運命の二重奏
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魔法薬学
前書き
更新が遅くなってすみません。高校の受験があり、忙しくて更新できませんでした。これからはどんどん更新したいと思います。
アッシュの最初の授業は上々だった。授業態度は悪くないし、変身術ではクラスでハーマイオニーと共にマッチ棒を針に変えることもできた。アッシュは、あと一ヶ月もすれば『優等生』の肩書きが手に入るだろうと考えていた。
しかし、142もの階段や授業よりも面倒な問題が一つアッシュにはあった。それは、毎日毎日しつこく話しかけてくる存在だ。
「なあ、今日はスリザリンと魔法薬学だったけ?」
フルーツを食べているアッシュの横にしっかりと座り、パンをもぐもぐと食べながら話しけてくる。
「そうだよ、イーランド君」
愛想のいい作り笑いを浮かべ、答える。
「リアンっでいいって。それにしてもスネイプって、スリザリンをめちゃくちゃ贔屓するらしいよ。何かとつけてグリフィンドールを減点するんだって」
そう言うのは、赤みがかった栗毛に灰色の目をしているリアン・イーランドだった。
たまたま寮の同室になり、それ以来『友達』になろうと半分付きまとい行為をしている。この人物こそ、アッシュの頭痛の種だった。天然なのかバカなのか近寄らないで欲しいと不機嫌オーラを出しているのに、アッシュに話しかけてくるのだ。それは、食事に終わらず、授業中、移動中、寝るときさえいつも一緒に行動してくる。
ああ!こいつのせいで自由に動けない!
微笑みながらリアンと話をしているが、内心今にでもリアンを吹っ飛ばしたい気持ちだった。アッシュにはやりたいことがあったのだ。それは、ハリー・ポッターに偶然を装って接触することだったのだが、リアンが離れないせいで未だ出来ていない。
一見みれば見た目麗しい少年が喋りあう仲睦まじい光景だが、アッシュは心なかで
早く離れろ!このバカ!!
と悪態をついていた。
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「あぁ、さよう。ハリー・ポッター。われらが新しい―スターだね」
地下牢に猫撫で声が響く。その声の主は、魔法薬学の教授セブルス・スネイプだった。
「このクラスでは、魔法薬調剤の微妙な科学と、厳密な芸術を学ぶ」
ふつふつと呟くような声は、シンとした地下牢に響く。アッシュが隣を見ると、冷や汗を浮かべたリアンが机の下で、十字を切っていた。それに内心苦笑いしながら、顔には出さずスネイプの声を、『優等生』らしく背筋を伸ばして聞いている。
「このクラスでは杖を振り回すようなバカげたことはやらん。そこで、これでも魔法かと思う諸君も多いかもしれん。フツフツと沸く大釜、ユラユラと立ち昇る湯気、人の血管の中をはいめぐる液体の繊細な力、心を惑わせ、感覚を狂わせる魔力・・・諸君がこの見事さを真に理解するとは期待しておらん。我輩が教えるのは、名声を瓶詰めにし、栄光を醸造し、死にさえふたにする方法である―ただし、我輩がこれまで教えてきたウスノロたちより諸君がまだまだましであればだが」
ずいぶん小説的な言い回しだな。意外とロマンチストだったりして。
大演説の後、クラス中がシーンとなり、隣ではリアンが真っ青になっているのにも関わらずそんな全く関係無い事を考えているアッシュは、余裕だった。
「ポッター!アスフォデルの球根の粉末にニガヨモギを煎じたものを加えると何になる?」
いきなりポッターを指名し、質問する。その少し横でグレンジャーが高々と手をあげている。ツンツンとリアンはアッシュの腕をつく。
「なあ、解かる?」
小さな声でリアンはアッシュに問いかける。
「眠り薬になるよ。でもあまりに強力だから『生ける屍の水薬』って言われてる」
さも普通かの様にリアンに答えるアッシュは、勿論教科書を事前に何回も読み返し、暗記している。答えると驚いたような顔をして、「さすがだね」と呟いた。
「わかりません」
ポッターは答えた。
「チッ、チッ、チ―有名なだけではどうにもならんらしい」
グレンジャーの手は無視され、スネイプはせせら笑った。
「ポッター、もう一つ聞こう。ベルアール石を見つけてこいと言われたら、どこを探すのかね?」
スネイプはまたそうポッターに聞いた。そしたらまたリアンが腕をつつき、顔を覗き込んでくる。それを、スネイプを少し指し、「ちゃんと聞け」とジェスチャーをする。
「わかりません」
「クラスに来る前に教科書を開いてみようとは思わなかったわけだな、ポッター、え?」
隅々まで、ポッターが覚えてるわけないのに。と思い、大人げないと呆れていた。
「ポッター、モンクスフードとウルスベーンの違いはなんだね?」
「わかりません」
そこまで行くと、堪えきれずにフッとアッシュは笑ってしまった。それをあざとくスネイプは見つける。
「グレドール、何がおかしい」
冷たい声でアッシュに問う。隣のリアンはやばいよっという風に何度も腕をつついてくる。
「いえ。最初の授業でいきなり、一年生で習わない内容が出るとは思わなかったので」
スネイプの冷たい眼にも臆することなくハキハキと言う。そう言うと目に見える様にスネイプの顔は引きつる。
「では、グレドール。君は解かるのかね」
「ええ。アスフォデルとニガヨモギを合わせると、眠り薬になります。でも強力な為、『生きる屍の水薬』と言われています。ベゾアール石は山羊の胃から取り出す石で、殆どの薬に対する解毒剤となります。モンクスフードとウルスベーンは同じ植物で、別名をアコナイトと言いますが、トリカブトの事です」
どうですか?と言わんばかりにニコッと微笑むと、スネイプは苦虫を噛み潰したような顔をした。
「正解だ。諸君、何故グレドールが言ったことを全部ノートに書きとらんのか?」
いっせいに羽ペンと羊皮紙を取り出す音が聞こえる。その音とかぶせる様にスネイプが言った。
「グレドールに一点やろう。ポッター、君の無礼な態度でグリフィンドールは一点減点」
点入ってないじゃんと思いながら、何も言わない事にした。
その後も魔法薬の授業はグリフィンドールとって良い物ではなかった。スネイプは生徒を二人一組にしたが、リアンと組むもんだと思ったのだが、無理やりネビル・ロングボトムと組まされてしまった。
「ねぇ、次は何をするの?」
「ああ、大鍋を火から降ろして・・・って‼」
ネビルが、鍋から火を下さないうちに山嵐の針を入ようとしている。
「やめろ‼」
そう叫んだのがいけなかったのか、ネビルはビクっと驚いて手を止めてしまった。そして、そのまま誰も止める事のなくなった山嵐の針は、鍋に入って行った。
咄嗟にネビルを身体とローブでかばう。
「っつ」
大鍋が割れた時に、アッシュは背中にぐっしょり薬を浴びてしまった。
「ア、アッシュ‼大丈夫‼」
大丈夫なわけないだろ‼と叫びたかったが、そこはアッシュ
「大丈夫だよ。ロングボトム君こそ大丈夫?」
と笑って見せた。
「バカ者‼おおかた、大鍋から火を降ろさないうちに、山嵐の針を入れたんだな?」
その後、ネビルに連れられて医務室に行くことに為った。
「これを塗って少し経てばすぐ直りますからね」
そう言って、校医のマダム・ポンフリーは背に薬を塗っている。その横でネビルは青くなって立っていた。
「ありがとうございます、マダム」
そうベットに腰かけた状態で恭しくお辞儀をすると、顔を赤くしていえいえと居なくなった。
「あの~」
「大丈夫だよ、そこまで悪くないから。心配しないで」
そうにっこり笑うとほっとしたようで、ネビルは顔に赤みが戻ってきた。
「アッシュ‼大丈夫か‼」
次の瞬間、扉を凄い勢いで開け、リアンが入ってきた。
「ああ、見た通りにそこまで酷くないよ」
「よかったー。まじでどこも悪くない?」
そう言って、アッシュの肩をがくがくと揺らす。
「うん」
そう言うと、揺らすのをやめて抱き付いてきた。それをやんわり剥がし、心の中で思う。
あぁ、面倒だ。
と。
後書き
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