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ボスとジョルノの幻想訪問記

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⑨爆撃注意報 その①

ボスとジョルノの幻想訪問記16

あらすじ

 結局衰弱死してしまったボス!
 時は遡って永遠亭の中ではジョルノと妹紅が再起し、紅魔館へと向かった!
 留守を任されたてゐは戦闘不能の永琳と鈴仙を守りながら二人の無事を願うのであった!
 あと姫様いつ起きるんですか?

*   *   *

 ボスとジョルノの幻想訪問記 第16話

 ⑨爆撃注意報①

 黄金の精神を持つ男、ジョルノ・ジョバァーナと人生波瀾万丈、藤原妹紅は竹林を歩いていた。

 妹紅は竹林のことを熟知しているため、道案内はお手の物である。おかげでジョルノたちは全く迷うことなく竹林を抜けることが出来た――――。

「――――出来るんじゃあ無かったんですか?」

 はずだった。

「い、いや・・・・・・いつもは出来るんだけどねぇ? あっれぇ~~~? おかしいな・・・・・・」

 無責任にも素っ頓狂な声を上げてしまう妹紅。彼女のそんな態度に苛立ちを隠せないジョルノ。

「真面目にやって下さいよ。ただでさえ急いでるって言うのに、妹紅は馬鹿なんですか?」

 その心ない言葉にカチンと来る。

「あ? 誰が馬鹿だよちんちくりんヘアー。お前だって一人じゃあ迷いの竹林を抜けるなんて不可能だろ!」

「ちんちくっ!? ひ、人が気にしていることをよくも!」

「じゃあ隠せよ!」

 と、このように無駄な会話だけが続いていき――――。


 すでに永遠亭を出てから二時間が経過していた。

「・・・・・・ちょっといいですか妹紅」

「・・・・・・何だよ」

「・・・・・・竹林を焼き払いましょう」

 がたっ

「・・・・・・正気か?」

 突然の提案に思いがけず顔をしかめた妹紅だが、余りにも迷いすぎて反論する気にもならなかった。

 正直、妹紅も「竹林焼いたら早いよな」と思っていた。

「・・・・・・いや、でも焼いたら私永琳とかに怒られるかも」

「永琳さんがあなたのようにすぐ復活するとは限りません。僕が帰ってきたら『GE』で竹林を生やし直しておくので」

「竹林生やし直すとか便利だな」

 その言葉を聞いて妹紅は右手を出す。

 そして彼女が火の力を込めると、彼女の腕の周りは熱によって空気がねじ曲げられ、屈折を起こす。

「本当に燃やすが、大丈夫なのか?」

「いいですよ。僕は竹林が無くなったところで特に興味はありません。道を切り開くことが最重要事項です」

 どたっ

「いや、そういうんじゃあ無くて」

「熱への対策も考えています」

 どたたっ

「違う違う、私が心配しているのは『発生気体』の方だ。うまく火力を調整して出来るだけ完全燃焼させるつもりだけど、それでもこの辺一帯は二酸化炭素濃度が一気にあがるぞ。それに対しての対策は?」

 案外理詰めな妹紅にジョルノは黙るしかなかった。

「・・・・・・いえ、それは・・・・・・」

「でしょ? 物を焼き尽くすっていうのは言葉で言うほど簡単なことじゃあないんだ。あと私自身にも相当な負荷がかかるしな」

 と、妹紅が腕を下げた。もちろん、竹林への放火を止めるためである。意外と妹紅は冷静だったのだ。

「うーん・・・・・・すまないね。ジョルノの折角の提案だったんだけど」

 一応そうフォローを入れる妹紅に、彼は思いがけない言葉を口にする。

「いや、いいんですよ気にしないで下さい。――――犯人の居場所が分かったので」

 びっくぅぅ!!

「えッ!?」

 ざっざっざ、とジョルノは回れ右をして一つの方向に向かって歩いていった。妹紅の目にはそちらには鬱蒼と生い茂る竹林しか存在していないのだが・・・・・・と、ジョルノはピタリと立ち止まった。

「・・・・・・出てこい。お前たちの存在はもう僕は関知している」

「ま、まさか・・・・・・」

 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド

 ジョルノがそう言うと、妹紅の目には何も映らない空間から――――。

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「ご、ごめんなさい」

 ――――妖精が3体、現れた。

「・・・・・・は?」

「・・・・・・こ、これは予想外ですね・・・・・・」

 妹紅もジョルノも余りに呆気ない敵の出現に戸惑いを隠せない。どんな敵が現れるだろう、と思っていたらまさかこんな可愛らしい幼女三人とは・・・・・・。と、3体の内、赤い服を着た妖精が最後に出て謝っていた黄色の服を着た妖精の襟首を掴む。

「だーかーらッ! どぉーしてルナはちょっとでも動揺しちゃうと音を消し忘れちゃうの!」

「ちょ、痛い痛い! やめてよサニー! わ、私だって一生懸命なんだから!」

「役立たず! ルナ一人でこの人たちに謝ってよね! 私とスターは悪くないもん!」

「え、ええ~!?」

 驚く黄色(ルナと呼ばれた)妖精だが、背後のにこやかな笑顔を保ち続ける青色(スターと呼ばれた)妖精が

「頑張ってねルナ♪」

 と楽しげに言うもんだからルナは引き下がれなかった。

 そうやって二人の前に3体の妖精のうち1体、ルナが二人の前に進み出た。

「ご、ごめんなさい。えっと私たちは光の3妖精と申しまして・・・・・・えっと、丁度3人で散歩してたところに貴方たち人間がいたからつい・・・・・・」

「つい?」

 と、ジョルノが聞き返す。

「つい、迷わせました」

 その答えにジョルノはため息をついた。自分たちは急いでいるのに、妖精というものは何て呑気なんだろうと。

「あー、ジョルノ。怒っても無駄だぞ。そいつらは明日にはお前の言うことは全部忘れてるだろうから」

「・・・・・・丁寧な説明ありがとうございます妹紅」

 妖精とはそんなものである。

「――――迷わせた後はどうするつもりだったんですか?」

「どうって・・・・・・」

 妖精たちはお互いに顔を見つめあう。

「私たちどうしたいんだっけ?」

「はぁ? ちょっと、サニーが最初に竹林で人を迷わせようって言ったんじゃない!」

「あり? そうだっけ?」

「確かに、サニーが言ってたわよ(聞いてなかったけど)」

「ほら、スターも同じこと言ってるわ。サニーが言い出しっぺよね。何で私たちこんなことしてるの?」

「・・・・・・うーん、人を迷わす目的かぁ・・・・・・考えたこと無かったなぁ」

「ふふっ、どうせサニーのことだからどうでもいい理由だったんでしょうね」

「そうだな、うん。きっとそうだ。思いついたことを片っ端から言っていく奴だもんね」

「ちょ、酷いな二人とも。この私がノープランなわけないだろう? どっかの馬鹿妖精と同じにしないでよ」

「でも、サニーはアイツの次に馬鹿よ」

「え?」

「で、次はルナがちょっと抜けてる感じね」

「ちょっと? 何でスターが一番なのよ」

「そうね、そしてスターが来るわ。最後にあたいが一番ってわけね!」

「うんうん・・・・・・」

「ん?」

 3妖精の会議に横からひょっこりと割入ってきたのは・・・・・・。

「「「チルノ!?」」」

 氷の妖精、チルノだった。

「・・・・・・また増えましたよ妹紅」

「いや、私に聞くなよ・・・・・・」

 妖精たちの様子を黙って眺めているジョルノと妹紅には目もくれず、チルノと言う名の妖精はルナとサニーの間に入って肩を組んだ。

「ちょっとちょっと、なんか面白そうな二人がいるけど、あれ何なのさ?」

「ぐえっ、あ、あんたにはカンケー無いでしょ! というか何でここにいるのよ!」

「そうよ、サニーの言うとおりだわ! 何しに来たの!」

 と、チルノが目をぱちぱちとさせて「ふぇ?」と驚嘆の声を上げた。

「だって昨日の夜、サニーが『竹林でイタズラしようぜ!』って言ってなかったっけ?」

「・・・・・・」

「・・・・・・サニー?」

 サニーは「そういえば」という表情をする。どうやら前日の夜にチルノと遊ぶ約束をしていたようだ。

「チルノよりサニーの方が馬鹿なんじゃないの?」

 スターの心ない一言がその場に残った。

*   *   *

「おい、ジョルノ。こんなバカ共に付き合ってられるほど悠長してる場合じゃあない。こいつらは光の3妖精――――馬鹿な奴から順番にサニーミルク、ルナチャイルド、スターサファイア――――と言って、戦闘に置いては雑魚と言っても差し支えないが『かくれんぼ』に付き合わされると面倒だ。あと、チルノは無駄に強い。さっさと行くぞ」

 チルノは無駄に強い、という妹紅の評価は『妖精にしては力が強いがいかんせん馬鹿なのでまさに猫に小判、豚に真珠だ』という意味である。

「そうですね。『かくれんぼ』がどういうのかは分かりませんが、メンドクサそうなのは妹紅の顔色を見れば分かります。先を急ぎましょう」

 妹紅は妖精たちが見ていない隙にジョルノの手を掴み、さっさとその場から離れる。ジョルノも妹紅の意見に賛同し、ちゃんと妹紅の手を振り払ってから彼女の後に付いていった。腕を掴まれるのは嫌らしい。

 だが、4体の妖精の内、3体は馬鹿でも1体はそうではなかった。

「あら、3人とも? せっかくの獲物が逃げてるけどいいのかしら?」

 『生き物の気配を探る程度の能力』を持つスターサファイアによって二人のこっそり抜け駆けはいともたやすく看過された。

「な、何だってぇー! よし、チルノ! 逃がすなよ!」

「ちょ、サニー! 強そうだから止めとこうって!」

 サニーとチルノが二人に特攻をかける。それをルナは止めようとするが勿論、馬鹿の耳に念仏。

「がってんサニー! あたいを誰だと思ってるの!?」

「馬鹿だよ!! まごうことなき馬鹿だよ!!」

 ルナが必死で説得(?)を試みるもやはり意味はない。チルノは二人の先に回り込み仁王立ちで無い胸を強調して「えへん」と咳払いをした。

「・・・・・・妹紅。どうするんですか」

「どうもこうも・・・・・・いや、強行突破だろ」

 と、ジョルノと妹紅が戦闘の体制をとろうとしたところに――――。


「はーい、ストップストップ。チルノもサニーも落ち着いて。あなたたちが束になってかかったところでこの二人には勝てっこないわ」


 スターサファイアが手をパンパンと叩きながらチルノの隣まで来ていた。

「むっ、スターそれってどういうことよ」

 チルノがむっとしてスターを睨みつけるが無視。

「でも、このまま二人を帰すのはちょっと面白くない・・・・・・ってことで、私はこの二人に『かくれんぼ』を申し込みたいと思います。サニー、ルナ、異論は無いかしら?」

「・・・・・・えー、『かくれんぼ』かぁ・・・・・・うーん」

「わ、私はそれでいいわよ。怪我しないなら、全然かまわないわ」

 スターの提案にサニーとルナは違った反応を示した。

 と、ジョルノはさっきから『かくれんぼ』の単語が聞こえるたびに思うことがあった。

 『かくれんぼ』って何だ? という小さな小さな『興味』だ。

「すいません、参加する気は更々無いんですが、『かくれんぼ』って何ですか?」

「お、おい・・・・・・ジョルノ止めとけ。面倒なことに・・・・・・」

 それはふとした疑問だった。彼にとってはほんの些細なことだっただろう。だが、その一言は彼女にとっては『重要』なことだった。

「・・・・・・えっと、ジョルノさん? でしたっけ?」

 スターサファイアはサニーミルクとルナチャイルドの返事をそのままに、ふと疑問を漏らしたジョルノの方を見た。

「『かくれんぼ』に『興味』がおありで・・・・・・?」

「・・・・・・まぁ、無いと言えば嘘になりますね」

 するとスターはにっこりと笑ってジョルノの元に駆け寄り彼の手を取った。

「うれしいです! では説明しますね!」

 何だ、意外と子供らしいところもあるんだな。とジョルノが思ったとき――――!

「・・・・・・!? ジョ、ジョルノ!? そいつの手を離せッ!! お前の、後ろだァァーーーーッ!!」

「はッ!?」

 ジョルノは妹紅の叫びに反応して背後を見るが――遅かった。ジョルノの目には信じられない光景が写っていた!

「な、僕の『ゴールドエクスペリエンス』がッ!?」

 彼のスタンド、『ゴールドエクスペリエンス』がいつの間にか彼の意志とは関係なく発現しており! 『体が半分ほど何かに吸収されて』いたのだ!!

 『GE』の体半分がどこにいったかと、それを目で追うと・・・・・・更に彼の背後! そこには灰色地の水色の水玉模様のコートのような物を着た何かが、口を開けて立っていたのだ! 『GE』はその口の中に半分、吸い込まれていった!

「な、何だってェェーーーーーーッ!! す、『スタンド』使いかッ!? この妖精は!!」

 ジョルノは『GE』の残った半身でそのスタンドを攻撃するが、スタンドは『GE』の拳を軽く受け流す。かなり戦闘能力が高そうな動きだった。

「み、見えた! 私にも、ジョルノの『GE』がおそらくはスターサファイアの『スタンド』に吸い込まれていくのが、はっきりと!!」

「何今の!? か、カックィーーー!! 今のスターがやったの!?」

 妹紅は汗をかいていた。突然の出来事に目を疑ったのだ。

 チルノはそれを見て歓喜の声を上げていた。そしてジョルノは理解する。

 『こいつらは4人ともスタンド使い』だということを――――!

「く、何をしたッ!!」

「参加担保、よ。『かくれんぼ』のねー」

 スタンドの半身を奪われたジョルノは上手く立てないようだ。膝を着いてスターを睨んだ。

「さ、参加担保?」

「そう。ルールは簡単よ? 制限時間以内に『私たち3人を見つけたらあなたたちの勝ち』、『見つけられなかったらあなたたちの負け』」

「スターサファイア!! 私たちは急いでいるんだ! こんな遊びに付き合っている暇はない!」

 妹紅は片膝を着いているジョルノの代わりに言った。だが、スターサファイアはどこ吹く風、という感じで

「私たちには関係ないわ」

 と答えた。

「スター、うまくやったわね。これで怪我しないで済む・・・・・・」

「ちぇっ、私的には熱い弾幕勝負を展開したかったのになぁー」

 ルナとサニーはスターの元にかけよってきゃっきゃっと騒いでいる。

「・・・・・・えっと、スター? あたいは・・・・・・」

「チルノは適当にこいつらの妨害をよろしく」

「よかったね、チルノらしいよ!」

「えーっ! あたいもかくれんぼしたいー! 幻想郷全域かくれんぼー!」

「そんなことしたら尺が大変なことになるわ。範囲はこの竹林だけよ」

 メメタァ。

 妖精たちは自分たちで盛り上がっているが、ジョルノにとってはそんなことはどうでもいいことだ。

「――――もし負けたら、僕はどうなるんだ?」

 聞かずにはいられなかった。どうせ聞いたところで答えは予想できそうなものだが・・・・・・。

 スターはやはりにっこりと笑って述べる。

「負けた場合はあなたの『スタンド』は没収です! 二度と返さないので、死ぬ気で遊んでね! じゃあ今から60秒後! 制限時間は12時間!」

 絶対に負けられない『かくれんぼ』がそこにある。

「ゲーム・スタート!!」

 スターの宣言と同時に妹紅とジョルノの目の前から四人は忽然と姿を消した。

*   *   *

 サニーミルク、ルナチャイルド、スターサファイア
 スタンド名『ボーイ・Ⅱ・マン』

 備考:3人で1体のスタンド。参加者のスタンドを半分『担保』として『かくれんぼ』を行う。参加者のスタンドを『担保』にするためには対象の興味を引いた状態で3体のうち誰かが対象に触れている必要がある。

 ルール:3妖精を1体見つけると『担保』にした『スタンド』の6分の1が返却される。制限時間内に3体全員を見つけられなかった場合、スタンドを全て吸収されてしまう。

 結論:スターサファイアは賢い。

*   *   *

 妹紅はすぐさま周りを見渡すがもちろん3妖精の姿は無い。あの3体に限れば『かくれんぼ』はまさにうってつけの遊びだということは妹紅は重々承知していた。

 サニーミルクは光を屈折させ自分たちの姿を消し、ルナチャイルドが音を消す。さらにスターサファイアが近づく生物を感知できるという、『かくれんぼ』における極悪コンボ。

 それを今まさに、ジョルノは『スタンド』を賭けて味あわされていた。

「・・・・・・ジョルノ、おそらく私の『スタンド』が『担保』にされていないところを見ると・・・・・・少し酷かもしれないが3妖精を見つけるのはお前だ。私は『かくれんぼ』に参加できていないからな・・・・・・」

「・・・・・・分かってます。妹紅は・・・・・・ハァっ、『妨害』してくる奴を・・・・・・おそらく、あの氷の妖精も『スタンド使い』です」

 チルノがスタンドを見て「かっこいい」と言っていたのをジョルノは聞き逃さなかった。

「分かってるよ。それより、12時間以内だが・・・・・・出来そうなのか?」

 3妖精の提示したタイムアップまでは12時間。それを過ぎてしまえばジョルノのスタンドは完全に3妖精の手中に落ちる。

「・・・・・・考えてます。・・・・・・クソっ、質の悪いイタズラを・・・・・・」

 ジョルノは悪態をつく。スタンドの半分を奪われ体に思うように力が入らないのだ。

「ジョルノ。私は参加できないが、アドバイスはしてやれる。さっきジョルノが3妖精を見つけたように、あいつらを見つけるのはそこまで難しいことじゃあない。確かに正攻法じゃ厳しいが、驚かせたり予想外の出来事でビビらせることでルナチャイルドの『音を消す程度の能力』は看破出来る。そして、サニーミルクに至っては姿を消し忘れているときがある。そういう隙をついて探すと意外とすぐに見つかるんだが・・・・・・」

「・・・・・・ハァッ、くっ・・・・・・体が・・・・・・万全ならそうでしょうね・・・・・・」

 ジョルノは体半分が思うように動かないと言う奇妙な状況に陥っていた。

「でも・・・・・・出来ることは全て試します」

 と、残った半分の『ゴールドエクスペリエンス』を出して

「無駄ァッ!!」

 近くの竹を殴りつける。するとそこから無数の蛇が生まれた。

「うわわっ! 竹から『蛇』がっ!?」

「大丈夫です妹紅。あなたがそいつらに攻撃しない限り、一切危害は与えません」

「・・・・・・えっと、もし攻撃したらどうなるんだ? 全員がおそってくるのか?」

「与えた攻撃が自分自身に跳ね返ります」

「・・・・・・それはそうとして、何で蛇なんだ?」

 妹紅はこいつらを焼いたら自分が丸焼けになる姿を想像して結構えぐい能力だなと思った。

「蛇は獲物を視覚で捉えるのではなく、舌をちろちろと動かしてレーダー替わりにし、獲物を『熱』で捉えます。あいつらがいくら姿を消し、音を消そうとも、熱は消せません・・・・・・」

 ジョルノは蛇たちを竹林に放った。これで奴らが見つかるのも時間の問題だ。ジョルノはとりあえずは見つかる、と思っていた。

*   *   *

「――――という風に、あのコロネヘアーの『スタンド』は『生物を生み出す程度の能力』を持っているみたいね」

 スターはジョルノから『担保』に預かった『ゴールドエクスペリエンス』で石ころをチョウチョに変えて三人に説明していた。

「すげー、神様みたいな能力だな!」「すげー!」

「・・・・・・ちょっと、スター。それってまずいんじゃない?」

 チルノとサニーは同じ反応を示しているが、ルナは違った。

「こっちの場所を感知する生き物とか生み出されたら・・・・・・」

「そうね。つまり・・・・・・視覚ではなくたとえば『熱感知』する生き物とかが考えられるわ。そこで、チルノ」

「? あたいか?」

 チルノはスターに名指しされてきょとん、としている。

「あなたの氷で私たちの熱を感じさせないようにすればいいのよ」

「おー! そういうことなら・・・・・・」

 と、チルノは『冷気を操る程度の能力』を用いて――

「これがあたいの力ね!!」

 竹林の一角に小さなカマクラを作った!

「チルノの家じゃん! しかも小さめ!」

 サニーはケタケタと笑っているが妖精が4人入るのには申し分ない大きさである。

「ほらほら、サニー笑ってないでさっさとカマクラまで屈折の範囲を広げなさい」

「はーい」

 スターとルナとサニーはカマクラの中に入った。意外とカマクラの中は暖かく、広さもそこそこなのでルナは「うわぁ、なんか楽しくなってきた」と感想を漏らした。

「じゃ、チルノは妨害よろしくー。あんたがサイキョーだってとこ見せてきてー」

 スターは適当にチルノに命じて、馬鹿単純なチルノは「はっはっは、やっぱりあたいって最強?」とか鼻を高くしながらジョルノと妹紅のいる方へ飛んでいった。

「さて、これで熱は外に出ないわね。あとは・・・・・・」

 スターはカマクラの氷を数個、『GE』に握らせてある生き物を生み出す。

「これで感知系対策は万全かな? サニーもルナもしっかり能力持続させといてよ?」

「分かってるって。あ、私蜂蜜持ってるけど、かき氷食べる?」

「サニー呑気ね・・・・・・でもちょうだい。スターはいる?」

「私も貰おうかしら。たぶん暇だし。ちょっとしたキャンプ気分ね」

 サニーはチルノから貰った手動かき氷機を出してゴリゴリと氷を削り始める。

「違う違う、ここはテントじゃなくて・・・・・・えっと、『かくれんぼ大作戦カマクラ基地作戦本部』だよ」

「サニー、それじゃあ作戦が二回入ってるわ。分かりにくい」

「いちいちうるさいなぁルナは・・・・・・じゃあ『かくれんぼinカマクラ基地作戦本部』で」

「カマクラの中だけで『かくれんぼ』してるみたいよ」

「じゃあ・・・・・・『カマクラ&かくれんぼwithサニーミルク』」

「何でサニーだけなのよ」

「えっと・・・・・・」

「もういいわ。それより私ポットに暖かいお茶持ってきてるんだけど」

「サニー、かき氷に熱いお茶って合う?」

「いや、ぜんぜん? とりあえずまだ私はゴリゴリしてるから後ででいーよ」

「ってよ、ルナ。私もかき氷の後に貰うわ」

「そうねぇ・・・・・・。かき氷で冷えた体に、の方がいいかしら? そうしましょう」

「そもそもかき氷に蜂蜜って合うの?」

「あ、スターそんなこと言うんならあげないぞ! 絶品だかんな!」

「そ、そう・・・・・・ルナは食べたことある?」

「いや、無いよ。でも興味はあるかも」

 と、サニーはようやく三人分のかき氷を削り終える。

「よっしゃ、これで蜂蜜をかけて・・・・・・」

 サニーは削り終わったかき氷にとろーりと蜂蜜を贅沢にかけていく。

「出来上がり! さぁさぁ、三人ともご賞味あれ!」

「うーん、いただきまーす」

「いただきます」

 ルナとスターはスプーンを蜂蜜かき氷に刺して一口。

「どう? どう?」

 サニーはうずうずとしながら二人の反応を待った。

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 二人はしばらく咀嚼して。

「・・・・・・意外とアリかも」

 と顔を見合わせた。

*   *   *

 ジョルノが蛇を放ってから30分が経過し・・・・・・何の反応もない。

「お、おかしい・・・・・・」

「ジョルノ、まさか感知できないのか?」

 いつまでたっても蛇から何の反応も返ってこない。攻撃をうけたら生み出した本体のジョルノでも感知出来るのに・・・・・・。

「・・・・・・熱感知・・・・・・だが、それってもしかするとチルノに阻まれているかもしれないぞ」

 妹紅は思いついた可能性を述べる。するとジョルノは「しまった」と顔を歪ませて

「そうですね・・・・・・冷気を操る奴がいましたか」

 すぐさまジョルノは別の作戦を考える。やはり、『GE』で感知系の生き物を生み出して探させる以外思いつかない。

「なら・・・・・・これなら」

 と、ジョルノが再び『GE』の能力を使おうとしたとき。

「ちょっと待ったァアーーー!」

 二人の背後から馬鹿っぽい声がかけられた。

 そこには氷の妖精、チルノ。彼女は何故か目元に『スカ●ター』のような物を装備しており「むむっ、戦闘力53万!」とか言って遊んでいる。

「あいつらから邪魔・・・・・・もといあたいのサイキョーたる所以を見せつけるために参上したぞ! 出会え、出会え!」

「・・・・・・妹紅」

 ジョルノは特に目も暮れず妹紅を顎で使った。

「あぁ、任せろ」

 ジョルノは現在戦えない。顎で使われようと、この馬鹿を止めるのは藤原妹紅の役目である。

「――――『弾幕』じゃあ勝負してやらない。一瞬だ。『スタンド』で一瞬で片を付けてやる」

 妹紅はチルノの前に進み出て熱気を迸らせる。

 だが、そんなことで怯むチルノではない。

「へっへーん! お前、あたいには『炎』が弱点とか思ってんじゃあないだろうなーーー!!」

「思ってるよ。氷なんだろう?」

 妹紅は構わずチルノに向かって距離を詰める。

 それを見てチルノはにやりと笑う。

「なんならあたいの『スタンド』を見て驚け!!」

 チルノは妹紅を指さした。直後に妹紅の耳元で音が鳴り始める。

 ドドドドドド、という何かのエンジン音が・・・・・・。

「う、後ろかよ!! って・・・・・・」

「ひ、『飛行機』!?」

 妹紅とジョルノは同時に驚きの声を上げる。妹紅はその正体は全く分からなかったが、ジョルノは知っていた。


 ラジコンの飛行機のような物体が空中を滞空していた――――!!


「『エアロスミス』ッ!! 風穴あけてやるわァーーーーーッ!!」

 チルノは『エアロスミス』についている二丁の小型マシンガンから銃弾をめちゃくちゃに撃ちまくった。弾の大きさはBB弾と変わりないが、スピードが違う。

「く、そッ!」

 妹紅はとっさに熱気を背後に集めて弾を溶かそうとしたが――――。

 弾は溶けなかった。否ッ! 爆発したのだ! 至近距離の爆発をモロに顔面に食らった妹紅は思わず声をあげる!

「ぐあああああッ!?」

「残念でしたァァーーーーッ! 弾は熱に反応して爆発する瑠弾なのさ! その一発一発の爆発がッ! 藤原妹紅! 貴様の体を粉微塵にするッ!!」

 そしてチルノは氷の弾幕を展開する。同時に『エアロスミス』からも弾を乱射し、爆撃と氷撃の二重包囲! 熱を使って氷を溶かそうとすると爆発し、かといって瑠弾を無視すると氷が体を切り刻む。

 馬鹿にしてはかなり合理的な攻撃だった。

「・・・・・・も、妹紅っ!!」

 ジョルノはうまく動けないため、妹紅を攻撃から救う手は無かった。幸い妹紅は不老不死だ。死んでも生き返るが・・・・・・痛みは伴う。

「――――まだだ! てめぇ、ジョルノ! 私が何もせず『ただやられて』『復活』を繰り返すマヌケだと思ったら大間違いよ! まだ私は『スタンド』を使ってない!」

 妹紅はそう言ってはいるがジョルノは「妹紅のスタンドは熱を操るスタンド」だと思っていた。スタンドの性質は使い手の本質によるところが大きい。

「――――とか思ってるよなぁ~~。ジョルノ・・・・・・私のスタンドは熱を操るとか・・・・・・そんなこと素でも出来るわ。違う違う・・・・・・」

「・・・・・・は!」

 と、ジョルノは妹紅の背後に人型のスタンドを見る。その姿は白とピンクを基調としたチェック柄のデザイン。頭には妹紅と同じリボンをしており、全身に力が漲っているようだった。おそらくは近距離パワー型、だがジョルノからすれば遠距離パワー型のチルノとは相性が悪い、としか思えなかった。

 そして、今のこの状況をどう打破するかと思っていると――。

「妹紅、派手ニヤッテ構ワナイワヨネ?」

「そうだな・・・・・・。この弾幕包囲を全てドロドロになるくらいまで『柔らかく』してくれ」

「了解」

 ――――妹紅はそのスタンドと会話していた。

 と、ジョルノが唖然としていると妹紅のスタンドが動いたッ!!


「WAAAAAAAANNABEEEEEEEEE!!!!」


 彼女のスタンドは超高速で迫り来る銃弾、氷弾を拳のラッシュで弾いた! そんな衝撃を加えたら瑠弾が爆発するのでは・・・・・・と思ったが。

「そ、そんな! あたいの『エアロスミス』の攻撃が・・・・・・不発?」

 チルノは驚きを隠せない。熱もそうだが、あの瑠弾は衝撃を加えるだけでも爆発するのに、あれだけ全弾全力で殴っておいて全て不発とは今まで一度も起こったことはなかった。

「簡単なことさ。衝撃が銃弾の内部に及ぶ前にコイツが銃弾を柔らかくして衝撃を吸収させたまでのことよ」

「私ガ殴ッタ物体ハ全テ『柔ラカク』ナル・・・・・・ソノ度合イハ私ノ自由ニ出来ル!」

 妹紅が説明をし、彼女のスタンドも補足で話す。どうやら完全に自立して、しかもスタンドが自我を持っているらしい。

「も、妹紅・・・・・・! 想像とは、かけ離れてましたよ・・・・・・」

 ジョルノは素直に感想を述べる。

 殴った物体を柔らかくする。だが、ジョルノにとってはどこかひっかかるところがあった。チルノのスタンド、『エアロスミス』もそうだ。

 どこか懐かしい気がした――――。

「ジョルノ・ジョバァーナデスネ。私ハ『スパイスガール』。妹紅ノスタンドデス」

 ジョルノが何かの懐かしさを感じていると妹紅のスタンドは律儀にそう名乗った。

「そうね・・・・・・『ひと味』、違うのよ」


第17話へ続く・・・・・・

*   *   *

 後書き

 藤原妹紅のスタンドは『マジシャンズレッド』ではありません。『スパイスガール』です。『スパイスガール』です。大事なことなので2回(ry。ちなみにこのことは最初から決めてました。最初から設定で決まってたスタンドは

 鈴仙の『セックスピストルズ』
 咲夜の『ホワイトアルバム』
 レミリアの『キラークイーン』
 フランドールの『クレイジーダイアモンド』
 妹紅の『スパイスガール』

 あとはまだ出ていませんが輝夜のスタンドも最初から決めてました。

 余談ですが、アリスはドッピオが死んだ後に『リンプピズキット』に決定し、魔理沙に至っては書いてる途中に付け足しです。光の3妖精も付け足しですね。

 妹紅はマジシャンズレッドという風潮がありますが、もこたんはあんなブ男じゃあないぞ! 一緒にしないでくれ!

 と、こんな感じです。でも何げ妹紅の『スパイスガール』はお気に入り。

 そういえば、サニー、ルナ、スターの3人のスタンド、『ボーイ・Ⅱ・マン』について。原作では『じゃんけん』だったのを『かくれんぼ』に変更しました。そっちの方が3妖精っぽいかなと思ったので。まぁ、でも子供っぽいスタンドには変わりありませんね。ジョジョの方でも『ボーイ・Ⅱ・マン』の主、大柳賢は少年でしたし。

 チルノの『エアロスミス』に至っては『馬鹿だから』という理由です。これは読めた人もいたんじゃあないでしょうか。まず題名がチルノは『エアロスミス』って言ってるようなものだった。

 ジョジョと東方ファンの方々なら一度は東方キャラがスタンドを使うなら、誰がどのスタンドになるかなぁ。と妄想したことはあると思います。ですので、私はそれらの妄想を出来るだけ裏切る形で物語を作っていきたいと思っています(正邪精神)。5部に偏ってるんですが、気にしないでください。

 まだまだ出したい東方キャラ×スタンドは沢山あるのでこれからも読んで貰えるとうれしいです。感想をくれるとなおGOOD。

 それでは長くなりましたが、これで16話は終わりです。

 では、次は17話で。 
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