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ハイスクールV×D ライド26
ソーナからの連絡を詳しく言うとコカビエル達が四季の予想通り動きを見せたらしい。
態々リアス……と言うか一誠の家まで乗り込んで宣戦布告したそうだ。その際、聖剣使いの一人、紫藤イリナが戦闘不能の状態で運ばれてきた様子だ。
なお、幸いにも木場とゼノヴィアの二人は無事に逃げられたらしい。その辺は四季の予想よりも健闘できたと言ったところだろう。だが、イリナの持っていた擬態の聖剣はフリードと言うはぐれエクソシストに奪われたそうだ。なお、フリードが言うには奴は一人で四本の聖剣を持っているらしい。
これで、四季のブラスター・ブレードで切り裂かれて剣としての機能は低下しているとは言え、天閃の聖剣、夢幻の聖剣、透明の聖剣の四本の聖剣を相手にする必要が出来た。
「まあ、人間が四本も剣持っても意味無いだろうに」
「そうよね」
二刀流は兎も角、漫画じゃ無いのだから三刀流は無理だろうと思うし―遭遇した時のフリードのいかれ具合からやりそうだとは思う―、人間の肉体の構造上四本も持っていても意味無いだろう。
だが、エクスカリバーを集めているエクスカリバーマニアの真の目的はエクスカリバーを一つにしてオリジナルに限りなく近づける事にあるのだろう。いや、四つのエクスカリバーの能力を持ったそれは、かつて折れたカリバーンをカリバーン改として生まれ変わらせた事の再現と言えるのでは無いかと思う。……もっとも、七つに分けられてしまった聖剣の内の四本しかないが。
だが、分からない事が有るとすれば、何故コカビエルが聖剣を集めているのかだ。……間接的と言うよりもリアス達からソーナに伝えられた情報から分析する限りでは、コカビエルのイメージは『戦争屋』に尽きる。とても、エクスカリバーを集める理由が浮かんでこない。
「詩乃……」
「当然、私も行くわよ」
「……。頼りにしてる」
出来る事ならば彼女には此処から離れて貰いたかったが、それは彼女にとって受容れがたいだろう。ならば……
「カイザード」
『呼んだか、四季?』
通信機を取り出してもう一人の相棒へと繋げる。
四季と詩乃の二人が駒王学園の前に着いた時、そこには木場を除いたグレモリー眷属全員とソーナ、匙の二人に生徒会副会長でシトリー眷属の『真羅 椿姫』の三人の姿が在った。
「来ましたね、五峰くん、朝田さん」
四季達二人の姿を確認したソーナがそう声を掛けると、妙に敵意に満ちた視線が一誠から向けられるが、その辺は全面的に無視しておく。
「ひとまず私達生徒会が結界を張り学園外への被害を抑えています。ですが正直言ってコカビエルが本気を出せば学園のみならずこの街その物が崩壊するでしょう」
ソーナの言葉に四季は内心で同意する。生徒会の張った結界もコカビエルの力ならば突破するのも容易いだろう。それをしないのは、単純にリアス達に行なった宣戦布告の為に待っているのだろう。
「ですが正直言って、コカビエルが本気を出せば学園のみならず、この街そのものが崩壊するでしょう。更に言うならコカビエルは既にその準備に入っている様です」
「戦争の為に街を破壊するって訳か……支取会長、魔王サマへの連絡は?」
四季の問いに無言で返すソーナとリアスの二人。
「ソーナだってお姉さまを呼ばなかったじゃない」
「会長は仕方ないにしても、あんたもか……リアス・グレモリー」
「サーゼクス様には既に打診しましたわ」
呆れたように呟く四季の言葉を訂正するように朱乃がそう告げる。
「ちょっと朱乃、勝手な事を!」
その後の二人の会話を聞く限りではどうもお家騒動がこの非常事態での兄への連絡を躊躇させていたらしい。
「バカか」
「バカとは何よ!」
「当たり前だ。此処で二人揃って連絡していませんって話だったら、オレ達は迷わず逃げさせてもらってた」
はっきり言って四季はコカビエルと正面から戦って勝てる等と思っているほど自惚れてはいない。四季にとっての敗北は詩乃を失う事だ。だからこそ、例え依頼とは言え勝ち目のない戦いに飛び込むほどバカではない。
「なんだよ、ひびったなら帰れよ」
「ああ、怖いね。オレにとって“敗北”ってのは死ぬよりも恐ろしいんでな」
四季にとって敗北とは死ぬ事では無く、大切な者を失うという事。
「お前達がフェニックスの連中と戦った時とは全て違う。敗北は死、負けたら結界の外でリタイア、なんて事は無い」
そう言って手の中に超兵装ブラスター・ダークを出現させる。聖剣に光の超兵装をぶつけるよりも影の超兵装であるブラスター・ダークの方が良いだろうと判断した結果である。
「それで支取会長、まさかコカビエルがオレ達を……と言うよりもグレモリーの連中を待つ間、ゆっくりとお茶してる……って訳じゃないですよね?」
「ええ、この街そのものを崩壊させる、その準備に入っているようです。校庭で力を解放しつつあるコカビエルの姿を私の使い魔が捉えました」
「最悪の予想が当たったわね」
「ああ、あの戦争狂ならやりそうだとは思ってたけどな」
ソーナの返答に詩乃が四季の予想が当たっていた事に思わず感嘆の声を上げる。
「なっ……そんな規模の話なのか……。戦争がしたいからオレ達の学園を、街を破壊する? ふざけんなっ! 好きにさせてたまるかよ!」
(ブラスター・シリーズ。今回ばかりはオレの全てを飲み込んででも、力を貸してもらう)
この場に詩乃が居なければ逃げる方法も考えていたところだが、詩乃がこの場に、この街にいる以上、勝つ方法を模索する以外の選択肢などあるはずが無い。たとえ、ブラスター・シリーズの力に精神を、魂を食い尽くされようとも……。
「私達は外への被害を抑えるため、所定の位置について結界を張り続けます。学園が傷付くのは耐え難いですが、相手は堕天使の幹部。相応の覚悟をしなければならないでしょうね……」
「ありがとう、ソーナ。後は私達が何とかするわ」
悲痛な覚悟を決めているソーナを他所に四季は内心で学園が壊れる事は覚悟する必要が有るだろうと思っている。流石にソーナには悪いが学園の被害を抑えるという点は優先順位は低い。
最優先は街の防衛、これはグレモリー眷属の女王である朱乃が連絡したリアスの兄である《サーゼクス・ルシファー》が来るまで時間さえ稼げれば良い。
次いでエクスカリバーの破壊とコカビエルの討伐。元々の依頼でも有ったし、何よりコカビエルを倒せれば全て終る。街の防衛こそ可能だが、コカビエルの撃破はほぼ不可能に近いであろうことは理解できる。四季だけの力では。
(“惑星クレイの英雄達”の力を借りられれば勝ち目は有るけどな)
カイザード達には別に頼んでいる事があるし、元々の彼等の目的も有る。その為に下手にそちらの戦力は削る事はできない。残る手段は守護竜の宿した神器の力だが……
(オレは、オレの力だけで戦いたい)
そんな考えが力を使うことを躊躇させてしまうのだ。
「サーゼクス様の加勢が到着するのは一時間後だそうですわ」
朱乃の言葉が響く。一時間……短いようで長い時間、コカビエルと言う強敵を相手に最低でも一時間の間戦わなければならないのだ。
「一時間……分かりました。その間、私達生徒会はシトリー眷属の名に賭けて、結界を張り続けて見せます」
タイムリミットを聞かされたソーナは四季と詩乃の二人へと向き直る。
「二人もリアス達に協力してください。本来なら、無関係のあなた達を巻き込むのは申し訳ないのですが……」
「いや、流石に街が崩壊するって状況だからな……仲間も呼びたい所だけど、それには時間が無い」
近いとは言えこの時間に呼びつけるのは時間的に無理だろう。
「諍いが有ると言うのは匙から聞いていますが、それでも今だけはそれを忘れてどうか協力してください」
「ああ」
「ええ」
その言葉に同意しながらも四季としては内心で『向こう次第だ』と付け加えておく。流石に攻撃されたらしっかりと反撃はする。
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