DQ3 そして現実へ…~もう一人の転生者(別視点)
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娘と父
私は彼に全てをさらけ出し、彼は私の全てを受け入れてくれた。
隣で気持ちよさそうに眠る彼の顔を覗き、心からの幸せを感じた私は、室内に散らばった衣類を手繰り寄せ着直すと、海風香甲板へと出て行く…
「コラコラ…子供が起きている様な時間じゃないぞ!」
そこには私のことを待っていてくれた人影は一人…
「知ってるんでしょ…私は子供じゃありません」
甘いココアを用意しておいてくれた父は、優しい笑顔でカップに注ぎ手渡してくれる。
「ありがとうお父さん………うん、暖かい…」
一口飲み、甘い香りの湯気を顎に当てて幸せを噛み締める。
「ふふふ…心はともかく、身体は子供なのだから睡眠は必要だよ……………つーかやりすぎだよ!身体は子供なんだからね!7歳児だよ!エッチは控えなさい…」
ゔ…や、やっぱり臭うかしら!?
「な、何よ急に…何を根拠に!?」
「臭うよ…さっきまで頑張ってたんだろ…分かるよ、臭いで!」
くっ…香水で拭ってくればよかったかしら?
あぁでも…中にいっぱい入ってるからなぁ…
「ちょ、セクハラよ!」
分かってても言わないでよ!
「違うよ…娘に対してだからセクハラじゃないよ」
「もう…ズルイ…」
すっと私を娘扱いして…
恥ずかしさからか暫く沈黙している。
何かを言わなければならないのに、何を言えば良いのか…
「ねぇお父さん…何時頃気が付いたの?」
本当はそんな事どうでもいいの…
感謝の言葉を言いたいのだけど、何だか恥ずかしくて…
「初めて出会ったその時からだよ」
初めて?………それって、
「…それは嘘よ!あり得ないもの!だって…」
だって初対面って私が生まれて時でしょ!?
私、何もミスしてないわよ!
「嘘じゃないよ…だってあの時『今すぐ私の処女を奪って!』って、いきなり僕に向けて叫んだでしょ!?」
「え゛!?お父さん…赤ん坊の言葉が分かるの!?」
言った…確かに言ったわ…でも、赤ん坊の泣き声みたいな物で、言葉にはなってなかったわよ!?
「いや…普通は分からない。リューラやリューノの時は、何言ってるのか分からなかった…でもマリーの言葉は分かったんだ!その後ティミーに向けて『きゃー超私好みの男の子!今すぐ喰べちゃいたい!』って言ってたし…」
何だその隠し能力は!?
「う、迂闊だったわ…お父さんにそんなチート能力があったなんて…ズルイ…」
「チート?」
「い、いえ…こっちの話です………では何で今まで気付かないフリをしていたの?」
そう…気付いているのなら、直接言ってくればいいのに!
「え?気付かないフリ!?…いやむしろ『気付いてるよ』ってアピールしてたじゃん!気付かなかった?」
はぁ?何時………………あ!
「………それって、子守歌に『ギザギザハートの子守歌』を歌ったり『ヤホーで検索する』って言ったりの事?」
「そうだよ!お前以外には通じないだろ?」
た、確かに…他の人が聞いても面白いとは思えないわよねぇ…
「た、単なる電波かと思ってたわ…」
「酷っ!」
酷くないわよ!
だってお父さんはそう言うキャラじゃん!
私もお父さんも暫く笑い続けていた。
そして笑いを納めると、
「そっか…私が勝手にバレない様努力しちゃったんだ…」
私は自分の愚かさを再認識する。
転生者=他人…だから知られてはいけない。ヒミツにしなければならない!
そんな考えを持っていたことに…
「転生者であろうと無かろうと、お前は僕の掛け替えのない娘なのだから、気にする事なかったのに…」
私の心を読んだかの様に、優しく抱き締めてくれるお父さん。
暖かくて感心する温もりが心地良い。
「でも教えて欲しい事が1つある…この世界はドラクエなのか?…てっきりエンディングを迎えたと思っていたのだが…まだ続くのかな?」
え!?何を言ってるのかしら?ドラクエを知らないの?うそ~ん…
「え?お父さん、ドラクエ3知らないの!?」
「3!?…あれ、おかしいな…僕はドラクエ5に転生したと思ってたんだが…?」
「うそ!?お父さんはアノ国民的超大作ゲーム『ドラゴンクエスト』をプレイした事ないの!?」
マジだ!?
この人はドラクエを知らないんだ!?
そんな日本人が居るんだ!?
「無い!兄貴や友達のプレイを横で見た事は数度あるけど……ゲーム画面見つめるより、女の子の瞳を見つめてた方が楽しいし!」
意味分からん!
ゲームと女の子の瞳を同系列で考えるって…意味分からん!!
「お父さんは転生前から、そんな性格だったのね…」
「当然!生まれ変わったって性格までは変わらないよぉ!」
確かにその通りだ。
「うふふ…お父さんらしい………じゃぁ、簡単に説明するわね。今居る世界は『ドラクエ3』の世界なの。で、お父さんが生まれた世界…つまりグランバニアがある世界は『ドラクエ5』ね!そしてドラクエ5は、私が生まれる前…ミルドラースを倒した所でエンディングしたのよ!」
「へー…何で『5』の後に『3』になったんだ?普通、逆じゃね?っか『4』は?」
確かにそうなんだけど…
「そんなの分からないわよ、私にだって!…本来、『3』にはお父さんも私も登場しないんだからね!イレギュラーなのよ…」
う~ん…でも『4』の世界も冒険してみたいわねぇ…
ウルフと一緒だったら楽しい旅になりそうだし。
「ふ~ん…」
私の説明には興味をそそられない様子で、相づちを打つ父…
妄想の内容など更に興味ないだろうなぁ…
「…興味ないみたいね、お父さん…」
「どっちかつーとね!…今、僕が興味を持ってるのは、我が子の色恋事だからねぇ…見てて面白い!」
我が子の…って、私のは順調よ!
数に含まないで欲しいわね。
「我が子の…って事は、私のも含まれるんでしょ?…面と向かって言わないでほしいわね…」
「ウルフの事好き?」
嬉しそうな瞳で私の顔を覗き込み、ストレートな質問をぶつけてくる。
「うん…私初めて人を好きになった!」
「幸せ?」
「すごく幸せ…人を好きになるって、凄いね!こんなに幸せな気持ちになれるんだ!」
この人に嘘は吐けない…
「良い男に巡り会えたな!心はお前の方がお姉さんなんだから…苛めるなよ」
楽しそうな表情で私達をからかうお父さん。
「その台詞、そっくり返しますぅ!お父さんこそ、お兄ちゃんみたいにからかわないでよ…」
「…約束は出来ない…だってティミーとウルフって、似てる所があるんだもん!」
「否定はしないけど、お兄ちゃんより女の扱いに慣れてるわよ」
「逆に困るなぁ…君達まだ若すぎるんだからね!お前7歳なんだよ、まだ!」
「うふふ…気を付けま~す!」
でも心はもう大人よ!
気付くと遠くの水平線から、白けた光が差し込んでくる…
夜が明ける時間だ。
「じゃぁ…私そろそろ戻ります。起きて隣に私が居ないと、ダーリンが寂しがるから」
他の姉妹みたいにファザコン扱いされても困りますし…
「ウルフに『昨晩はベットを抜け出して何処に行ってたの!?』って問いつめられたら『お兄ちゃんとエッチしてました♥』って言うんだぞ!」
何でだよ!(笑)
「あはははは、バ~カ!『お父さんに押し倒されたの!』って、泣きながら言うわよ」
そうか…父親って言うより、優しくて仲の良い近所のお兄さん的な感じがするから、他の姉妹は惚れてるのね…
やっと分かってきたわ。
私は笑い終わり船室へと移動する。
今日、初めて父のことを理解することが出来た。
だから告げなければならない…私の本当の気持ちを。
「お父さん!私のお父さんになってくれて、本当にありがとう!私、お父さんの事が大好きです!」
言っておいて恥ずかしくなる私…
どんな答えが返ってきても、恥ずかしすぎてまともにお父さんを見られないだろう…
だから慌てて船室へと駆け戻る。
自室へ入ると、ウルフがベッドの縁に腰掛け迎えてくれた。
「お帰り…お父さんへの挨拶は済んだみたいだね…言うまでもないけど、あの人は最高に良い父親だよ。…まぁ娘にとっては…だけどね!」
あぁ…私は今、最高に幸せです。
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