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日向の兎

作者:アルビス
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1部
  33話

 
前書き
火影様話長いんじゃー!!
原作通りに書いたらこの長さですよ……
 

 
最終日、合計五班を潰して巻物を処分した私達は、二次試験の目的地である死の森中央の塔に歩みを進めた。
……いや、この言い方では語弊があるな。私達は五班を潰して巻物を四本処分したのだ。
三日目に誘い込んだ班の中で、ただ一人だが巻物を持って逃げ出せた者がいたのだ。とはいえ、二人は仕留めたので試験には合格できんだろうし、たった一人なら捨て置いてもいずれ何処ぞの誰かに仕留められるだろう。巻物を処分できなかったのは失敗だが……少々厄介な相手だろうし深追いする事もない。
即効性の痺れ薬を塗った手裏剣を数発受けてもよろめきこそすれどそのまま逃げ切った事から、何かしらの耐性か尋常ならざる生命力の持ち主と推測できる。
だが、あの印象的な赤色の髪は書物で見た覚えがあるな……ああ、そうだ、先代の九尾の人柱力の髪と同じ色なのか。
となると、うずまき一族の何かしらなんだろう。ならば、あの耐性やらも納得か。
初代火影の時代からうずまき一族は並外れた生命力と独自の封印術で有名な存在と書物にあり、木の葉がナルトの一件とマダラが操ったと言われる時を除いて尾獣の被害が殆ど無いのは、うずまき一族の残した封印術系統のノウハウがあるからと言えるだろう。
周りの里や国を見れば尾獣の引き継ぎなどで里が半壊、影が出張ってなんとか抑えるというのが大体だからな。
逆に木の葉は里創設直後の初代がいた時期とはいえ、大半の尾獣をその管理下に収めており、それを他の里に対して安全に提供したというのだから尾獣関係に関しての技術において木の葉は異常と言ってもいいレベルだな。
む、話が逸れた。とにかく、私達はさしたる損害を負わずに二次試験を突破したということだ。



で、塔の中に入ると二本の巻物を開けという指示の書かれた紙が貼ってあったので、開いた瞬間に不意打ちされるかもしれないという事を想定し、全員戦闘の用意してから開く事となった。
巻物の中身は既に白眼で閲覧しており、内容は口寄せの術が書かれているということは把握済みだったからな。
「用意は?」
「終わった。上忍クラスが出てこない限り直ぐに無力化できる位の罠は仕込んでるし、上忍クラスでもリーとネジが二、三手は叩き込める隙は作れる」
「結構、では開こう」
私は二つの巻物を一気に開き、テンテンの仕込んだ罠の中心点に放り投げた。それとほぼ同時に煙が巻物から吹き出し、煙の中から見知った人物が現れた。
「お前達……」
「あれ、ガイ先生?」
「ふむ……私はてっきり最後の試験だと言わんばかりに戦闘があると踏んでいたのだが、読みが大分外れたようだな」
「そのせいで俺は罠の中心に出てくる羽目になったんだが……まぁ、それは一旦置いておくとしてだ。
お前達、良く無事だったな。一応規則で天と地の巻物を説明しなければならないんだが……お前らには必要ないな?」
「当たり前です、それを理解しているからこそ、このメンバーでこの程度の試験をこうも容易く突破できたのですから。ですが、一部例外があったのでその点に関しては不確定要素でした」
「例外?」
ふむ、まだ試験官達は気付いていないのか?それとも何処かで情報が止まっているのか?
何にしても私がどうこうできる範囲の問題ではないな。
「先程の二次試験に規格外が混ざっていたのですが、あれは何ですか?」
「どういうことだ?」
「五影レベルのチャクラの持ち主が混ざっていたんですよ。白眼があったらから気付けたものの、通常では認識できないレベルのカモフラージュがされており、チャクラが多いだけでなく知識や技術も桁外れでした。
一応、里の上層部に伝えておいて、里全体で問題に取り掛かった方がいいと思うのですが?」
「……ヒジリ、お前の分析通りだとしたならば該当するのは一人しかいない。そっちの問題は火影様にも伝えて対処しよう」
「分かりました」
とは言ったものの、全盛期ならば兎も角、今の老いた三代目とではチャクラ量などで言えば大蛇丸の方が上だ。
加えて大蛇丸のあの改造され尽くした体から察するに技術、知識面でも倫理を無視してまで得ようとするタイプだ。幾ら年季において差があるとはいえ、そこまでの大差はないだろう。
戦いにおいてチャクラ量が勝敗を分かつ絶対条件とは言わんが、技術面でそれ程差がないのであれば少しばかり厄介な事になるな。
つまり、大蛇丸の目的がサスケだけではないと仮定し、里の内部で何かしら事を構えることになった場合、この里において誰も止められないということだ。
火影が相討ち覚悟となれば話は変わるだろうが、それは今後のことを考えると里としては厄介な事になるな。
……まぁ、私の知ったことではないか。
「それは置いといて、そろそろ帰っていいですか?これで二次試験は終わりですよね?」
「あーいや、制限時間が終わるまでは解放できないんだ。それまで各自休んでくれ」
「えー……そろそろ忍具の手入れとかしときたかったんだけどな」
「諦めろ。ここには作り手のヒジリ様もいるのだから、忍具の中身を手入れするのであれば可能だろう?」
「じゃあ、ヒジリ。ちょっと手伝って」
「いいだろう」
「では先生、僕と修行を!」
「いいだろう、リー。腕立て伏せ200回、出来なかったら腹筋300回だ!ネジもどうだ?」
「結構です。白眼の使い過ぎで、俺は少し休みたいんですよ」
私達は各々時間を潰し、制限時間の終了まで待った。
忍具の方は内部の稼働部分に油を差したり、射出する忍具への痺れ薬の塗布などの基本的な整備を行った。
リーと先生は延々腕立て伏せやら腹筋やらをこなし、ネジは壁にもたれ掛かって眠りについていた。
「それにしても、ヒジリがそこまで言う相手って始めてかもね」
「何がだ?」
「さっき言ってた不確定要素の事だよ」
「……伝説の三忍が相手では私の小細工など塵芥も同然だ」
「えっと、サクラちゃんが言ってた大蛇丸だっけ?同姓同名か偽物ってオチじゃないってこと?」
「その辺りはどうでもいい。本物だろうが偽物だろうがその力は桁違いであり、その思想もサスケの呪印から察するに十二分に危険。そうなればその者の真贋などどうでもいいだろう?」
「それもそっか……綱手様だったらお会いしたかったんだけどなー」
テンテンは三忍の内の一人、綱手姫に憧れていたのだったな。
彼女に憧れて医療系統の術を修めようとした結果、チャクラコントロール面での適性を欠いていたらしく挫折。得られたものは人体に関する解剖学的知識やらで、忍具使いとしては急所やらへの知識といった面では役立っている。
彼女曰く、途中から人体標本は的に見えてきたそうだ。
うむ、彼女は根っからの忍具使いだな。
「……今、物凄い失礼な事を考えなかった?」
「いや、全然」
これは失礼な事ではなく、至極真っ当な評価なのだからな。




制限時間の終了を知らせる合図と共に、私達はそれなりに開けた部屋に他の受験者共々集められた。
ざっと見たところ、残った面子は見知った顔がやたらと多かった。ナルト達の班、ヒナタ達の班、あれから死に物狂いで巻物を集めたのか音の班、当然というべきか砂の三人組、面識は無いがコンビネーションという点では里でも有名な猪鹿蝶の三人組。
そして……上忍クラスの一人と下忍クラスが二人の班、ずば抜けたあの男は確か薬師カブトだったか?弱った風に見せかけているがチャクラコントロール、体の鍛え方、その両方が理想的な形で纏まっている。
タイプで言えば幻術タイプか医療タイプ、それともその両方か。
大蛇丸といいカブトといい今回の試験は一体なんなのだ?
「まずは第二の試験、通過おめでとう!」
私の思考を他所に、中忍第二試験の試験官であるみたらしアンコは労いの言葉を告げた。
「それではこれから火影様より、第三の試験の説明がある。各自、心して聞くように!」
「うむ」
彼女の首の呪印に施された術式から察するに、既に大蛇丸の件は火影に知れていると言ったところか。
「これより始める第三の試験。その説明の前にまず一つだけ、はっきりお前達に告げておきたい事がある。
この試験の真の目的についてじゃ。
なぜ同盟国同士が試験を合同で行うのか?同盟国同士の友好、忍びのレベルを高めあう、その本当の意味を履き違えてもらっては困る。
この試験は言わば同盟国間の戦いの縮図なのだ」
まぁ当然だろう。同盟など所詮は次の戦争への準備期間でしかなく、それが整えば昨日まで友好関係だった里を喰い潰すというのはよくある話だ。
特に砂隠れは木の葉に忍としての自国からの需要すら持っていかれていることもあり、需要を取り返すためにいつ戦争になってもおかしくはないからな。
「歴史を紐解けば、今の同盟国とは即ち、かつて勢力を競い合い、争い続けた同盟国同士。
その国々は互いに無駄な戦力の潰し合いを避けるためにあえて選んだ戦いの場、それがこの中忍選抜試験のそもそもの始まりなのじゃ」
加えて忍の質を問う商品市、実演販売とでもいうべきものでもあるな。
「第三試験には、我ら忍びに仕事の依頼をすべき諸国の大名や著名の人物が招待客として大勢招かれる。そして各国の隠れ里を持つ大名や忍び頭がお前達の戦いを見ることになる。
国力の差が歴然となれば強国には仕事の依頼が殺到する。
弱小国と見做されれば逆に依頼は減少すると同時に隣国各国に対し我が里はこれだけの戦力を育て有しているという脅威、つまり外交的圧力を掛けることも出来る。
国の力は里の力。里の力は忍びの力。そして忍びの本当の力とは、命懸けの戦いの中でしか生まれてこぬ。
命を削り戦うことでバランスを保ってきた慣習、これこそが忍びの世界の友好。己の夢と里の威信を懸けた命懸けの戦いなのじゃ!」
命懸けの殺し合いか、一応先程の試験もそういう触れ込みだったのだがな。まぁ、脅し文句の一種なのだから仕方ないな。
そんな風に考えていると砂の人柱力が、退屈でうんざりしたというような口調で言葉を発した。
「なんだっていい、それより早くその命懸けの試験ってヤツの内容を聞かせろ」
「うむ。ではこれより第三の試験の説明をしたいところなのじゃが、実はの……」
火影が言葉を区切ると同時に、火影に向かって膝をつき頭を垂れる顔色の悪い男が現れた。月光ハヤテと名乗ったその男は火影の言葉を継いで話を続けた。
「今回は第一・第二の試験が甘かったせいか、少々人数が残りすぎてしまいましてね。中忍試験規定に則り予選を行い、第三の試験進出者を減らす必要があるんです。
先ほどの火影様のお話にもあったように、第三の試験にはたくさんのゲストがいらっしゃいますから、ダラダラと試合は出来ず、時間も限られてくるんですね」
……もう一戦何かしらあるのか。正直早いところ帰って、熱い湯に浸かりたいのだがな。
「というわけで、体調の優れない方。これまでの説明で止めたくなった方、今すぐ申し出てください。
これからすぐに予選が始まりますので……言い忘れていましたが、これからは個人戦ですので自分自身の判断でご自由に辞退してください」
「あの、僕は止めときます」
薬師カブトは真っ先に手を上げて辞退する意思を告げ、それの了解が取れるとそのまま試験会場を後にした。
どうやらカブトは何かしらの任務を既に終えたのだろう。明らかに中忍試験に関してやる気がない……いや、用が無いという態度だな。
さて、カブトの目的は知らんが……ロクでもないことだと言う事だけは直感で分かる。今、事を構えるつもりは無いんだろうが、
次の試験か試験終了後か……全く、親父殿といいカブト、大蛇丸、何故私の頭を悩ませる要因がこうも立て続けに来るのだ?
 
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