東方魔法録~Witches fell in love with him.
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56.再会~She will confess her love to him.
前書き
明希のスペルカード名は小説サイト暁で活躍中の日陰の月さんから結構前に頂いたものを少し弄ったりしたものです。
僕はネーミングセンスがげふんげふんなのでとてもありがたいです。本当に有り難うございました!
日陰の月さんも東方の小説を書いていらっしゃるので良ければご覧ください。(露骨な宣伝)
―stage4―
美鈴と小悪魔に勝った霊夢と魔理沙は道案内をさせた。
美鈴はやることがあると言って何処かに行ったので、引率者は小悪魔だ。
「さあ、貴女のボスに会わせなさい」
「はいはい~私の主の所まで案内しますね~」
「なんだか嫌に聞き分けが良くて、含みのある言い方だな」
ニコニコと笑顔で小悪魔は受け答えする。なにかあると、霊夢と魔理沙は思いながらも小悪魔の後について行った。
通路を右へ左へと何度も曲がり、この館に初めて訪れる二人は案内なしでは帰れなさそうな程に進んで行く。
不意に振り替えると、何処までも続いていきそうな、窓もない不気味な廊下は現在地がわからない不安感を煽っている。
「広いわねー」
「なんか外から見た、大きさと合わなくないか?」
「ウチには空間をいじるのが趣味の人がいるんです」
そうしている内に度々見かけた部屋のドアとまるで違う大きな扉の前までやって来た。この部屋だけ、明らかに存在感が違う。
「いよいよね」
「さて、どんな化け物がいるのやら」
「うふふ、では入りますね」
小悪魔はドアを二回、コンコンと鳴らして言った。
「パチュリー様ー、明希様ー。入りますよー」
「え…?明希…様?おい、そこの悪魔…」
魔理沙は自分の師匠の名前を耳にして、そのことを確かめようと小悪魔に言い寄ろうとするよりも扉が開く方が早かった。
そして、魔理沙は小悪魔にそのことを聞くまでもなく、その真意を知る。
「お、魔理沙じゃん」
「し、師匠!?」
広い図書館だが、扉から見える位置にある椅子に足を組んで座っていたのはこの小説の主人公、明希である。
魔理沙と出会って、そして別れてから約10年は経つが全く見た目が変わっていない。
日本以外の外国から幻想入りしたのにやたらと日本に詳しく、黒髪で黒目。日本人かと思えるその人が、辛うじて外国出身だと思えるのは顔つきだけだ。座っている様が非常に絵になる少年である。
そしてその隣には紫色のわがままボディ、パチュリーが座っていた。
彼女はしなだれかかるようにして明希に寄りかかっている。
氷妖精との戦いの時に霊夢が取った行動(氷)より驚くことがないと思っていた魔理沙だったが、その時以上の驚きが全身を支配していた。
それは視界に入る紫色が気にならない程に。
「「「師匠?」」」
霊夢、小悪魔、パチュリーの声が重なった。
「ああ、魔理沙が何時も言ってた魔法の師匠ね」
初めに魔理沙と明希の関係に気がついたのは霊夢。
霊夢は魔理沙から耳が中耳炎になるほど『師匠』のことを聞かされていたので、直ぐに思い当たった。
「えっと、確か明希の弟子とか言う…
」
次に思い当たったのはパチュリー。
10年程前のことだが、弟子が出来たとか言って番いとイチャイチャする時間が減ったことで憤慨していたので記憶に残っていたのだ。
「い、…いやそれよりも。し、師匠がこの異変の黒幕なのか?」
どうしてここにいるのか、など色々話したいことがあった魔理沙だが、出て来た言葉がこれ。
今回の異変はどちらかと言うと、悪に傾く所業だ。それを優しかった自分の師匠がしていたなんて信じられなかったし、信じたくもなかった。
「いや?違うよ?」
が、否定の言葉があっさりと明希から出てきた。
その言葉を聞いた魔理沙は心底安心し、同時に何を話そうか迷って言葉が詰まっていた。
その変わりに、霊夢が話した。
「違う?じゃあ、そこの紫色が?」
「違う。霧を出したのはこの屋敷の主」
「はぁ?どういうことよ。…そこの悪魔!説明なさい!」
半ギレで案内役の小悪魔に指を指す。
待ってましたと言わんばかりにニコニコしながら、小悪魔は悪びれる様子もない。
「ですから、私の主はパチュリー様でこの館の主は御嬢様。別のお方なのです♪」
「………どちらにせよ、倒せば分かることよ」
拳を握りしめ、怒りで肩をプルプルと震わせ爆発寸前。
臨戦体制に入った霊夢を見て、明希も椅子から立ち上がった。
「魔理沙、どのぐらい成長したか見てやるよ。ついでにそこの巫女の実力も」
「ふぇ!?あ…、おう!」
「ついでって何よ!偉そうに!」
そして明希はパチュリーをお姫様抱っこをした。パチュリーは明希の首に腕を掛けて捕まった。
「……なに?その格好で戦うって巫山戯てんの?」
「いやいや、パチュリーは喘息なんだ。激しい運動は控えるためだよ」
「そう、病気のせい」
二人はそう言うが必要以上に密着してイチャイチャしているのは、霊夢と小悪魔の目にも明らかだった。魔理沙は軽く混乱しているため、その様子に気づくことは無かった。
霊夢は怒りマークをこめかみに浮かべ、弾幕を張った。
それに対し、明希とパチュリーは息ピッタリにスペルカードを宣言した。
四緑「木々揺れる木星の風」
火符「アグニシャイン上級」
連なった緑色の小玉が漫画などでよくある効果線のような動きをして、さらには炎弾も風に吹かれたみたいにして動き始めた。
2つのスペルカードはただ、弾幕の密度を上げるだけにとどまらず、お互いの効果まで良く影響している。
早い話が、抜群のコンビネーションであると言うことだ。
「くっ、偉そうにする事だけはあるわね」
「流石師匠、強い…!」
そういいつつ、何とか通常弾幕で二人はスペルを破った。
――SpellBrake!!――
「まあ、まだ軽い運動だよ」
五黄「穢れた大地の浄土」
水符「ベリーインレイク」
黄色い極細レーザーがVの字になって移動を制限し、青色のレーザーも∧の字となって移動を制限する。結果的に動ける範囲はひし形となり、本当に狭い。
そして追い打ちをするかのように青色と黄色の小玉と中玉が放たれる。
「あー!もう!イライラするスペルカードの組合せね!」
「名付けて………。何にしよう?」
「黄水「水没忘却のピュアランド」なんてのはどう?」
「いいね、ひし形を島と見立てたのか。即興にしてはいいものが出来た」
「これが即興だって言うのかよ!?」
必死に避けている霊夢と魔理沙に比べ、余裕の明希とパチュリー。
それでも、余裕はないが、異変解決専門の博麗の巫女と魔法使いの弟子、魔理沙は被弾せずにスペルを破った。
――SpellBrake!!――
「さあ、そろそろ被弾させにいくよ」
一白「夏至の大洪水」
土符「トリリトンシェイク」
青白いレーザーが縦に降り注ぎ、レーザーの軌跡から小玉が溢れた。
パチュリーをお姫様抱っこで抱えてる明希の回りを黄色い中玉が囲い、一定間隔で放ちながら小玉も大量にばら蒔く。
「いちいち気障ったらしいのよ!」
霊夢は明希の事が気に入らないのか、明希に噛みつく。
魔理沙はと言うと自分のことで、いっぱいいっぱいとなり、会話をする余裕さえない。
――SpellBrake!!――
「ん、よくやる」
「じゃあ、アレやろうかパチュリー」
九紫&金符「銀竜のヘルファイヤ」
明希の九紫「梅雨殺しの業火」とパチュリーの金符「シルバードラゴン」を合成させたスペルで、先ほどまでの2つのスペルカードを同時に発動させたのとはワケが違う。
初めから二人が1つのスペルカードを発動させる為に用意したもので、弾の軌道、相手の移動パターンが計算ずくのスペルカードである。
地獄の業火の名に相応しく、銀色の炎弾が(避ける為の隙間はあるが)ところ狭しと並んで炎を型通り、ゆらゆらと揺れる。その激しい動きに二人は翻弄された。
―チチチチチチチ!!!!!!!―
被弾ではないが、弾が掠る―グレイズをする音が五月蝿いほど鳴り響いた。
ただ、このスペルは短めに設定されていたようで、直ぐに時間切れになった。
「あっぶないわね」
「避けてばっかじゃなくて攻撃してきなよ」
「言われなくても!」
「ちょっと遅くなったけど、私の魔法を見てくれ!師匠!」
夢符「封魔陣」
魔符「スターダストレヴァリエ」
封魔の札が四角形を作って陣となり広がって行く。
もう1つのスペルは強力で巨大な星々が大きくなりながら広がっていく。
「うわ…すごい霊力と魔力…。正直当たりたくないなぁ」
「人間なのに凄いねの、あの二人」
明希とパチュリーは二人の実力に素直に感心していた。
相殺するためにスペルを宣言。
三碧&日符「彗星Elenin(エレニン)」
三碧「桜月の蒼き雷」と日符「ロイヤルフレア」を合成したスペル。
巨大な大玉を高速で発射させ、尾を引くようにレーザーが軌跡として残る。
二人の弾幕と二人の弾幕がぶつかり、激しい閃光を伴って――消滅した。
「うんうん。消滅した彗星の名に相応しい働きだよ。
それより魔理沙、よくやるようになったじゃん」
「え?えへへ…」
「星を型どった魔法にしたんだ?」
「うん。師匠の九星は五行由来だってことは知ってるけど、星を借りたんだ」
「そっか、言葉使いも大分変わったし成長したなって実感するよ」
「……明希、発言が年寄りっぽい」
「(|| ゜Д゜)」
パチュリーの言葉に明希はショックを受けた。ちょっと言い過ぎたかなと思ったパチュリーは明希を励まそうと腕を伸ばして頭を撫でた。
二人とも戦闘中だと言うことを忘れている。
「ちょぉぉっといいかなぁぁ!?まだおわってないんんんだけどぉぉ!!?」
見せ付けてんのかコイツら!?と怒れる巫女。
「………!?」
本当に今さらだが、二人が仲良さそうな光景を見て魔理沙は、複雑な思いをした。
もしかしなくとも師匠とこの紫色の女は仲が良いのでは、それも友達以上に。
「あ、パチュリー様、明希様。本棚の結界がもう持ちません~」
「そうか、残念だな次で『最後』にしよう。二人とも良かったよ」
「まるで自分が勝って当たり前みたいなセリフね。私、本当アンタ気に入らない」
七曜九星「賢者の凶星」
七と九つのオブジェクトから大量に弾幕が張られる。
鬼の形相で構えた霊夢と違って、魔理沙は未だに呆けていた。
「ちょっと魔理沙なにしてんのよ!?」
魔理沙の頭のなかで反芻していたのは、耳にした『最後』という言葉。
人間は、時に激しい勘違いを起こす。原因は話を聞いていなかったり、思い込みのせいでもある。魔理沙も漏れなく勘違いを起こしていた。
―もしかすると、今度こそ会えなくなるかもしれない―
そんなのは嫌だ!折角また会えたのに、私はキョドってマトモに話も出来やしなかった!
この気持ちを伝えることだってしていないのに!
私の魔法のモチーフは2つ、星と××。どっちも師匠の事を考えてたら選んでた。
星は師匠の九星から取ったって言ったけど、半分本当で半分は嘘。
口に出すのは恥ずかしいけど、本当は師匠が輝く星のようで、その星を手にしたかったから。
その輝きは、私には××に見えてとても煌めいていた。
でも、何時だって星は遥か遠く、掴むことは出来ない。
もしかすると一生届かないかも知れない。
けれど、星に祈る事はできる。×焦がれる事は出来る。
そして切なくなって叫ぶんだ。
「し、師匠!」
「ん?なに魔理沙?」
「好きだぁぁぁあああ!!!」
恋色「マスタースパーク」
「「「「……はあぁぁぁあああ!!??」」」」
魔理沙からすれば色々悩んだ結果、耐えきれなくなって叫んだ告白だったが、周囲の四人は脈絡もなく魔理沙の告白を聞いて心底驚いて固まっていた。
しかし、四人の叫びは魔理沙の放つ超極太レーザーの発射音に掻き消された。
そしてパチュリーをお姫様抱っこしたまま、驚きで動けなくなった明希をマスタースパークの光りが包み込んだ。
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