「ハァハァ…まだ、だ…。」
タクヤは口から血を吐き、その場に立つ。もうダメージが限界を超えているにも関わらず立ち上がった。
「ちっ。獄槍“エンマ"!!!」

ズガァァァン

「ぐあぁぁああっ。」

ドサッ

タクヤはランスの魔法をモロに喰らい吹き飛ばされた。
「目障りなんだよ。何を守るって?笑わせんな!!てめーみてぇな雑魚に何ができるんだぁ!!?」
さすがのタクヤもすぐには立てなかった。だが、そこにランスが追い討ちを掛けてきた。

ガッ ドッ バコッ

「力のねぇ奴はみんなこうやって無様に死んでいくんだ!!!強い人間は何がなんでも!!!どんな事をしても!!!
生きてる者の事を言うんだよ!!!!口だけ達者になっても何も得られねぇ!!!!」
倒れているタクヤに罵声を浴びせながら痛め続ける。まるで、自分がそうであるかのように刻み込むために。
その瞬間、

ガシッ

「!!!」
タクヤがランスの足を力強く掴んだ。
「くそがっ!!!」

バッ

ランスはタクヤをふりほどき重い蹴りを喰らわせる。
「ゲホッゲホッ…ハァハァ…ハァハァ。」

ザッ

タクヤはあれほど痛め続けられたにも関わらず足を震わせながら立ち上がった。
竜水の効果が完全には切れていないにしろ形勢は極めて不利だ。
「てめぇ…!!」
「ハァハァ…オレは負けねぇ…。ぜったいに、倒れねー…。俺の後ろには仲間が、家族が…愛するものがいる。
それを、傷つけようとする奴はオレがこの手で沈める。
















もう一人じゃねぇんだ!!!!」

コォォォォォォ

タクヤは最後の力を振り絞り、竜水の効果を最大限に発揮する。
「…わかった、もういい。これで何もかも終わりだ。」

キィィィン

そう言ってランスが宙に浮き始めた。
「その心義に敬意を払いオレの最大魔法で消してやる。」
ランスが別空間から新たな槍を換装させる。それは今までとは別次元の力を秘めたものだった。
「我は天から舞い降りし使者!!!神よ!!!眼前の咎人を滅するため神の槍を授けたまえ!!!!」
するとランスの槍に神々しく輝きだしありったけの魔力を込める。

コォォォォォォ

「うぉぉおおぉぉ!!!!」
タクヤもすべての魔力込める。これが正真正銘最終決戦“ラストバトル"だからだ。
タクヤの魔力に呼応するかのように全身から空色の水が弾き出す。
「これで終わりだ!!!!神槍“グロリアス・レイ"!!!!!」

ドゴォォ

ランスは金色に輝く槍をタクヤに放った。




























そして、同じ頃
「時間だ!!!みんな頼むぜ!!!!」




「開け!!!金牛宮の扉、タウロス!!!!」




「ぬおぉぉぉぉぉぉぉぉっ。力の香り全開〜!!!!」




「ナツ。」




「お兄ちゃん…。天竜の咆哮…。」









「うおおおおおっ。」
「我が前にて歴史は終わり、無の創世記が幕を開ける。








ジェネシス・ゼロ!!!!開け、鬼哭の門。」

オオオオオ アアアアア ウァァァ

ゼロが放った魔力の中にはまるで亡霊があちら側の世界に連れていこうとしている異様な光景が広がっている。
「無の旅人よ!!!!その者の魂を!!記憶を!!!!存在を喰いつくせ!!!!







消えろ!!!!ゼロの名の下に!!!!」

オオオオオ

「ぐあっ。」
ナツは広範囲に広がったゼロの魔力の中へと飲み込まれていった…、




かのように思われたが、

ゴオォォ

「何!?」
飲み込まれかけたナツだが、金色の炎を沸き上がらせたちまちゼロの邪悪な魔力を浄化させていく。
「おおおおお。」

ゴゴゴゴ

「金色の炎が…。」

オオオ

「らああああ。」
「オレの魔法を燃やしているだと!!?」
「あああああ。」

ズシ

完全にゼロの魔力を浄化したナツはさらに魔力を貯める。
その姿はまるで本物のドラゴンが目の前にいるかのような錯覚に陥ってしまう。
(「ドラゴンを倒す為に…ドラゴンと同じ力を身につけた魔道士。これが、本物の滅竜魔道士!!!!」)
ナツの渾身の拳がゼロを射抜く。さらにそこから新たな奥義を繰り出す!
「全魔力開放!!!!滅竜奥義“不知火型"

















紅蓮鳳凰劔!!!!!」

ドッ

ナツの最大奥義がゼロに直撃し、炎が瞬き辺りを焦がした。
「ぐあああああ。」
「あああああ。」

ゴッ ガガガガガガ バゴ

ニルヴァーナの最下層から一気に魔水晶のある所まで上がってきた。
そして、

バキィ

そのまま魔水晶に激突した。魔水晶は粉々に砕け散る。
それはほかの者たちの所でも、

バキャッ


ドカ


THOOM


バキィ


ゴッ

そしてここでも、
「全魔力開放…!!!!滅竜奥義“水無型"














鏡花水月!!!!!」
タクヤは手を前に突き出し水の鏡を作り出した。ランスの攻撃が水の鏡を直撃した。
だが、水の鏡は割れる事無く逆にランスの魔力を吸収し始めた。
「なっ!!?」
そして、完全に吸収した水の鏡はタクヤの手の元で凝縮された。

ゴゴゴゴゴ

「うるぁぁぁぁぁ!!!!」

ドゴォン

タクヤはランスの魔力を倍増させ跳ね返した。
「うわぁぁぁぁあっ。」
それは見事に直撃し、ランスの後ろにあった心臓も粉々に砕け散った。
(「まさか…こんな所で…、こんな…小僧に…。」)
ランスは地面へ墜落しながらタクヤを見た。すでに疲労困憊で今立っているのもやっとの状態で何故…。
ランスは薄れゆく意識の中でタクヤが放った言葉を思い出していた。

_オレの後ろには仲間が、家族が、愛する者がいるんだ

ランスの頭の中でそれが繰り返し流れ、次第に意識が途切れた。
「ハァハァやった、ぜ…。」







ドドドドドド ドドドドドド







全員が魔水晶を同時に破壊した為ニルヴァーナは全機能を停止させ、ゆっくり崩れていった。
その様子を見てウェンディたちは歓喜の涙を流した。





















ここは一番魔水晶跡地
ナツはゼロに見事勝利を収めた。
(「やはり、期待以上の男だった…。」)

ふら ふら

だが、さすがに魔力の消耗が激しかったのか足がおぼつかなかった。

ドガガガ

「ぐぉ。」
「ナツ!!!」
ニルヴァーナが徐々に崩壊していく。そのせいでナツはその場にこけてガレキに埋もれてしまった。
「おおお。」
「くうっ。」
ジェラールもナツを救出しようとするが体が言う事を聞かずに戸惑っていた。






















それはほかの場所でも起こっていた。


ガラガラ ドガガッ

「きゃああっ。」
「うわぁぁ。」






「やべーぞこりゃ…。」








ゴッ

「くっ。」







ゴチン

「メェーン。」










「シャルル、エマ。」
「ウェンディこっちよ!!」
「早く早く!!」
ウェンディもシャルルとエマに連れられ脱出を試みた。

すてーん

「きゃあっ。」
ウェンディは足をつまずかせてその場にこけてしまった。

ガラッ ガラッ ガラッ

その瞬間にウェンディの頭上にガレキが落ちてきた。
「「ウェンディ!!」」
だがそこに、

ドガガッ

「ジュラさん!!」
「皆無事か!!?」
「なんとかね。」
「助かりましたジュラさん!!」
ジュラの登場でウェンディたちは間一髪の所を救われた。

キィィィン

「!!」
その時、エマは何かを感じ取った。
「ここも危険だ。あちこちで崩壊が進んでいる。急いで脱出しよう!!」
「はい!!」
「私はタクヤの所に行ってきます!!」
「ダメよ!!アンタももう魔力が残ってないでしょ!!!」
エマを必死に食い止めるシャルル。だが、それでもエマは止まらなかった。
「シャルルたちは先に行っててください!!」

ビューン

エマは翼を羽ばたかせニルヴァーナの奥へと向かっていった。
「エマー!!!」



























そして、心臓魔水晶跡地
「はやく…ここから、出ねーと…。」

ドサッ

タクヤはその場にうつ伏せの状態で倒れた。
「ハァハァ…体が、動かねぇ…。」
竜水の効果が完全に切れ体内の魔力がまったくなかった。
それだけではなく体内に蓄積されるエーテルナノも吸収できないでいた。
(「こんな時に、副作用かよ…。」)

ガリ ガリ

なんとか脱出しようとするが指先以外はまったく動かなかった。

ゴゴゴゴゴ

「くそぉ…。こんな、所、で…死ぬわけ、には、いかねー…んだ…。」
それでも体は動く気配なく周りが着実に崩れていっている。
「ウェンディ、みんな…ごめん…。もう、ダメみてぇ、だ…。」
タクヤは覚悟したのかゆっくりとまぶたを閉じた。

ガラガラ ガラガラ

そしてタクヤの姿はガレキの中へと消えていった、









ビューン パシッ





と思ったが、ひとつの影がタクヤを抱え外へと脱出していった。

















ドドドドドドド

「うおおおっ。」
誰かが雄叫びをあげながら崩れいくニルヴァーナから現れた。

ドッ ゴロゴロッ


ズザァ

「危ね。」

その正体はグレイだった。さらに、次々とニルヴァーナから姿を現した。
「みんな無事か!?」

ズサァ

「ぷはー。」
「あぎゅー。」
「エルザさ〜ん。よかったぁ。」
「な、何だその体は。」
エルザの前に力の香りで強化された一夜がちかよろうとするがすぐさま逃げる。
「ナツさんとお兄ちゃんは!?」
「見当たらんな。」
「ジェラールもいない!!」
「メスネコもよ!!」
ウェンディは辺りを見渡すがナツとタクヤ、エマの姿はどこにもいなかった。
「ナツ…。」
「あのクソ炎何してやがんだ。」
「お兄ちゃん!!」
(「ナツ、ジェラール、タクヤ、何をしている…。」)
みんながタクヤたちの心配をしていたその時、

ボヨン

「ん。」
「ひっ。」
突然ルーシィが座っていた地面が膨らみ始めた。

ズザァ

次第に土は音を立てながら落ちていく。



ボフッ



「愛は仲間を救う…デスネ。」
「んあ?」
そこから現れたのはナツとジェラールを抱えたホットアイだった。
「ナツさん!!」
「六魔将軍が何で!!?」
「いろいろあってな…。大丈夫…、味方だ。」
ジュラはホットアイに敵意がない事をシャルルに伝えた。
「ナツさん!!!!」

がばっ

「うぉ。」
ウェンディは涙を流しながらナツに抱きついた。
「本当に約束守ってくれた…。ありがとう!!ギルドを助けてくれて。」
「みんなの力があったからだろ?ウェンディとタクヤの力もな。」
「そういえばタクヤ殿は一緒ではなかったのか?」
ジュラは未だにこの場にいないタクヤについてホットアイに尋ねる。
「すみませんデス。私が行った時にはもう姿はありませんでした。」
「「!!!」」
「そんな…そんなのって…ないよ…。」

ガタッ

ウェンディは思わずその場にしゃがみこんだ。その顔は涙で覆われている。




























ヒュウゥゥゥ

冷たい風がタクヤの頬を撫でる。
「ん。ここは…。」
辺りには日が沈み切った空と雲が広がっていた。下にはニルヴァーナが崩壊しているのが見える。
どうやら自分は空にいるらしいと結論づけた。
「気付きましたか?」
背後から聞きなれた声が聞こえる。
「あぁ、とりあえず…生きてる…な。」
「もう!!こんなになるまで頑張って…、あれほど竜水は使うなって言ったのに…。」
「…わりぃ。」

ポロ ポロ

「ほんと!!みんなに心配ばかりかけさせて…。グズ」
「あぁ、悪かったよ…。






だからもう泣くなよ…。」
エマは涙をポロポロ流しながらタクヤを叱った。
「でも、おかげでギルドを守れたし…、結果オーライって事で…、」
「なるわけ無いでしょ!!!反省してください!!!」
「はい…。」
さらにエマのお怒りを買ってしまった。
「…サンキューな、助けてくれて。なんかヒーローみたいだぜ。」
「どちらかと言うとヒロインの方だと思いますけど。」
「ハハッ…。そう、だな…。」
「タクヤ?」
「わりぃ…。ちょっとだけ、寝るよ…。」
タクヤは声をかすらせながらエマに言った。
「…はい。ゆっくり休んでください。」
それを聞く前にタクヤは寝息を立てていた。
























「あ、あれ見て!!」
ルーシィが空にこちらに向かってくる影を見つけた。
「エマ!!それに…、」
「お兄ちゃん!!!」
次第に近づいてきたエマはタクヤを起こさないようにそっと地上に降りた。
「お兄ちゃん!!しっかりして!!!」
「あ、いや、タクヤはただ寝てるだけですから。」
「えっ!!?」

スゥー スゥー スゥー

確かにタクヤの寝息がかすかに聞こえるので命に別状はないようだ。
「でも、こんなに傷だらけで…。」
タクヤの体のあちこちには切り傷やら打撲痕などがあり、どれほどの激戦だったのか容易には分からない。
この中では一番重症だった。
ウェンディはすぐに治癒魔法をかけようとするが、自分の魔力もほとんどない為それが適わなかった。

ギュッ

「お兄ちゃん…。」
何もできない、何もしてやれない自分が悔しくて仕方なかった。
タクヤが奥の手の竜水を使う事も想像していた。だが、言えなかった。
タクヤの背中を見ていたら言葉が出なくなった。

ポロ ポロ

ウェンディはこうやって涙を流す事しか出来ない。
「ウェンディのせいじゃありませんよ。」
「え。」
不意にエマから言われた一言に一瞬理解が遅れた。
「多分言っても聞かなかったと思いますよ?タクヤってやるって言ったら何でも最後までやりますから。
私たちを…ギルドを…そして、ウェンディ…あなたを守りたかったから。」
「…。」
「ま、要するにただの頑固者って事ね。」
シャルルもタクヤを見ながら言った。
「それ言っちゃダメですよー。」
「私…もっと、もっと強くならなくちゃ…。もう泣いてばかりなんて嫌だよ。」
「ウェンディ!!」
後ろからナツに笑顔で呼ばれた。
「今度は元気よくハイタッチだ。」

ゴシゴシ

ウェンディは涙を拭い元気に返事した。
「はい!!」

パァァン

二人のハイタッチが夜空の中で響いていった。



























「全員無事で何よりだね。」
「みんな…本当によくやった。」
「これにて作戦終了ですな。」
今さらになって無事に作戦を成し遂げた事に気づいた全員が肩の力を抜いている。
「…で、あれは誰だ?」
「?」
グレイが少し離れた所にいる男を見て言った。
「天馬のホストか?」
「あんな人いたっけ?」
グレイもルーシィも見かけた事がないため顔立ちから想像して言った。
「ジェラールだ。」
「何!!?」
「あの人が!!?」
エルザの衝撃的な告白でグレイとルーシィも驚く。
遠くでむすくれているナツもその会話を聞いていた。
「だが、私たちの知っているジェラールではない。」
「記憶を失ってるらしいの。」
「いや、そう言われてもよぅ……。」
グレイもルーシィも楽園の塔での事件に関わっている。
そこで聞かされたジェラールと目の前にいるボロボロの青年が同一人物かと聞かれるとすぐに答えられない。
それだけ印象が違うからだ。
「大丈夫だよ。ジェラールは本当はいい人だから。」

つかつか

エルザが静かに佇んでいるジェラールに歩み寄る。
「とりあえず、力を貸してくれた事には感謝せねばな。」
「エルザ…。いや、感謝されるような事は何も…。」
「これからどうするつもりだ?」
ジェラールはエルザに目を合わそうとはしなかった。そんな資格などない事は自分が一番知っている事だ。
「わからない。」
この一言にどれだけの意味が込められているか、エルザにはわからない。
「そうだな…。私とおまえとの答えも簡単には出そうにない。」
「怖いんだ。記憶が戻るのが…。」
記憶を失う前、つまり自分がやってきた罪の数々。たくさんの人を傷つけた事全て。
今のジェラールには計り知れないほどの不安があるはずだ。










「私がついている。」
その言葉を聞いた瞬間に思わず肩に寄りかかりそうになった。
「たとえ、再び憎しみ合う事になろうが、今のおまえは放っておけない。私は…、」

ゴチィン

「メェーン。」
「「!!」」
エルザが何か言いかけた時に一夜の叫び声がした。
「どうしたオッサン!!」
「トイレの香りをと思ったら何かにぶつかった〜。」
「何か地面に文字が…。」
一夜の足元には無数の字が書かれ、それはみんなを取り囲む形になっている。
「こ、これは…。」





「「術式!!!?」」
術式とは、魔力を練った文字を書く事によっていろいろな効果を発揮できる魔法だ。
そのせいで一夜は術式の外に出れないという事だ。
「いつの間に!?」
「閉じ込められた!?」
「誰だコラァ!!!」

ザッザッ ザッ

次第に同じ服装に身を包んだ団体が術式の周りに集まってくる。
「な、なんなの〜?」
「もれる。」
「手荒な事をするつもりはありません。しばらくの間そこを動かないでいただきたいのです。」
「!!」
白い人混みの中から威厳ある男が姿を現した。
「私は新生評議院第四強行検束部隊隊長ラハールと申します。」
「新生評議院!!?」
「もう発足してたの!?」
「我々は法と正義を守る為に生まれ変わった。いかなる悪も決して許さない。」
ラハールと名乗ったその男は威厳ある態度で断言した。
「オイラたち何も悪い事してないよっ!!」
「お、おう!!」
何故かナツは冷や汗を流しながら言った。
「存じております。我々の目的は六魔将軍の捕縛。






そこにいるコードネーム、ホットアイをこちらに渡してください。」
「「!!」」
「ま、待ってくれ!!」
ジュラはラハールに抗議しようとするが、

とん

「いいのデスネ、ジュラ。」
「リチャード殿。」
リチャードは穏やかな顔でジュラを止めた。
「善意に目覚めても過去の悪行は消えませんデス。私は一からやり直したい。」
リチャードの覚悟が決まった顔を見てジュラも思い止まった。
「ならばワシが代わりに弟を探そう。」
「本当ですか!?」
「弟の名を教えてくれ。」
「名前はウォーリー、ウォーリー・ブキャナン。」
「ウォーリー!!?」
話を聞いていたエルザがリチャードの弟の名前を聞いて驚いた。
ナツとハッピーもその名前に心当たりがあるようだ。
「その男なら知っている。」
「なんと!!?」
「!!!」
ジュラとリチャードは驚いた顔でエルザを見た。
「私の友だ。今は元気に大陸中を旅している。」
リチャードはまだ信じられないという顔をしていたがエルザが頷くと涙が溢れてきた。
「これが光を信じる者だけに与えられた奇跡というものデスか。ありがとう、ありがとう…。






ありがとう!!!」
リチャードは何度も何度も礼を言い続けた。
そして、リチャードは評議院に連れられ護送車へと向かった。
「なんかかわいそうだね。」
「あい。」
「仕方ねぇさ。」
「もうよいだろ!!!術式を解いてくれ!!!もらすぞ!!!」
せっかくの雰囲気を台無しにしながら一夜はラハールに言った。
「いえ…私たちの本当の目的は六魔将軍ごときじゃありません。」
「へ?」
「「!!!」」
ラハールの放った一言にその場にいた全員が背筋を凍らした。
六魔将軍をごとき扱いするという事はそれ以上の悪があるからだ。
「評議院の潜入、破壊。エーテリオンの投下。もっととんでもない大悪党がそこにいるでしょう。」
ラハールは一人の男を指さして言った。










「貴様だジェラール!!!!来い!!!!抵抗する場合は抹殺の許可もおりている!!!!」
「そんな…!!!」
「ちょっと待てよ!!!」
ウェンディとナツがラハールに抗議するがジェラールは何も言わない。
「その男は危険だ。二度とこの世界に放ってはいけない。



絶対に!!!!」
エルザはただラハールの言葉を聞くことしかできなかった。



 
 

 
後書き
これて24話かんりょーですねー!いつもより早めに出来上がって安心しました。
バトルの内容とか頭の中でイメージしてるのに書いていくとすごい矛盾が生まれたりして
焦りました。みなさま暖かい目で読んでください。
では、感想などまってまーす! 
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