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戦国異伝

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第百九十五話 長篠の合戦その九

 彼等は果敢に戦っていた、そしてだった。
 武田に柵を倒させない、家康が自ら先頭に立って叫んでいた。
「よいか、このままじゃ!」
「はい、柵を倒させずに!」
「それで、ですな!」
「このまま攻めよ!」
 まさにというのだ。
「よいな!」
「はい、それでは!」
「ここは何としてもです!」
 家臣達も家康の言葉に応えてだった、そのうえで。
 少ない鉄砲も弓矢もだった、必死に使い。
 短い織田家の槍と比べてそうであるそれも使ってだ、武田を防いでいた。
 物見からそのことを聞いてだ、柴田も佐久間も唸る様にして言った。
「流石徳川殿じゃな」
「全くじゃな」
 二人で言うのだった。
「幾ら兵や鉄砲が少なくともな」
「その戦意で戦っておられるか」
「そうされておられるか」
「それではな」
 佐久間がここで柴田に言った。
「我等もじゃな」
「徳川殿に負けない様に戦おうぞ」
「武田の兵を寄せ付けず」
「そのうえでな」
 こう話してだ、そしてだった。
 織田の軍勢は鉄砲を軸として武田の突進を防いでいた。弓矢も長槍も使いそうしてなのだった。昼になり手が空いている兵達からだ。
 慌ただしく飯を食った、その中で。
 信長も飯を食いだ、こうも言った。
「飯は食うのじゃ」
「忘れずに、ですな」
「それは」
「その為に飯を炊かせておる」
 陣の後ろに煙が無数に立っている、飯を炊いているそれが。
「そして飯を握らせておるからな」
「その飯をですな」
「我等も食い」
「そのうえで」
「食わねば動けぬ」
 飯、それをというのだ。
「だからな、手が空いたなら誰でもな」
「食って、ですな」
「そうして」
「水を飲むことも忘れはならぬ」
 これもというのだ。
「ではな」
「はい、それでは」
「皆に飯を食わせつつ戦い」
「では、ですな」
「そのうえで」
「戦いじゃ」
 そして、というのだ。
「勝つぞ」
「やはり飯はですな」
「欠かせませぬな」
「飯を食わねば、ですな」
「どうにもなりませんな」
「そうじゃ、それでじゃ」
 それでというのだ。
「食うのじゃ」
「ですな、それでは」
「このまま」
「時を見付けて食うのじゃ」
 こう話してだ、そしてだった。
 織田の軍勢は食いながら戦うのだった、それは武田の軍勢も同じだ。信玄も空いている兵達に飯を食わせていた。その彼等の飯はというと。
「干飯をな」
「はい、水をかけ」
「そして食い」
「そうしてですな」
「腹に入れるものを入れて」
「続けるのじゃ」
 彼もこう言うのだった。 
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