ヒキガエルのジャクソンさんのお話
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第三章
その中で、です。アーサーさんは隣にいるジャクソンさんにこっそりとなのでした。お水の中にちょっとお顔を出して子供達の動きを見ながら尋ねました。
「若しもだよ」
「若しもというと?」
「人間の子供に捕まったらどうなるのかな」
「だからあれじゃろ」
「食べられるより酷いことになるんだね」
「人間は怖いぞ」
それこそ水鳥や蛇達と同じ位か下手をすれば彼等以上にです。
「油断したら踏み潰されるしのう」
「そうそう、無駄に大きいからね」
「わし等では勝てん」
人間にはです。
「だからな」
「ここは隠れていてね」
「そしてやり過ごすしかないわ」
「ううん、水鳥も怖いけれど」
「人間も怖いわ」
「僕達には勝てない相手って多いね」
「幾ら集まってもな」
そうしてもというのです。
「人間には勝てん」
「だから隠れるしかないね」
「全くじゃ、しかし」
「しかしって?」
「若しもここに人間達が来たら」
その時はというのです。
「皆動かん方がいいぞ」
「動いたら気付かれるからだね」
「だからだね」
「そうじゃ、動かん方がいい」
だからだとです、ジャクソンさんはアーサーさんだけでなく他の皆に対してもこう言ったのです。
「隠れていることじゃ」
「よし、それじゃあ」
「じっとしていよう」
「何があっても動かない」
「人間達が何処かに行くまで」
「ここの水草は茂っておる」
このことも言うジャクソンさんでした。
「それにわし等は水の中に殆ど隠れておる」
「見付かることはだね」
「ないね」
「動かんかったらな、人間の足が来ても水の中に潜ってかわせばいい」
そうしてというのです。
「だから出来るだけ動かんことじゃ」
「じゃあジャクソンさんの言う通りね」
「動かないでいくよ」
「人間の足が来たらかわす位で」
「それ位にしてね」
「そうすればかえって見付からんのじゃよ」
こう皆に言ってでした、ジャクソンさん自身です。
動かないでそのままじっとしていました、その間にです。
人間の子供達は湖のその水草のところに来ました。そして子供達は子供達であれこれとお話をしていました。
「何もいないね」
「そうだね」
「何かいるって思ったけれど」
「全然何もいないね」
「蛙もね」
他ならぬジャクソンさん達のことです。
「折角ここまで来たのに」
「今日は何もいないね」
「鴨があっちにいるよ」
子供の一人が湖の真ん中の方を指差して言いました。
「あっちにね」
「あっ、いるね」
「けれどね、今はね」
その鴨達がいることがわかってもでした。
「あっちまでは行けないね」
「うん、無理だね」
それはとです、子供達は残念そうにお話しました。
「船がないからね」
「船があってもね」
「お兄ちゃん達がいないからね」
「僕達じゃ船は漕げないからね」
「オールはね」
「折角水鳥がいるのに」
「あっちまでは無理だよ」
こう残念そうに言うのでした。
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