美しき異形達
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第三十七話 川の中での戦いその十
薊の星の赤い符号が出てだ、死と敗北を示していた。
その敗北の証を出してからだ、こう言ったのだった。
「ただ炎を使うだけか」
「そうだよ、さっきみたいにな」
「武器を使って絡みつかせてか」
「そうして全身を一気に焼くんだよ」
「考えたものだな」
「あたしの棒は特別なんだよ」
七節棍は既に薊の手に戻っている、怪人のところに来てそうしてその手に棒を取り戻したのだ。
「七つに分かれていてな」
「それぞれの節が鎖でつなげられていてだな」
「そうだよ、その分伸びてな」
この特徴があり、というのだ。
「飛び道具みたいに使えたりな」
「今の様にだな」
「相手に絡めたり出来るんだよ」
「便利なものだな」
「ただ叩く突くだけしゃないのさ」
普通の棒と違い、というのだ。
「そうした使い方も出来るんだよ」
「成程な」
「だからな」
それで、とも言う薊だった。
「あんたにしたみたいにも出来るんだよ」
「腹に絡めそしてか」
「そこから一気に炎を繰り出す」
薊の力であるそれをだ。
「そして焼くなんてことも出来るんだよ」
「そういうことか、そしてそうしてだな」
「あんたに勝ったのさ」
勝利を喜ぶその笑みでの言葉だった。
「そういうことだよ」
「そうだな、見事だった」
「褒めてくれるんだな」
「貴様の勝利とわしの敗北を認める」
相反する様でそれでいて一つのことであるこのことをというのだ。
「そのうえで去ろう」
「苦しまなかったよな」
薊は勝利と敗北を認めた怪人にこのことも問うた。
「死ぬ時に」
「それはない」
これが怪人の返事だった。
「あっという間だった」
「ならいいんだけれどな」
「敵を苦しませる趣味はないか」
「あたしは拳法家だよ、拳法家はな」
「相手を苦しませないか」
「本当の格闘家は相手をいたぶらない」
ここでだ、薊はこの言葉も出した。
「そう教えられたしその通りだと思ってるからな」
「いい教えだな」
「お師匠さんに教えてもらったんだよ」
薊の拳法の、だ。
「そうしたこともな」
「成程な、道理でいい腕だった」
「拳法家はただ強いだけじゃ駄目ってな」
「心も伴ってこそか」
「心のない力は暴力」
薊はこの言葉も出した。
「暴力を自分よりも力が弱い相手に振るうのは下衆だってな」
「そうも教えられてか」
「いたぶることもな」
そうした行為もというのだ。
「下衆だって言われたからな」
「わしも苦しませなかったか」
「そうだよ」
まさにというのだ。
「それでなんだよ」
「いい教えだ、そしてそれを実践していることはな」
「そのこともかよ」
「いいことだ、そのことを言っておこう」
「悪いね、じゃあね」
「わしはもう終わりだ」
この怪人もだった、身体が灰にはろうとしていた。その中においての言葉だった。
「ではな」
「ああ、これでな」
「去る」
一言だった。
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