『曹徳の奮闘記』改訂版
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第六十話
「無謀にも程があるぞ夏蓮ッ!!」
伝令からの報告に俺は思わず叫んだ。
「どうする長門ッ!!」
焔耶が聞いてくる。
「………防ぐしかないだろうな。伝令ッ!! 合肥城にいるクロエと星達を至急呼んでこいッ!!」
「わ、分かりましたッ!!」
伝令が急いで合肥城に向かう。
「さて………俺達はあれを防ぐか」
俺は飛んでいる何かの場所を見る。
飛んでいる何かは人であり、我が袁術軍兵士だった。
「………しかも真っ直ぐこっちに向かっているし………」
どんたけ暴れているんだ夏蓮は?
「ハアァァァァァッ!!!」
『ギャアアァァァァァーーーッ!!!』
雪蓮の周りを囲んでいた兵士達が吹き飛ばされる。
………何処のバサラやねん。
別に関西弁使っても仕方ないだろうな。
まぁそれでも夏蓮は満身創痍と言っていいほど切り傷があり、至るところから血を流している。
「か……母様………」
駆けつけてきた母親に雪蓮が驚く。
「雪蓮。直ちにこの馬で砦に戻りなさい」
近くにいた馬を雪蓮に渡す。
「で、でも母様は………」
「私の事はいいから行きなさい」
「で、でも……………」
「いいから行けッ!! 孫伯符ッ!!」
「ッ!? ………分かったわ」
雪蓮が馬に乗る。
「………決着は御預けのようだな雪蓮」
俺は去ろうとする雪蓮にそう言った。
「………長門………」
「………本当なら雪蓮を捕縛したかったけど………代わりに夏蓮が戦うみたいだからな」
「長門………後で美羽達に怒られるな」
焔耶が溜め息を吐いた。
「それは仕方ない。後で罰でも受ける」
俺は刀を抜く。
「………ありがとう長門。雪蓮、早く行きなさい」
「………母様死なないで」
雪蓮はそう言って砦に向かって馬を走らせた。
「………そういえば夏蓮。片手が無いのにどうやって兵士を吹き飛ばしたんだ?」
「あぁ、私も氣を使えるからね。氣を槍の先に集めて地面に叩きつけばああなるから」
「………流石は江東の虎………だな」
………夏蓮、マジパネェな。
「あら、褒めても何も出ないわよ」
夏蓮は右手で構える。
「………………」
俺は牙突で構える。
「あら? クロエちゃんと同じ技は使わないのかしら?」
「片手無いが夏蓮には丁度いいと思わないか?」
「………それもそうね」
『………………』
俺と夏蓮は何も言わない。
「来ないの?」
「………なら来てやるよ」
俺は氣を脚の裏に溜めて一気に走り出した。
「………………」
夏蓮は突撃してくる俺に左手(まぁ手は無いが)で防御する。
ズシュゥッ!!
刀の切っ先が夏蓮の左腕に突き刺さった瞬間、俺は直ぐに横なぎの攻撃に移る。
ズシュゥッ!!
ブシュウゥッ!!
俺は夏蓮の左肩付近までに斬りつける。
斬りつけられた箇所から赤い液体が噴き出す。
「………どうした夏蓮? そのまま動かないで死ぬのか?」
出来ればこのまま降参してくれたら嬉しいんだがな………。
「………見切ったわ長門」
「何?」
夏蓮は構える。
「………見切ったかどうかは知らんがかわさないと意味がないぞ夏蓮。反撃出来ない勝利など絶無だッ!!」
「そんなのは委細承知よッ!!」
俺は再び牙突で攻撃するが、その瞬間、夏蓮が消えた。
「何ッ!?」
「貴方のその技の弱点は―――」
その時、俺の視界の右側から急に夏蓮が現れた。
「それは照準と突き手の反動過重を兼ねて前方に突き出す右腕よッ!!」
………やっぱ、これに気付いてたな。
「その右腕の外側に生じる一瞬の死角に滑り込めば、如何に足掻こうと貴方のその技は無効よッ!!」
夏蓮はそのまま俺の右肩付近に突き刺す。
ズシュゥッ!!
「チィッ!!」
俺は直ぐさま牙突に構え直して夏蓮に突っ込んだ。
後書き
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