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ドリトル先生と学園の動物達

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第五幕その九

「僕は何も出来ないよ」
「独裁者になったら」
「忙しいからね」
 先生はトートーにも言います。
「一日四時間しか寝られないとかね」
「それじゃあもうお茶も」
「忙しくて飲めないだろうね」
「三段のティーセットもだね」
「僕にとっては毎日ないと駄目だけれど」
 それもだというのです。
「忙しいと楽しめないだろうね」
「先生ってね」
「ティーセットも絶対に必要だからね」
 チープサイドの夫婦も言うのでした。
「それも三段のね」
「そうだよ、お茶と三段のティーセットがないと」
 それこそ、なのです。先生は本当に。
「駄目だよ」
「つまり今みたいにだよね」
「そう、気楽にのどかにね」
 暮らしていきたい、それが先生のささやかな願いです。
「ティータイムも楽しんで」
「そうそう、だからね」
「先生は独裁者になれないね」
「あらゆる意味でね」
「向いていないどころじゃなくて」
 チープサイドの子供達もその通りだと両親の言葉に頷いています、そうしたことをお話してなのでした。 
 ガブガブはホワイティにです、こう尋ねたのでした。
「独裁者って軍服着るよね」
「ああした服をね」
 ホワイティもガブガブに答えます。
「ヒトラーもスターリンも着てたね」
「ムッソリーニもだったね」
「そうだよ、独裁者は軍服を着ることが多いよ」
 全部の独裁者がそうではないですがそれでもです。
「けれど先生はね」
「先生が軍服ねえ」
 ガブガブは首を傾げさせました。
「何かイメージ出来ないね」
「全くね」
「先生がヤクザ屋さんになることも考えられないけれど」
 さっき先生が言ったそのこともなのです。
「軍服もね」
「想像出来ないね」
「全然ね」
「本当に先生は生成だよ」
 それに尽きました、老馬も先生に言います。
「先生、今日は何か深いお話になったね」
「そうなるかな」
「ヤクザ屋さんのこととか独裁者のこととかね」
「別に深い話をするつもりはなかったけれどね」
 それでもだと言う先生でした。
「そうなったかな」
「そう思うよ、わしは」
「少なくとも僕は独裁者でもヤクザ屋さんでもないから」
「先生にはどっちもね」
「無縁だね」
 オシツオサレツも二つの頭で先生にお話します。
「先生は先生」
「それ以外の誰でもないよ」
「穏やかで温厚なね」
「僕達の先生だよ」
「うん、これからもそうありたいね」
 まさにと言う先生でした。
「僕にしても」
「うん、独裁者になんかならないで」
「ずっと先生でいてね」
「そうじゃないと何か違うから」
「そういえばですけれど」
 ここでトミーが思い出したことはといいますと。
「ヒトラーって最後の最後に結婚しましたよね」
「エバ=ブラウンとね」
 先生はトミーのその言葉に答えました。 
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